著者: Bai Amutha Anjali, Cherumuttathu H. Suresh
雑誌: ACS Omega
巻: 2, 4196-4206
出版年: 2017年
背景
1: 研究の背景
パラジウム触媒は有機合成において非常に重要
酸化的付加反応が触媒サイクルの開始段階で決定的
配位子選択が酸化的付加の活性化エネルギーに影響
2: 未解決の問題点
酸化的付加における配位子効果の定量的評価が困難
効率的な触媒設計のための電子的指標がない
3: 研究の目的
分子静電ポテンシャル(MESP)を用いて金属中心の電子密度を評価
MESPと配位子効果・酸化的付加の活性化エネルギーの相関を確立
MESPに基づく合理的な触媒設計手法を提案
方法
1: 計算手法
B3LYP/BS1レベルの密度汎関数理論
50種の配位子(リン、NHC、アルキン、アルケン)
Ph-X (X = Br, Cl, F, Me)の酸化的付加反応の計算
2: 解析手法
配位子単独の分子静電ポテンシャル(MESP)最小値(Vmin)を計算
金属中心のMESP値(VPd)を算出
VPdと配位子効果、活性化エネルギーの相関解析
3: 計算システム
Pd(L)2および単核Pd(L)種
配位子置換基効果の検討
酸化的付加の経路と活性化エネルギーの算出
結果
1: 配位子のMESP(Vmin)解析結果
リン置換基: Cy3 > tBu3 > alkyl > (SiMe3)3 > aryl > 電子求引性置換基
NHC: NMe2H2 > NH2H2 > NMe2(COOMe)2 > NMe2X2 (X = 電子求引性置換基)
アルキン・アルケン: アミノ > アルキル > フェニル > 水素 > ハロゲン
2: 金属中心のMESP(VPd)解析結果
電子供与性配位子でVPdが負に大きい
VPdと配位子解離エネルギーの相関性は低い
3: 酸化的付加の活性化エネルギー比較結果
Ph-F, Ph-Meが最も高いEact
Ph-Brが最も低いEact
電子供与性配位子でEactが小さい
考察
1: 配位子効果の分子静電ポテンシャル(MESP)解釈
Vminが負に大きいほど配位子は電子供与性
VPdが負に大きいほど金属は電子過剰
電子過剰金属種は酸化的付加を受けやすい
2: VPdとEactの相関
VPdとEactに強い直線相関
配位子の電子供与能がEactを決定
VPdからEactの定量的予測が可能
3: 指標の有用性
VPdは酸化的付加の反応性指標として有用
配位子設計によりVPdを制御可能
効率的な酸化的付加触媒の分子設計に応用できる
4: 限界点
アニオン性Pdや3配位Pd種など他の系への適用
結論
分子静電ポテンシャル(MESP)で金属中心の電子状態を定量評価できる
VPdと活性化エネルギーに強い相関
配位子設計によるVPd制御が望ましい触媒を提供
効率的な酸化的付加触媒の合理設計法を確立
今後の展望
実験的検証
他の反応や物性予測への拡張が期待される
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