論文のタイトル: New Solids Based on B12N12 Fullerenes
著者: J. M. Matxain, L. A. Eriksson, J. M. Mercero, X. Lopez, M. Piris, J. M. Ugalde, J. Poater, E. Matito, M. Solà
雑誌: Journal of Physical Chemistry C
巻: 第111巻, 第36号
出版年: 2007年
背景
1: 研究の背景
フラーレン発見後、同様の構造をもつBN化合物への関心が高まった
理論計算により安定なBN fullereneクラスターが予測された
実験的にもBN fullereneの合成が報告されている
2: 研究の目的
B12N12 fullereneを基にした新規固体の理論的探索
B12N12一分子を単位とする固体構造の特性解明
3: 期待される成果
B12N12 fullereneを基にした新規ナノ多孔性固体の発見
この固体の電子構造、エネルギー的安定性、物性の予測
方法
1: 計算手法
密度汎関数理論 (DFT) を用いた第一原理計算
B12N12 fullerene二量体の構造と相互作用エネルギーを計算
2: 計算レベル
B3LYP、MPW1PW91の交換相関汎関数を使用
原子軌道基底関数、有効内核疑ポテンシャルを適用
3: 固体状態計算
SIESTAコードを用いた周期的境界条件下での最適化計算
PBE汎関数、ノルム保存擬ポテンシャル使用
4: 解析手法
構造最適化、結合エネルギー、電子構造、IR スペクトルを解析
結果
1: 二量体の安定構造
正方形同士が向かい合う構造 (S-S) が最安定
共有結合性二量体 (Cov) と van der Waals 性二量体 (VW) が存在
2: 二量体の相互作用エネルギー
CovS-S が最も安定 (B3LYP: -1.50 eV, MPW1PW91: -2.07 eV)
VWS-S と VWH-H はそれより不安定
共有結合性二量体と分子間力で結合した二量体が共存
3: 固体構造
Cov 固体はナノ多孔質構造を形成、VW 固体は密な構造
Cov 固体の方が 12 eV 程度安定
共有結合性多孔質固体が最も安定
考察
1: 二量体の安定性
N原子の非共有電子対とB原子の空軌道との相互作用が重要
正方形面どうしの方が六員環面よりも立体反発が小さい
2: 共有結合性二量体の形成
B-N結合距離の伸長により、モノマー構造を維持しつつ共有結合可能
先行研究との一致: Batsanovらの実験により観測されたE-BN相の発見
3: ナノ多孔質固体の特徴
表面積が大きく、分子吸着や触媒への応用が期待される
フラーレン固体と同様の構造を有する可能性
4: 固体の電子構造
Cov固体、VW固体ともに絶縁体的性質を示す
モノマーに比べバンドギャップは小さくなる
5: 限界点
実験的合成の指針は得られていない
より大きな系への展開が必要
結論
B12N12 fullereneから新しいナノ多孔質固体が理論的に提案された
BNナノ構造体の合理設計につながる重要な知見が得られた
今後の展望
エネルギー的に安定で、分子吸着や触媒への応用が期待される
実験的検証と、さらなる大規模系への展開が今後の課題
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