2024年5月6日月曜日

Catch Key Points of a Paper ~0020~

論文のタイトル: One-Step Continuous Flow Synthesis of Antifungal WHO Essential Medicine Flucytosine Using Fluorine

著者: Antal Harsanyi, Annelyse Conte, Laurent Pichon, Alain Rabion, Sandrine Grenier, and Graham Sandford

雑誌: Organic Process Research & Development

出版年: 2017, 21, 273-276


背景 

1: 研究背景

クリプトコッカス髄膜炎は、HIV/エイズ患者に多く見られる真菌感染症

年間62万5000人が死亡しており、サハラ以南のアフリカで髄膜炎の主要原因

世界保健機関(WHO)は、この感染症の第一選択治療薬としてアムホテリシンBとフルシトシンの併用を推奨


2: 従来の問題点

フルシトシンはアフリカのどの国でも使用登録されていない

製造コストが高く、ジェネリック医薬品メーカーが少ない  

低所得国での入手が困難な状況


3: 研究の目的   

フルシトシンの低コスト・簡便な製造方法を開発

安価な原料とフッ素ガスを用いた1ステップ連続フロー合成法の確立

WHOのフルシトシン供給要求に応える低コスト製造プロセス


方法  

1: 研究デザイン

化学反応の最適化と製造プロセスの確立


2: 原料と試薬

原料: シトシン

試薬: フッ素ガス、ギ酸  


3: 連続フロー反応装置

ステンレス鋼製チューブ反応器 (1.4 mm ID x 1 m)

ケイ素炭化物製パイロットスケールフロー反応器 (16 m 長、61 mL 容量)


4: 分析

生成物の同定: NMR、MS など

純度分析: HPLC


結果

1: バッチ法との比較

バッチ法では不純物が多く生じ、収率が38%  

連続フロー法で選択性が向上し、収率が63%に改善


2: ラボスケール連続フロー合成

ステンレスチューブ反応器で100%転化率

フルシトシン収率63%  


3: パイロットスケール連続フロー合成  

ケイ素炭化物製フロー反応器を用いた製造プロセス

1時間で純度99.8%のフルシトシン58 gを合成(収率83%)


考察

1: フッ素化反応の改善  

連続フロー法で反応時間とフッ素量の最適化が可能に

望ましい生成物への選択性が大幅に向上  


2: 従来法との比較

従来の4ステップ合成に比べてプロセスが大幅に簡略化

初期設備投資が低コストで済む


3: WHO必須医薬品リストへの対応

WHOがフルシトシンをHIV/エイズ治療の必須医薬品に指定  

本製造法で低所得国への供給が可能に


結論

フッ素ガスとシトシンから、1ステップの連続フロー合成でフルシトシンを製造

従来法に比べて大幅に簡便なプロセス

WHOの要求に応えられる低コスト製造が可能に  

HIV/エイズ治療薬アクセス向上に貢献する重要な製造技術


将来の展望

製造コストの詳細な分析が必要  

ジェネリック製薬会社との連携による実用化

他の医薬品合成への応用可能性の検討

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