2024年5月22日水曜日

Catch Key Points of a Paper ~0035~

論文のタイトル: Drying of Organic Solvents: Quantitative Evaluation of the Efficiency of Several Desiccants

著者: D. Bradley G. Williams and Michelle Lawton 

雑誌: Journal of Organic Chemistry

巻: 75, 24, 8351–8354

出版年: 2010


背景

1: 研究の背景

有機合成では乾燥(脱水)した溶媒が必要

しかし、一般的な乾燥方法の効率は定量的に評価されていない

活性金属や水素化物を使う方法は危険性がある


2: 問題点

文献に掲載されている乾燥方法には矛盾がある  

乾燥剤の効率が十分検証されていない

安全で効率的な乾燥方法の確立が必要


3: 研究の目的

一般的な有機溶媒に対する各種乾燥剤の効率を定量的に評価

安全で実用的な溶媒乾燥方法を提案


方法

1: 研究デザイン

各溶媒に一定量の三重水を添加

様々な乾燥剤で処理後、残留水分量を測定


2: 測定対象 

テトラヒドロフラン、トルエン、ジクロロメタン、アセトニトリル、メタノール、エタノール

乾燥剤: 分子ふるい、アルミナ、シリカゲル、酸化カルシウム、水素化リチウムアルミニウムなど


3: 評価項目

電量カールフィッシャー滴定による残留水分量測定


4: 統計解析

3回繰り返し乾燥、各試料6回測定(n=18)

平均値と標準偏差を算出


結果

1: テトラヒドロフラン

ナトリウム/ベンゾフェノン: 43 ppm残留

3A˚ モレキュラーシーブス(20% m/v): 48時間で6 ppm

中性アルミナ: 単に通すだけで5.9 ppm 


2: トルエン 

ナトリウム/ベンゾフェノン: 31 ppm残留

3A˚ モレキュラーシーブス(10% m/v): 24時間で0.9 ppm

シリカゲル: 単に通すだけで2.1 ppm


3: その他の溶媒

ジクロロメタン: 3A˚ モレキュラーシーブス/シリカゲルで0.1〜1.3 ppm

アセトニトリル: リン酸で5 ppm、3A˚ モレキュラーシーブスで27 ppm  

メタノール/エタノール: 3A˚ モレキュラーシーブス(20% m/v)で10 ppm以下


考察  

1: 主な発見

3A˚ モレキュラーシーブス、中性アルミナ、シリカゲルが優れた乾燥剤

溶媒の種類によって最適な乾燥剤が異なる

反応性金属は不要、危険も伴う


2: 先行研究との比較

Burfieldらの結果と一部一致

溶媒の極性や水分含量によって乾燥効率が変化


3: 基礎乾燥方法の有用性

水酸化カリウムやリン酸は基礎乾燥に有用

3A˚ モレキュラーシーブスによる後処理で超乾燥溶媒が得られる  


4: 安全性の向上

本研究で提案する方法は活性金属を使わず安全

実験室で簡便に行え、溶媒の質を向上できる


5: 限界点

過酸化物の除去は評価していない

一部の溶媒で同位体交換が起こる可能性


結論

各種溶媒に対する様々な乾燥剤の効率を初めて定量的に評価

3A˚ モレキュラーシーブス、中性アルミナ、シリカゲルが有効な乾燥剤であることを実証

提案する安全で実用的な乾燥方法により、高品質の乾燥溶媒を簡便に調製可能

活性金属を使わないため、安全性が飛躍的に向上


将来の展望

溶媒乾燥の最適化に貢献し、合成研究の効率化が期待される

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