著者: Lídia A. S. Cavaca, Tiago M. P. Santos, Joao M. J. M. Ravasco, Rafael F. A. Gomes, Carlos A. M. Afonso
雑誌: The Journal of Organic Chemistry
出版年: 2024
背景
1: 研究の背景
trans-4,5-ジアミノシクロペンテノン(DCP)は生理活性天然物の合成に重要な中間体
ルイス酸触媒を用いたフルフラールとアミンの縮合反応で合成可能
従来法では電子豊富なアニリンしか使えず、電子不足なアニリンとの反応は困難
2: 未解決の問題点
電子吸引性置換基を持つアニリンからのDCP合成が極めて困難
3: 研究の目的
高圧条件下での反応を検討し、電子吸引性アニリンからのDCP合成を実現
方法
1: 研究デザイン
密閉系での高圧反応を実施
密閉容器内でフルフラール、アミン、Sc(OTf)3触媒を混合
900 MPa、室温で8時間反応
2: 反応条件最適化
モデル基質を用いたスクリーニング実施
圧力、触媒、溶媒、反応時間などを最適化
DFT計算で遷移状態の活性化体積を確認
結果
1: 代表的な基質例
種々の電子吸引性アニリンから高収率でDCPが得られた
NO2、CF3、Cl置換体など幅広い基質に対応
200 MPaの低圧でも反応は進行
2: 生理活性化合物の合成
ATP感受性カリウムチャネル作動薬の前駆体である6-ニトロ置換DCP
高圧条件で65%の収率で合成可能(従来法5%のみ)
工程短縮と原料使用量の削減が可能に
考察
1: 高圧条件の効果
遷移状態での負の活性化体積により高圧で反応が促進される
特に律速の電子環状反応で顕著な効果あり
一般に低温・低圧が望ましいが、本反応は室温・高圧が有利
2: 反応機構と特徴
従来法と同様のStenhouse塩の生成を経由
高圧条件下で電子環状反応が加速される
様々な求核剤との組み合わせが可能
3: 既存研究との比較
従来の方法より幅広い基質適用が可能
収率の大幅な向上が認められた
環境に優しい工程であり、実用化が期待される
4: 限界点
高圧反応装置の入手が容易でない
量産化に向けたスケールアップ研究が必要
他の環状反応への応用研究が今後の課題
結論
高圧条件下での電子環状反応により電子吸引性アニリンからのDCP合成が可能に
工程の簡略化と原料使用量の削減が期待される
本手法は電子環状反応の新しい活用法として興味深い
将来の展望
多様な誘導体合成への応用で医薬品開発への貢献が期待される
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