著者: Finn Burg, Julian Egger, Johannes Deutsch, and Nicolas Guimond
雑誌: Organic Process Research & Development
巻: 20, 1540-1545
出版年: 2016年
背景
1: 研究の背景
ベンゾニトリルは化学工業で広く使われる重要な中間体
アリールハロゲン化物からの触媒的ベンゾニトリル合成が主流になりつつある
2: 従来法の問題点
従来法では不均一系や2相系の反応が多く、再現性とスケールアップの課題があった
既存の均一系法では、条件の最適化や配位子設計が十分でなかった
3: 研究の目的
広範なアリールクロリドおよびブロミドに適用できる均一系条件を開発
反応を容易にスケールアップ可能にすること
方法
1: 研究デザイン
モデル基質を用いた種々の条件検討
最適条件の同定と反応スコープの探索
2: 反応条件
触媒: [Pd(cinnamyl)Cl]2、(TMEDA)NiCl(o-tolyl)
配位子: XPhos、dppf、t-BuXPhosなど
溶媒: i-PrOH、n-BuOH
塩基: DIPEA
3: 評価項目
反応時間、温度、収率への影響を評価
各種置換基の影響を検討
ヘテロ環式化合物の適用性を調査
4: 実験手順
小スケール条件を確立後、400gスケールでの実験を実施
反応条件のモニタリング(pH測定など)
単離、精製方法の最適化
結果
1: ハロゲン化アリールの反応性
電子求引性、電子供与性置換基に対して高い反応性
立体障害が大きい基質にも適用可能
アルコール、アミン、カルボン酸の官能基が許容される
2: ヘテロ環化合物への適用
ピリジン、キノリン、インドール、チオフェンなどが良好な収率で変換された
Ni触媒でも単純なベンゾニトリル合成に有効
3: 大規模反応結果
400gスケールで97%収率で目的物を単離
反応液からの析出結晶化が可能で、高純度品が得られた
考察
1: 均一系の利点
不均一粒子の影響が排除され、再現性が向上
スケールアップが容易になり、基質溶解性の影響が軽減
2: 反応機構
アセトンシアノヒドリンを触媒回転率よりも遅い速度で反応混合物にゆっくりと加えることが重要
pHモニタリングから反応初期の添加速度制御が鍵
3: 既存研究との比較
Beller法に比べ、より汎用的で高収率
溶媒選択で単離工程が簡便化された
還元剤を使用した Ni(0) の事前生成の必要がない
配位子のスクリーニングが簡単に実行可能
低コスト
4: 適用範囲
広範なアリール基質に有効
5: 限界点と将来の展望
一部の塩化アリールや電子豊富なアリール化合物では低収率
配位子および反応条件のさらなる最適化が望まれる
結論
ハロゲン化アリールのベンゾニトリルへの変換に対して、広範囲に適用可能な均一系パラジウムおよびニッケル触媒系を開発
均一系反応では再現性が向上し、スケールアップが容易になった
アルコール溶媒の使用により単離工程が簡略化された
今後の展望
さらなる条件検討による適用範囲の拡大
医薬品や材料製造分野などのベンゾニトリルの需要が高い産業におけるプロセス設計
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