2024年5月6日月曜日

Catch Key Points of a Paper ~0019~

 論文のタイトル: Interpreting Oxidative Addition of Ph−X (X = CH3, F, Cl, and Br) to Monoligated Pd(0) Catalysts Using Molecular Electrostatic Potential

著者: Bai Amutha Anjali, Cherumuttathu H. Suresh

雑誌: ACS Omega 

巻: 2, 4196-4206

出版年: 2017年


背景

1: 研究の背景

パラジウム触媒は有機合成において非常に重要

酸化的付加反応が触媒サイクルの開始段階で決定的

配位子選択が酸化的付加の活性化エネルギーに影響


2: 未解決の問題点

酸化的付加における配位子効果の定量的評価が困難

効率的な触媒設計のための電子的指標がない  


3: 研究の目的

分子静電ポテンシャル(MESP)を用いて金属中心の電子密度を評価

MESPと配位子効果・酸化的付加の活性化エネルギーの相関を確立

MESPに基づく合理的な触媒設計手法を提案


方法

1: 計算手法

B3LYP/BS1レベルの密度汎関数理論

50種の配位子(リン、NHC、アルキン、アルケン)

Ph-X (X = Br, Cl, F, Me)の酸化的付加反応の計算


2: 解析手法 

配位子単独の分子静電ポテンシャル(MESP)最小値(Vmin)を計算  

金属中心のMESP値(VPd)を算出

VPdと配位子効果、活性化エネルギーの相関解析


3: 計算システム

Pd(L)2および単核Pd(L)種

配位子置換基効果の検討

酸化的付加の経路と活性化エネルギーの算出


結果

1: 配位子のMESP(Vmin)解析結果

リン置換基: Cy3 > tBu3 >  alkyl > (SiMe3)3 > aryl > 電子求引性置換基

NHC: NMe2H2 > NH2H2 > NMe2(COOMe)2 > NMe2X2 (X = 電子求引性置換基)

アルキン・アルケン: アミノ > アルキル > フェニル > 水素 > ハロゲン


2: 金属中心のMESP(VPd)解析結果

電子供与性配位子でVPdが負に大きい

VPdと配位子解離エネルギーの相関性は低い


3: 酸化的付加の活性化エネルギー比較結果

Ph-F, Ph-Meが最も高いEact 

Ph-Brが最も低いEact

電子供与性配位子でEactが小さい


考察  

1: 配位子効果の分子静電ポテンシャル(MESP)解釈

Vminが負に大きいほど配位子は電子供与性

VPdが負に大きいほど金属は電子過剰

電子過剰金属種は酸化的付加を受けやすい


2: VPdとEactの相関

VPdとEactに強い直線相関

配位子の電子供与能がEactを決定  

VPdからEactの定量的予測が可能


3: 指標の有用性

VPdは酸化的付加の反応性指標として有用

配位子設計によりVPdを制御可能

効率的な酸化的付加触媒の分子設計に応用できる


4: 限界点

アニオン性Pdや3配位Pd種など他の系への適用


結論

分子静電ポテンシャル(MESP)で金属中心の電子状態を定量評価できる

VPdと活性化エネルギーに強い相関

配位子設計によるVPd制御が望ましい触媒を提供

効率的な酸化的付加触媒の合理設計法を確立


今後の展望

実験的検証

他の反応や物性予測への拡張が期待される

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