論文のタイトル: Pentamethylphenyl (Ph*) ketones: Unique building blocks for organic synthesis
著者: Roly J. Armstrong, Timothy J. Donohoe
雑誌: Tetrahedron Letters
巻: 74, 153151
出版年: 2021
背景
1: 研究の背景
既存の芳香族ケトンは平面構造を好む
ペンタメチルフェニル(Ph*)ケトンは特異な反応性を示す
カルボニル基と芳香環が90度ねじれた構造
求核剤の1,2-付加を抑制
エノラート形成が可能
2: 未解決の問題点
Ph*ケトンの特性を利用した新規な化学反応の可能性
- 水素借用型アルキル化反応
- 環化反応
- 不斉アルドール反応など
有機合成ビルディングブロックとしての可能性は未開拓
3: 研究の目的
Ph*ケトンの独自の反応性を活かした新規変換反応の開発
様々な有用官能基への変換法の確立
有機合成におけるPh*ケトンの応用範囲拡大
方法
1: Ph*ケトンの合成
ペンタメチルベンゼンと酸塩化物のフリーデル・クラフツ反応
エーテル塩基存在下のエノラート形成と求電子剤との反応
2: 反応例
水素借用的アルキル化反応
- 遷移金属触媒とアルコールを用いたワンポット反応
- 1級、2級アルコールの両方が可能
アヌレーション反応
- 1,5-ジオールとの環化反応
結果
1: 水素借用的アルキル化
α-分岐ケトン生成物を定量的収率で合成可能
- ベンジル性/非ベンジル性の1級アルコール
- エーテル、アミン基含有基質に対応
β-分岐生成物の不斉合成も達成
- キラル配位子で高いエナンチオ選択性
2: アヌレーション反応
ジオールとの環化で多様な環状ケトンを合成
- 5員環、6員環、7員環環状体
- 高い立体選択性
不斉触媒的変換で高いエナンチオ選択性
- キラル環化生成物の一段階構築
考察
1: Ph*基の立体反発によるユニークな反応性
カルボニル基の1,2-付加を抑制
エノラート形成を許容
2: 環境調和型プロセス
水素借用型アルキル化は水のみを副生成物とする
3: 芳香環の嵩高さが選択性に影響
ジアステレオ選択性向上
エナンチオ選択性向上
4: 結晶性の向上による利点
単結晶X線解析が可能
再結晶による光学純度向上
5: 限界点
γ-アミノPh*ケトン類でラセミ化が問題になり、窒素へのトリチル保護基の導入が必要
Ph*基の導入が困難な基質では新規導入法の開発が必要
結論
Ph*ケトンの特異な構造と反応性が有機合成に有用
- 新規変換反応の開発が可能
- 高選択的な環化や不斉合成
官能基変換法の確立で合成等価体としての価値向上
将来の展望
今後のさらなる活用と方法論拡張が期待される
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