論文のタイトル: One-Step Continuous Flow Synthesis of Antifungal WHO Essential Medicine Flucytosine Using Fluorine
著者: Antal Harsanyi, Annelyse Conte, Laurent Pichon, Alain Rabion, Sandrine Grenier, and Graham Sandford
雑誌: Organic Process Research & Development
出版年: 2017, 21, 273-276
背景
1: 研究背景
クリプトコッカス髄膜炎は、HIV/エイズ患者に多く見られる真菌感染症
年間62万5000人が死亡しており、サハラ以南のアフリカで髄膜炎の主要原因
世界保健機関(WHO)は、この感染症の第一選択治療薬としてアムホテリシンBとフルシトシンの併用を推奨
2: 従来の問題点
フルシトシンはアフリカのどの国でも使用登録されていない
製造コストが高く、ジェネリック医薬品メーカーが少ない
低所得国での入手が困難な状況
3: 研究の目的
フルシトシンの低コスト・簡便な製造方法を開発
安価な原料とフッ素ガスを用いた1ステップ連続フロー合成法の確立
WHOのフルシトシン供給要求に応える低コスト製造プロセス
方法
1: 研究デザイン
化学反応の最適化と製造プロセスの確立
2: 原料と試薬
原料: シトシン
試薬: フッ素ガス、ギ酸
3: 連続フロー反応装置
ステンレス鋼製チューブ反応器 (1.4 mm ID x 1 m)
ケイ素炭化物製パイロットスケールフロー反応器 (16 m 長、61 mL 容量)
4: 分析
生成物の同定: NMR、MS など
純度分析: HPLC
結果
1: バッチ法との比較
バッチ法では不純物が多く生じ、収率が38%
連続フロー法で選択性が向上し、収率が63%に改善
2: ラボスケール連続フロー合成
ステンレスチューブ反応器で100%転化率
フルシトシン収率63%
3: パイロットスケール連続フロー合成
ケイ素炭化物製フロー反応器を用いた製造プロセス
1時間で純度99.8%のフルシトシン58 gを合成(収率83%)
考察
1: フッ素化反応の改善
連続フロー法で反応時間とフッ素量の最適化が可能に
望ましい生成物への選択性が大幅に向上
2: 従来法との比較
従来の4ステップ合成に比べてプロセスが大幅に簡略化
初期設備投資が低コストで済む
3: WHO必須医薬品リストへの対応
WHOがフルシトシンをHIV/エイズ治療の必須医薬品に指定
本製造法で低所得国への供給が可能に
結論
フッ素ガスとシトシンから、1ステップの連続フロー合成でフルシトシンを製造
従来法に比べて大幅に簡便なプロセス
WHOの要求に応えられる低コスト製造が可能に
HIV/エイズ治療薬アクセス向上に貢献する重要な製造技術
将来の展望
製造コストの詳細な分析が必要
ジェネリック製薬会社との連携による実用化
他の医薬品合成への応用可能性の検討
0 件のコメント:
コメントを投稿