論文のタイトル: From Criegee to Breslow: How π-Donors Steer the Route of Olefin Ozonolysis
著者: Serhii Medvedko, J. Philipp Wagner
雑誌: Chemistry - A European Journal
出版年: 2024
背景
1: オレフィンのオゾン付加反応
通常は1,3-双極子環化付加反応が進行し、Criegee中間体が生成
しかし、一部のオレフィンでは部分的オゾン化が起こる
反応経路の違いは、置換基の電子供与性に起因すると考えられている
2: 研究の課題
π電子供与性置換基を持つオレフィンの反応性は不明
強い電子供与性でCriegee中間体以外の生成物が得られるか?
3: 研究の目的
異なるπ電子供与性置換基を持つモデル化合物の反応を調査
電荷移動の影響と生成物の変化を理論計算から解析
方法
1: 計算手法
密度汎関数理論(DFT)を用いた反応経路計算
B3LYP-D3/def2-TZVPP レベルで最適化と振動解析
溶媒効果は連続体モデル(CPCM)で考慮
2: モデル化合物
5員環オレフィンに種々のヘテロ原子(C, N, S)を導入
電子供与能の異なる一連のモデル化合物を設定
3: 解析項目
反応熱と活性化自由エネルギー
遷移状態の非同期性
固有反応座標(IRC)解析による生成物予測
結果
1: 反応熱と生成物選択性
強いπ電子供与基を持つ場合、酸素原子移動生成物が安定化
極性溶媒中ではさらに酸素原子移動が有利に
2: 遷移状態構造
π電子供与基が強いほど遷移状態の非同期性が増大
酸素原子受入れ構造の寄与が大きくなる
3: 反応経路
π電子供与性の低いオレフィンはCriegee機構で進行
強い電子供与性では酸素原子移動経路に遷移
考察
1: 新規反応経路の意義
Breslow中間体の新たな合成経路
従来のCriegee機構とは異なる選択性
2: 先行研究との整合性
部分的オゾン化の実験例と一致
電荷移動錯体の関与が示唆される
3: 理論計算の限界
オゾンやシングレット酸素の記述が不十分
動力学計算による実験値との比較が必要
4: 今後の展望
ドナー置換オレフィンのオゾン化実験
Breslow中間体の実証と新規反応開発
結論
π電子供与性置換基がオレフィンに酸素原子移動経路を付与
電荷移動の程度で反応選択性が変化することを理論的に明らかに
将来の展望
有機合成での新たなアプローチとなりうる反応経路の提案
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