論文のタイトル: Nitrogen Lewis Acids
著者: Alla Pogoreltsev, Yuri Tulchinsky, Natalia Fridman, Mark Gandelman
雑誌: Journal of the American Chemical Society
巻: 139巻, 4062-4067ページ
出版年: 2017
背景
1: 研究の背景
ルイス酸は化学の基本概念で、様々な化学分野で不可欠な役割を果たしている
従来は主にホウ素、アルミニウム、リン、スズ、アンチモンなどの元素を中心としたルイス酸が知られている
2: 未解決の問題点
窒素原子を中心としたルイス酸はこれまでほとんど知られていなかった
既存の電子不足窒素化合物はルイス塩基との安定な付加体を形成しない
3: 本研究の目的
安定で立体化学的に修飾可能な窒素ルイス酸の開発
窒素ルイス酸とルイス塩基との安定な付加体の形成と構造決定
方法
1: 研究デザイン
トリアゾリウム塩およびトリアジニウム塩の合成
これらの窒素ルイス酸とリン系および炭素系ルイス塩基との反応
2: 構造解析
NMR分光分析による生成物の同定
単結晶X線構造解析による分子構造決定
3: 理論計算
DFT計算による反応性と構造の解析
ルイス酸性発現の理論的根拠の検討
結果
1: 窒素ルイス酸の発見
トリアゾリウム塩およびトリアジニウム塩がルイス塩基と安定な付加体を形成
付加体の構造がNMRおよびX線で決定された
2: 新規環状化合物の合成
付加体の一部が分子内環化して新規の三級飽和窒素化合物(トリアザン)を与えた
3: 理論計算による反応性解析
DFT計算により、π共役系の増大とともにルイス酸性が増大することが示された
中心窒素の空のπ軌道がルイス酸性発現の起源であることが支持された
考察
1: 窒素ルイス酸の特徴
従来の典型元素ルイス酸に並ぶ新規なルイス酸の発見
幅広い修飾が可能で、ルイス酸性が電子的に調節可能
2: 環状トリアザンの特性
新規な三級飽和窒素化合物で、特異な構造と反応性が期待される
3: 計算化学的考察
中心窒素のπ軌道のエネルギー準位がルイス酸性を決定する重要な因子
六員環化合物の方が五員環より大きな歪みを受けやすく、より安定な付加体形成に寄与
4: 限界点
トリアゾリウム環開環の機構など、一部の反応経路が未解明
より幅広いルイス塩基との反応性評価が必要
結論
窒素を中心とする新規なルイス酸系が開発された
新奇の三級飽和窒素化合物(トリアザン)の合成に成功した
将来の展望
新規化合物群として、さらなる探索が必要
本研究は、ルイス酸化学の新たな方向性を拓く可能性がある
窒素ルイス酸の触媒反応や超分子化学への応用が期待される
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