論文のタイトル: One-Pot Synthesis of Bis(arylamino)pentiptycenes by TiCl4-DABCO Assisted Reductive Amination of Pentiptycene Quinone(ペンチプチセンキノンの還元的アミノ化によるビス(アリールアミノ)ペンチプチセンのワンポット合成)
著者: Zhe-Jie Zhang, Ying-Feng Hsu, Chia-Chien Kao, Jye-Shane Yang
雑誌: Organic Letters
出版年: 2024
背景
1: ペンチプチセン骨格の重要性
ペンチプチセンは剛直な形状のため、蛍光センサー、分子デバイス、ホスト・ゲスト化合物などの応用が期待されている
ペンチプチセンキノン(1)は置換基導入の出発原料として有用
2: 従来法の課題
ビス(4-ニトロフェニルアミノ)ペンチプチセン(2g)の合成には8段階を要し、全収率は15%と低い
化合物1から一挙に二重アミノ化したジオキシム体が得られないため、迂回合成が必要
3: 研究の目的
TiCl4-DABCOを用いて1のアニリンとの一段階還元的二重アミノ化を達成
ビス(アリールアミノ)ペンチプチセン(2)の簡便合成法の開発
方法
1: 反応条件の最適化
基質比、Lewis酸(TiCl4など)、塩基(DABCOなど)、溶媒、温度、反応時間を検討
2: 基質の適用範囲の検討
種々の置換アニリンを用いて反応を行い、生成物2の収率を比較
3: 生成物2の誘導体化
ヘック反応、薗頭反応、鈴木反応によりπ共役系を伸長
SNAr反応により三級アリールアミン(4)への変換
4: 分析手法
1H NMR、13C NMR、IR、HRMS等で生成物の構造解析
結果
1: 最適反応条件
10当量アニリン、6当量TiCl4、6当量DABCO、140℃、2日間
無置換体(2a)の単離収率91%
2: 置換アニリンの適用範囲
ほとんどの置換アニリンで中〜良収率(18〜90%)で2が得られる
立体障害の大きいアニリンや強い電子供与基を有するアニリンでは収率低下
3: π系の伸長反応
4-ブロモアニリン置換体(2c)をヘック反応、ソノガシラ反応、鈴木反応で誘導体化し、良収率(76〜95%)で対応する誘導体が得られる
化合物 2cとフルオロニトロベンゼンのSNAr反応により三級アミン4が生成
考察
1: 過剰量のアニリンの必要性
5当量のアニリンでは二重アミノ化が進行せず
アニリンが求核剤のみならず、ジイミン中間体の還元剤としても作用
2: 電子求引基の効果
CN基やNO2基を有する2fや2gでは二段階法に比べ一段階法の収率が低下
電子求引基がジイミン中間体の還元を阻害するため
3: 還元的二重アミノ化の駆動力
Mills-Nixon効果により、ペンチプチセンジイミンはひずみのため芳香族化を受けやすい
これにより求核付加後の還元が起こりやすくなる
4: モノオキシムの生成阻害要因
モノオキシムのベンゼノイド化とニトロソ互変異性体の生成がジオキシム形成を阻害
トリプチセンキノンではこの影響が小さくジオキシムが得られる
5: 限界点
電子供与性の置換基を持つアニリンでは収率が低下
求核性の低下と芳香族化の促進が原因と考えられる
結論
TiCl4-DABCOを用いることで、ペンチプチセンキノンからアニリンとの一段階還元的二量化が可能に
従来8ステップを要したビス(4-ニトロフェニルアミノ)ペンチプチセン(2g)が一段階で調製可能に
本手法で得られる2は、カップリング反応やSNAr反応によりπ系拡張が可能
ペンチプチセン系の特異な化学反応性が明らかになった
将来の展望
有機エレクトロニクス材料への応用が期待される
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