2024年5月25日土曜日

Catch Key Points of a Paper ~0038~

論文のタイトル: From Criegee to Breslow: How π-Donors Steer the Route of Olefin Ozonolysis

著者: Serhii Medvedko, J. Philipp Wagner 

雑誌: Chemistry - A European Journal

出版年: 2024


背景

1: オレフィンのオゾン付加反応

通常は1,3-双極子環化付加反応が進行し、Criegee中間体が生成

しかし、一部のオレフィンでは部分的オゾン化が起こる

反応経路の違いは、置換基の電子供与性に起因すると考えられている


2: 研究の課題  

π電子供与性置換基を持つオレフィンの反応性は不明

強い電子供与性でCriegee中間体以外の生成物が得られるか?


3: 研究の目的

異なるπ電子供与性置換基を持つモデル化合物の反応を調査

電荷移動の影響と生成物の変化を理論計算から解析


方法

1: 計算手法 

密度汎関数理論(DFT)を用いた反応経路計算

B3LYP-D3/def2-TZVPP レベルで最適化と振動解析

溶媒効果は連続体モデル(CPCM)で考慮


2: モデル化合物

5員環オレフィンに種々のヘテロ原子(C, N, S)を導入

電子供与能の異なる一連のモデル化合物を設定


3: 解析項目

反応熱と活性化自由エネルギー 

遷移状態の非同期性

固有反応座標(IRC)解析による生成物予測


結果

1: 反応熱と生成物選択性

強いπ電子供与基を持つ場合、酸素原子移動生成物が安定化

極性溶媒中ではさらに酸素原子移動が有利に


2: 遷移状態構造

π電子供与基が強いほど遷移状態の非同期性が増大

酸素原子受入れ構造の寄与が大きくなる


3: 反応経路

π電子供与性の低いオレフィンはCriegee機構で進行

強い電子供与性では酸素原子移動経路に遷移


考察

1: 新規反応経路の意義 

Breslow中間体の新たな合成経路

従来のCriegee機構とは異なる選択性


2: 先行研究との整合性

部分的オゾン化の実験例と一致

電荷移動錯体の関与が示唆される  


3: 理論計算の限界

オゾンやシングレット酸素の記述が不十分

動力学計算による実験値との比較が必要


4: 今後の展望

ドナー置換オレフィンのオゾン化実験

Breslow中間体の実証と新規反応開発


結論

π電子供与性置換基がオレフィンに酸素原子移動経路を付与

電荷移動の程度で反応選択性が変化することを理論的に明らかに


将来の展望

有機合成での新たなアプローチとなりうる反応経路の提案

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