論文のタイトル: The Role of Aryne Distortions, Steric Effects, and Charges in Regioselectivities of Aryne Reactions
著者: Jose M. Medina, Joel L. Mackey, Neil K. Garg, K. N. Houk
雑誌: Journal of the American Chemical Society
巻: 136, 15798-15805
出版年: 2014
背景
1: 研究の背景
アライン反応は複雑な分子を合成する有用な手法
しかし、置換基の影響でアライン反応の選択性が変わる
選択性を説明する従来の3つのモデル
- 電荷制御モデル
- 立体障害モデル
- アライン歪みモデル
2: 未解決の問題点
アライン反応の選択性に影響する主要な要因は不明
3つのモデルのうち、どれが最も重要か分かっていない
3: 研究の目的
3-ハロベンザインの反応性と選択性を実験と計算で体系的に調査
アライン反応の選択性を支配する主要な要因を特定する
方法
1: 実験デザイン
様々な3-ハロベンザイン前駆体を合成
求核剤として N-メチルアニリンやベンジルアジドを使用
補足反応により生成物の比を測定
2: 計算手法
密度汎関数理論(DFT)を用いた遷移状態探索
反応経路の自由エネルギー変化を計算
異性体比の理論予測と実験値を比較
結果
1: N-メチルアニリンを用いた実験結果
F、OMe置換体は高い選択性
Cl置換体は中程度の選択性
Br、I置換体は低い選択性
2: ベンジルアジドを用いた実験結果
OMe、F置換体は高い選択性
選択性はCl > Br > I の順に低下
3: 計算結果の概要
実験結果と計算結果は良く一致
置換基による歪みが大きいほど高い選択性
電荷や立体効果による影響は小さい
考察
1: アライン歪みが選択性を支配
置換基による歪みが遷移状態の安定性に影響
歪みが大きいと特定の付加体が有利になる
2: 電荷効果は無視できる
ベンザイン環上の電荷は小さく、選択性に影響しない
簡単なCoulomb相互作用モデルでも説明できない
3: 立体効果の影響は小さい
原子半径の違いによる立体効果は予測と一致しない
置換基の大きさと選択性に相関がない
4: 限界点
塩基性の高い求核剤では異なる挙動が予想される
他の置換基効果(π効果など)は検討していない
結論
3-ハロベンザイン反応の選択性はアライン歪みが主な決定因子
アライン歪みモデルはアライン反応の解析に有用
今後の展望
複雑な生理活性分子の合成へのアライン活用が期待される
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