2024年5月3日金曜日

Catch Key Points of a Paper ~0014~

論文のタイトル: Na2C3O2: The First Crystalline Compound with the Elusive −C≡C−COO− Anion (Na2C3O2: 初の結晶性化合物における希有な C≡C-COO陰イオン)

著者: Markus Krüger, Alexandra Lamann-Glees, Sean S. Sebastian, Renée Siegel, Jürgen Senker, Jan Hempelmann, Richard Dronskowski, and Uwe Ruschewit

雑誌: Angewandte Chemie International Edition

出版年: 2024年


背景

1:  研究の背景

金属カルボン酸塩や金属アセチリドの配位化学は良く確立されている

しかし、1つの配位子で両方の配位モードを実現したものは極めてまれ


2: 未解決の問題

C3O22-アニオンは有機反応の中間体として知られているが、単離・詳細な特性評価はされていない

結晶性化合物中で二次元C≡C-COOアニオンを実現することが未解決の課題


3: 研究の目的

プロパルギル酸ナトリウム塩から C≡C-COO アニオンを持つ結晶性化合物を合成

結晶構造解析と分光学的手法によりアニオンの存在を実証する


方法

1: 実験デザイン

プロパルギル酸ナトリウム塩を出発原料とする

液体アンモニア中でナトリウムエレクトライドあるいはNaC2Hと反応させる 

生成物の結晶構造をリートベルト解析により決定


2: 構造解析

粉末単結晶構造解析にシンクロトロン放射光を使用 

13C固体NMR、IR/ラマン分光の実測値とDFT計算値を比較


3: 分光学的手法

13C固体NMR、IR/ラマンスペクトルによりアニオン存在の証拠を得る

23NaNMRによりNa+の配位環境を評価


結果

1: 結晶構造

Na2C3O2は単斜晶系I2/aに属する  

6員環状に連なったNa+とC≡C-COOアニオンからなる3次元構造


2: 13C MAS NMR

Na2C3O2では3つの13C 共鳴が観測された(δ 163.3, 132.3, 114.7 ppm)

プロパルギル酸塩と比べ大きく低磁場シフト


3: IR/ラマン

ν(C≡C) = 2012 cm-1と大きく低波数シフト

実測値とDFT計算値が良く一致


考察  

1: C≡C-COOアニオンの存在証明

回折データ、固体NMR、分光データすべてが一致

希有なC≡C-COOアニオンの結晶学的実証に成功  


2: 構造の特徴

C≡C-COOアニオンがカルボキシレートとアセチリドの両方で配位

ナトリウムエレクトライド使用時に副生成物が観測された


3: 反応条件の影響

NaC2Hを用いると副生成物は観測されなかった

結晶性は低下するがNaエレクトライドよりも穏和な条件


4: 限界点

Na2C3O2は空気や水分に敏感で取り扱いが困難

熱分析などの追加データが得られていない  


結論

希有なC≡C-COOアニオンを有するNa2C3O2の合成と構造決定に成功

配位多様性の高い新規配位子として興味深い


今後の展望

他の金属との類似体の合成や物性評価が今後の課題

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