論文のタイトル: Drying of Organic Solvents: Quantitative Evaluation of the Efficiency of Several Desiccants
著者: D. Bradley G. Williams and Michelle Lawton
雑誌: Journal of Organic Chemistry
巻: 75, 24, 8351–8354
出版年: 2010
背景
1: 研究の背景
有機合成では乾燥(脱水)した溶媒が必要
しかし、一般的な乾燥方法の効率は定量的に評価されていない
活性金属や水素化物を使う方法は危険性がある
2: 問題点
文献に掲載されている乾燥方法には矛盾がある
乾燥剤の効率が十分検証されていない
安全で効率的な乾燥方法の確立が必要
3: 研究の目的
一般的な有機溶媒に対する各種乾燥剤の効率を定量的に評価
安全で実用的な溶媒乾燥方法を提案
方法
1: 研究デザイン
各溶媒に一定量の三重水を添加
様々な乾燥剤で処理後、残留水分量を測定
2: 測定対象
テトラヒドロフラン、トルエン、ジクロロメタン、アセトニトリル、メタノール、エタノール
乾燥剤: 分子ふるい、アルミナ、シリカゲル、酸化カルシウム、水素化リチウムアルミニウムなど
3: 評価項目
電量カールフィッシャー滴定による残留水分量測定
4: 統計解析
3回繰り返し乾燥、各試料6回測定(n=18)
平均値と標準偏差を算出
結果
1: テトラヒドロフラン
ナトリウム/ベンゾフェノン: 43 ppm残留
3A˚ モレキュラーシーブス(20% m/v): 48時間で6 ppm
中性アルミナ: 単に通すだけで5.9 ppm
2: トルエン
ナトリウム/ベンゾフェノン: 31 ppm残留
3A˚ モレキュラーシーブス(10% m/v): 24時間で0.9 ppm
シリカゲル: 単に通すだけで2.1 ppm
3: その他の溶媒
ジクロロメタン: 3A˚ モレキュラーシーブス/シリカゲルで0.1〜1.3 ppm
アセトニトリル: リン酸で5 ppm、3A˚ モレキュラーシーブスで27 ppm
メタノール/エタノール: 3A˚ モレキュラーシーブス(20% m/v)で10 ppm以下
考察
1: 主な発見
3A˚ モレキュラーシーブス、中性アルミナ、シリカゲルが優れた乾燥剤
溶媒の種類によって最適な乾燥剤が異なる
反応性金属は不要、危険も伴う
2: 先行研究との比較
Burfieldらの結果と一部一致
溶媒の極性や水分含量によって乾燥効率が変化
3: 基礎乾燥方法の有用性
水酸化カリウムやリン酸は基礎乾燥に有用
3A˚ モレキュラーシーブスによる後処理で超乾燥溶媒が得られる
4: 安全性の向上
本研究で提案する方法は活性金属を使わず安全
実験室で簡便に行え、溶媒の質を向上できる
5: 限界点
過酸化物の除去は評価していない
一部の溶媒で同位体交換が起こる可能性
結論
各種溶媒に対する様々な乾燥剤の効率を初めて定量的に評価
3A˚ モレキュラーシーブス、中性アルミナ、シリカゲルが有効な乾燥剤であることを実証
提案する安全で実用的な乾燥方法により、高品質の乾燥溶媒を簡便に調製可能
活性金属を使わないため、安全性が飛躍的に向上
将来の展望
溶媒乾燥の最適化に貢献し、合成研究の効率化が期待される
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