論文のタイトル: Stereoinversion of tertiary alcohols to tertiary-alkyl isonitriles and amines (第三級アルコールのイソニトリルおよびアミンへの立体反転)
著者: Sergey V. Pronin, Christopher A. Reiher, Ryan A. Shenvi
雑誌: Nature
巻: 501, 195–199
出版年: 2013年
背景
1: 研究の背景
天然に存在する窒素含有マリンテルペノイドは、不安定なカルボカチオンを経由し、無機シアン化物から生合成される
これらの化合物の合成は困難で、立体化学の制御が課題だった
2: 従来法の課題
第三級アルコールは従来のSN2反応が進行しにくく、立体反転を伴う変換が限られていた
新しい立体選択的な第三級アルコールの活性化法が必要とされていた
3: 研究の目的
ルイス酸を用いた第三級アルコールの立体反転的イソニトリル化反応を開発
マリンテルペノイドなどの複雑な窒素含有天然物の効率的合成
方法
1: 研究デザイン
第三級アルコールをトリフルオロ酢酸エステルに変換
スカンジウム(III)トリフラートとTMSCNの存在下で反応
2: 評価手法
生成物の構造と立体化学をNMR、X線結晶構造解析で決定
各種誘導体への変換を検討
結果
1: 反応結果
第三級トリフルオロ酢酸エステルが高い立体選択性でイソニトリルに変換された
第一級および第二級アルコールは反応しない高い化学選択性を示した
2: 基質による差
直鎖アルコールでは脱離基に長鎖ペルフルオロカルボン酸を用いた際に高い立体反転選択性が得られた
環状アルコールの場合は立体構造的に柔軟性に依存した選択性の違いがあった
3: 反応の応用性
得られたイソニトリルはアミン、アミド、イソチオシアナートなどに誘導化可能
マリンテルペノイドの合成に有用であることが示された
考察
1: 主要な知見
本反応は第三級アルコールの新規な立体反転変換法である
これまで困難だったマリンテルペノイドなどの合成が可能になった
2: 反応機構
カチオン中間体とTMSCNの攻撃過程が提唱されているが詳細は不明
基質の構造と反応条件が立体選択性に影響を与えていると考えられる
3: 発見の意義
第三級アルコールの新たな活性化法を提供した点にある
カルボカチオン化学の進展と新たな合成変換の開拓
4: 限界点
適用範囲が制限されていることが課題
条件の一般性が高くない
結論
第三級アルコールのイソニトリル化による立体反転的変換法を開発した
マリンテルペノイド合成などの複雑な分子構築に有用である
カルボカチオン化学の新たな可能性を拓いた発見である
今後の展望
より一般性の高い反応条件の検討などが今後の課題となる
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