論文のタイトル: E-Olefins through intramolecular radical relocation
著者: Ajoy Kapat, Theresa Sperger, Sinem Guven, Franziska Schoenebeck
雑誌: Science
巻: Vol. 363, Issue 6425
出版年: 2019年
背景
1: 研究の背景
炭素-炭素二重結合の幾何構造の制御は医薬品、食品、香料産業で中心的な役割を担う
従来のWittig反応やBirch還元では立体選択性が不十分
2: 未解決の問題点
貴金属水素化物を用いた二重結合異性化が一般的だが可逆的で水素交換が起こる
非貴金属触媒を用いた二重結合異性化では立体選択性が低い
3: 研究の目的
ラジカル機構による1,3-水素原子移動で高いE選択性を実現
安価な非貴金属であるニッケル触媒を利用
方法
1: 研究デザイン
ニッケル(I)二量体触媒の合成と反応検討
基質スコープと反応条件の最適化
2: 反応機構解析手法
同位体標識実験、ラジカルプローブ実験
計算化学的手法による解析
結果
1: 反応結果
室温・短時間でE選択的二重結合異性化が進行
幅広い官能基に対する高い基質一般性
2: 反応機構解析結果
シクロプロペニルオレフィンを用いたラジカル性の実証
考察
1: 主要な知見
新規ラジカル的1,3-水素原子移動機構の発見
金属ラジカル種を経由する分子内ラジカル的水素移動
2: 先行研究との比較
可逆的水素交換が無く、高E選択性発現
共酸化剤や水素源を必要としない
3: 反応の一般性と官能基許容性
ハロゲン、ニトリル、ボロン酸エステルなどの官能基が許容される
4: 反応の工業的有用性
簡便な条件、スケールアップ可能、溶媒不要による持続可能性
5: 限界点
長鎖状基質の場合、副生成物が増加する
結論
安価な非貴金属ニッケル触媒を用いたE選択的ラジカル的二重結合異性化反応の開発に成功
従来法の問題を克服し、多様な基質に適用可能
官能基許容性が高く、工業的にも有望な手法
今後の展望
長鎖基質への適用
更なる反応加速・高選択化が期待される
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