著者: Craig S. Day, Rosie J. Somerville, Ruben Martin
雑誌: Nature Catalysis
出版年: 2021
背景
1: 研究の背景
ニッケル触媒によるC-O結合の活性化と新規C-C結合形成反応
簡便な前駆体から分子の複雑性を迅速に構築できる有用な手法
パラジウムや白金とは異なる単一電子経路が可能
通常の芳香族ハロゲン化物に代えてフェノール由来の基質が利用可能
2: 未解決の問題
ニッケル触媒によるアリールエステルのC-O結合活性化の機構は不明
単座配位子ニッケル錯体の酸化的付加中間体の同定が未解明
添加剤の役割(特にZn(II))が不明確
3: 研究の目的
アリールエステルのニッケル酸化的付加中間体の同定と反応性評価
単座配位子ニッケル錯体におけるZn(II)の役割を解明
触媒サイクルにおける非生産的経路の特定
方法
1: 実験手法
ニッケル(0)錯体とアリールエステルの反応によるモノ核酸化的付加錯体の合成
X線結晶構造解析による酸化的付加中間体の同定
種々の分光学的手法(NMR等)を用いた反応性評価
2: 触媒と基質
モノデンテートリシクロヘキシルホスフィン配位子を有するニッケル錯体
非πひずみアリールエステル基質
3: 主要評価項目
酸化的付加中間体の同定と構造決定
中間体の反応性(転位反応、脱離反応等)
Zn(II)存在下での反応経路の変化
4: 評価法
NMRスペクトル
X線結晶構造解析データの詳細な解析
反応条件と生成物分布から反応経路の推定
結果
1: κ1-O結合モード酸化的付加錯体の単離と構造決定
2: κ2-O結合モード酸化的付加錯体の単離と同定
3: Ni(I)カルボキシラート錯体の単離と分解経路の解明
考察
1: モノデンテート配位子下でのκ2-O結合モード酸化的付加中間体の同定
従来のκ1-O結合モードとは異なる配位形態
より反応性が高いと予想される
2: Zn(II)の二面的役割
生産的な金属交換反応が進行する一方で
配位子の脱離、ニッケル-亜鉛クラスターの生成による非生産的経路も併存
3: 先行研究との比較
単座配位子系での酸化的付加中間体の同定は初例
ニッケル-亜鉛クラスターの単離と構造決定に成功
4: 研究の限界
モデル反応を用いた基礎研究
実際の触媒反応条件下での挙動は不明確
5: 溶媒効果の解明
配位溶媒の添加によりZn(II)との非生産的経路が抑制されることを発見
触媒活性の向上が期待される
結論
ニッケル触媒によるアリールエステルのC-O結合活性化反応の機構解明に成功
モノデンテート配位子下での酸化的付加中間体の同定に世界で初めて成功
Zn(II)が生産的・非生産的の両経路を制御する二面的役割を明らかに
配位溶媒の添加が非生産的経路を抑制し、触媒活性向上が期待される
将来の展望
これらの知見は、より効率的な新規C-C結合形成反応の開発に貢献する
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