論文のタイトル: Bottom-up precise synthesis of stable platinum dimers on graphene
著者: Huan Yan, Yue Lin, Hong Wu, et al.
雑誌: Nature Communications
巻: 8, 1070
出版年: 2017
背景
1: 研究の背景
従来の支持体上の金属触媒では、金属ナノ粒子が広い粒径分布を持つ
単一原子触媒の合成例が報告されているが、正確な原子価状態の超微小金属クラスターを高比表面積の支持体に合成することは大きな課題
2: 未解決の問題点
金属原子の凝集を正確に制御できない
広い粒径分布の金属ナノ粒子が生成してしまう
3: 研究の目的
原子層堆積(ALD)を利用し、グラフェン支持体上に原子レベルで精密に合成された白金二量体(Pt2)を創製する
4: 期待される成果
触媒特性が格段に向上した原子レベルで制御された超微小金属クラスター触媒
高比表面積支持体上の正確な原子価状態制御による新しい触媒設計指針
方法
1: 研究デザイン
理論計算とX線分光を組み合わせた実験的アプローチ
グラフェン酸化物からの熱処理によるグラフェン支持体調製
2: Pt ALDサイクル
条件1
- MeCpPtMe3 前駆体と酸素ガス
- 250℃で単一白金原子(Pt1)を分散
条件2
- 150℃、オゾンガスを用いて
- Pt1 上に選択的に第2白金原子を堆積
- Pt2二量体を生成
3: 評価手法
収束イオンビーム補正走査透過電子顕微鏡(AC-STEM)
X線吸収微細構造分光法(XAFS)
密度汎関数理論(DFT)計算
結果
1: AC-STEM観察結果
サイクル1後: 単離したPt1原子のみ
サイクル2後: Pt2二量体が優勢に形成
平均Pt-Pt距離 0.30±0.02 nm (酸化状態)
2: XAFS/DFT解析結果
Pt2二量体はPt2O6鎖状構造
Pt-O結合長 ~1.93-2.03 Å
計算とXAFSスペクトルが良く一致
3: アンモニアボラン(AB)の加水分解反応結果
Pt2/グラフェン: 室温で2800 mol H2/mol Pt・min
Pt1/グラフェン、Pt NPsに比べ~17倍、45倍高活性
考察
1: Pt2二量体の高活性発現
ABおよびH2の吸着エネルギーが小さい
→ 活性種の脱離が容易に
Pt 5d軌道の不占有準位がPt1より高エネルギー
→ 電子受容性が低下
2: 先行研究との比較
単一原子触媒に比べ高活性
ナノ粒子触媒に比べAB/H2の過剰吸着がない
→ 被毒を避けられる
3: Pt2/グラフェンの高い安定性
AB加水分解反応中、構造を維持
300℃以下で二量体構造が保持される
4: 限界点
400℃以上で部分的にナノ粒子化
結論
ボトムアップALDにより、グラフェン上にPt2二量体を精密合成
単一原子触媒やナノ粒子に比べ、AB加水分解で驚異的な高活性
超微小金属クラスター触媒の新しい調製手法と設計指針
将来の展望
他の金属種や反応への展開が期待される
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