論文のタイトル: Fully Conjugated [4]Chrysaorene. Redox-Coupled Anion Binding in a Tetraradicaloid Macrocycle(テトララジカロイド環状化合物における酸化還元連動型アニオン結合)
著者: Hanna Gregolińska, Marcin Majewski, Piotr J. Chmielewski, Janusz Gregoliński, Alan Chien, Jiawang Zhou, Yi-Lin Wu, Youn Jue Bae, Michael R. Wasielewski, Paul M. Zimmerman, Marcin Stępień
雑誌: Journal of the American Chemical Society
巻: 140, 14474-14480
出版年: 2018年
背景
1: 研究の背景
環状芳香族化合物(シクロアレーン)は高い共役性と特異な構造を持つ
これまで主に理論研究の対象であったが、合成と性質評価が進展
アニオン受容能力やラジカル性など、新奇な機能が期待される
2: 未解決の問題点
従来のシクロアレーンは電子供与基や極性基を持たないため、アニオン認識能が低い
高いラジカル性とアニオン認識能を両立する分子系が未開拓
3: 研究の目的
ラジカル性の高い新規[4]クリサオレン3aの合成と性質評価
酸化還元反応におけるアニオン結合能の変化を解明
方法
1: 研究デザイン
理論計算と実験的手法を組み合わせた研究
2: 合成と分子構造決定
環状前駆体であるフェナントレン5から[4]クリサオレン3aを合成
単結晶X線構造解析、各種分光分析により構造決定
3: アニオン結合実験
1H NMRによるアニオン結合定数の測定(Cl-, Br-, I-)
溶媒、温度、酸化剤の影響を検討
4: 理論計算
DFT、RAS-SFなどの量子化学計算で分子構造と電子状態を解析
開殻性、芳香族性、アニオン結合モード
結果
1: [4]クリサオレン3aの構造と性質
剛直な非ベンゼノイド環状構造を有する
NIR吸収、ラジカル指数から高い開殻性
中空のπ空間がアニオンホスト部位
2: アニオン結合能
ヨウ化物イオンに高い選択性(Ka=207 M-1)
アニオン結合に伴う大きな1H NMRシフト変化
3: 酸化状態とアニオン結合
一電子酸化体[3a]ラジカルカチオンでヨウ素イオン内包
電荷移動に伴いヨウ化物結合が強化される
考察
1: [4]クリサオレン3aのラジカル性
環状π共役が主因、ポリラジカロイド的性質
開殻性はアニオン結合能の起源
2: アニオン選択性の起源
空洞のサイズと形状が適合
非極性C-H供与体によるアニオン認識
3: 酸化還元とアニオン結合の相関
一電子酸化で[3a]ラジカルカチオン内包ヨウ化物が生成
静電相互作用の増大が内包状態を安定化
4: 先行研究との比較
通常のアニオン受容体に優る結合力
ラジカル種とアニオン間の組み合わせは新規
5: 限界点
単一のヨウ化物イオンのみの検討
固体状態での構造と機能評価が不足
結論
剛直なπ共役環[4]クリサオレンがヨウ化物イオンを強く認識
酸化還元に伴うアニオン結合能の劇的な変化を実証
開殻分子とアニオンの協同効果が新機能の発現に寄与
ラジカル分子の新たな設計指針を与える成果
将来の展望
複核イオンや球状イオンとの包接化合物の探索
伝導性材料などへの応用展開
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