論文のタイトル: Na2C3O2: The First Crystalline Compound with the Elusive −C≡C−COO− Anion (Na2C3O2: 初の結晶性化合物における希有な C≡C-COO陰イオン)
著者: Markus Krüger, Alexandra Lamann-Glees, Sean S. Sebastian, Renée Siegel, Jürgen Senker, Jan Hempelmann, Richard Dronskowski, and Uwe Ruschewit
雑誌: Angewandte Chemie International Edition
出版年: 2024年
背景
1: 研究の背景
しかし、1つの配位子で両方の配位モードを実現したものは極めてまれ
2: 未解決の問題
C3O22-アニオンは有機反応の中間体として知られているが、単離・詳細な特性評価はされていない
結晶性化合物中で二次元C≡C-COOアニオンを実現することが未解決の課題
3: 研究の目的
プロパルギル酸ナトリウム塩から C≡C-COO アニオンを持つ結晶性化合物を合成
結晶構造解析と分光学的手法によりアニオンの存在を実証する
方法
1: 実験デザイン
プロパルギル酸ナトリウム塩を出発原料とする
液体アンモニア中でナトリウムエレクトライドあるいはNaC2Hと反応させる
生成物の結晶構造をリートベルト解析により決定
2: 構造解析
粉末単結晶構造解析にシンクロトロン放射光を使用
13C固体NMR、IR/ラマン分光の実測値とDFT計算値を比較
3: 分光学的手法
13C固体NMR、IR/ラマンスペクトルによりアニオン存在の証拠を得る
23NaNMRによりNa+の配位環境を評価
結果
1: 結晶構造
Na2C3O2は単斜晶系I2/aに属する
6員環状に連なったNa+とC≡C-COOアニオンからなる3次元構造
2: 13C MAS NMR
Na2C3O2では3つの13C 共鳴が観測された(δ 163.3, 132.3, 114.7 ppm)
プロパルギル酸塩と比べ大きく低磁場シフト
3: IR/ラマン
ν(C≡C) = 2012 cm-1と大きく低波数シフト
実測値とDFT計算値が良く一致
考察
1: C≡C-COOアニオンの存在証明
回折データ、固体NMR、分光データすべてが一致
希有なC≡C-COOアニオンの結晶学的実証に成功
2: 構造の特徴
C≡C-COOアニオンがカルボキシレートとアセチリドの両方で配位
ナトリウムエレクトライド使用時に副生成物が観測された
3: 反応条件の影響
NaC2Hを用いると副生成物は観測されなかった
結晶性は低下するがNaエレクトライドよりも穏和な条件
4: 限界点
Na2C3O2は空気や水分に敏感で取り扱いが困難
熱分析などの追加データが得られていない
結論
希有なC≡C-COOアニオンを有するNa2C3O2の合成と構造決定に成功
配位多様性の高い新規配位子として興味深い
今後の展望
他の金属との類似体の合成や物性評価が今後の課題
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