2024年5月19日日曜日

Catch Key Points of a Paper ~0032~

論文のタイトル: Deciphering the dichotomy exerted by Zn(II) in the catalytic sp2 C–O bond functionalization of aryl esters at the molecular level

著者: Craig S. Day, Rosie J. Somerville, Ruben Martin

雑誌: Nature Catalysis

出版年: 2021


背景

1: 研究の背景

ニッケル触媒によるC-O結合の活性化と新規C-C結合形成反応

簡便な前駆体から分子の複雑性を迅速に構築できる有用な手法

パラジウムや白金とは異なる単一電子経路が可能

通常の芳香族ハロゲン化物に代えてフェノール由来の基質が利用可能


2: 未解決の問題

ニッケル触媒によるアリールエステルのC-O結合活性化の機構は不明

単座配位子ニッケル錯体の酸化的付加中間体の同定が未解明

添加剤の役割(特にZn(II))が不明確


3: 研究の目的 

アリールエステルのニッケル酸化的付加中間体の同定と反応性評価

単座配位子ニッケル錯体におけるZn(II)の役割を解明

触媒サイクルにおける非生産的経路の特定


方法

1: 実験手法

ニッケル(0)錯体とアリールエステルの反応によるモノ核酸化的付加錯体の合成

X線結晶構造解析による酸化的付加中間体の同定  

種々の分光学的手法(NMR等)を用いた反応性評価


2: 触媒と基質  

モノデンテートリシクロヘキシルホスフィン配位子を有するニッケル錯体

非πひずみアリールエステル基質


3: 主要評価項目

酸化的付加中間体の同定と構造決定

中間体の反応性(転位反応、脱離反応等)

Zn(II)存在下での反応経路の変化


4: 評価法

NMRスペクトル

X線結晶構造解析データの詳細な解析

反応条件と生成物分布から反応経路の推定


結果

1: κ1-O結合モード酸化的付加錯体の単離と構造決定


2: κ2-O結合モード酸化的付加錯体の単離と同定  


3: Ni(I)カルボキシラート錯体の単離と分解経路の解明


考察

1: モノデンテート配位子下でのκ2-O結合モード酸化的付加中間体の同定

従来のκ1-O結合モードとは異なる配位形態  

より反応性が高いと予想される


2: Zn(II)の二面的役割

生産的な金属交換反応が進行する一方で

配位子の脱離、ニッケル-亜鉛クラスターの生成による非生産的経路も併存


3: 先行研究との比較

単座配位子系での酸化的付加中間体の同定は初例  

ニッケル-亜鉛クラスターの単離と構造決定に成功


4: 研究の限界

モデル反応を用いた基礎研究

実際の触媒反応条件下での挙動は不明確


5: 溶媒効果の解明  

配位溶媒の添加によりZn(II)との非生産的経路が抑制されることを発見

触媒活性の向上が期待される


結論

ニッケル触媒によるアリールエステルのC-O結合活性化反応の機構解明に成功

モノデンテート配位子下での酸化的付加中間体の同定に世界で初めて成功

Zn(II)が生産的・非生産的の両経路を制御する二面的役割を明らかに

配位溶媒の添加が非生産的経路を抑制し、触媒活性向上が期待される


将来の展望

これらの知見は、より効率的な新規C-C結合形成反応の開発に貢献する

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