2024年5月16日木曜日

Catch Key Points of a Paper ~0029~

論文のタイトル: High-Pressure Promoted Nazarov-like Electrocyclization Enables Access to trans-4,5-Diamino-cyclopent-2-enones Bearing Electron-Poor Anilines

著者: Lídia A. S. Cavaca, Tiago M. P. Santos, Joao M. J. M. Ravasco, Rafael F. A. Gomes, Carlos A. M. Afonso

雑誌: The Journal of Organic Chemistry

出版年: 2024


背景

1: 研究の背景

trans-4,5-ジアミノシクロペンテノン(DCP)は生理活性天然物の合成に重要な中間体

ルイス酸触媒を用いたフルフラールとアミンの縮合反応で合成可能

従来法では電子豊富なアニリンしか使えず、電子不足なアニリンとの反応は困難


2: 未解決の問題点

電子吸引性置換基を持つアニリンからのDCP合成が極めて困難


3: 研究の目的

高圧条件下での反応を検討し、電子吸引性アニリンからのDCP合成を実現


方法

1: 研究デザイン

密閉系での高圧反応を実施

密閉容器内でフルフラール、アミン、Sc(OTf)3触媒を混合

900 MPa、室温で8時間反応


2: 反応条件最適化

モデル基質を用いたスクリーニング実施 

圧力、触媒、溶媒、反応時間などを最適化

DFT計算で遷移状態の活性化体積を確認


結果

1: 代表的な基質例

種々の電子吸引性アニリンから高収率でDCPが得られた

NO2、CF3、Cl置換体など幅広い基質に対応

200 MPaの低圧でも反応は進行


2: 生理活性化合物の合成

ATP感受性カリウムチャネル作動薬の前駆体である6-ニトロ置換DCP

高圧条件で65%の収率で合成可能(従来法5%のみ)  

工程短縮と原料使用量の削減が可能に


考察

1: 高圧条件の効果

遷移状態での負の活性化体積により高圧で反応が促進される

特に律速の電子環状反応で顕著な効果あり  

一般に低温・低圧が望ましいが、本反応は室温・高圧が有利


2: 反応機構と特徴

従来法と同様のStenhouse塩の生成を経由  

高圧条件下で電子環状反応が加速される

様々な求核剤との組み合わせが可能


3: 既存研究との比較 

従来の方法より幅広い基質適用が可能

収率の大幅な向上が認められた

環境に優しい工程であり、実用化が期待される  


4: 限界点

高圧反応装置の入手が容易でない

量産化に向けたスケールアップ研究が必要

他の環状反応への応用研究が今後の課題


結論

高圧条件下での電子環状反応により電子吸引性アニリンからのDCP合成が可能に

工程の簡略化と原料使用量の削減が期待される

本手法は電子環状反応の新しい活用法として興味深い


将来の展望

多様な誘導体合成への応用で医薬品開発への貢献が期待される

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