2024年11月1日金曜日

Catch Key Points of a Paper ~0172~

論文のタイトル: Long-Term Energy Storage Systems Based on the Dihydroazulene/Vinylheptafulvene Photo-/Thermoswitch

著者: Christina Schøttler, Siri Krogh Vegge, Martina Cacciarini, Mogens Brøndsted Nielsen

雑誌: ChemPhotoChem

巻: Volume6, Issue8, e202200037

出版年: 2022年


背景

1: 研究の背景

分子フォトスイッチは分子太陽熱エネルギー貯蔵(MOST)システムとして注目

MOSTシステムは光異性化により高エネルギー準安定異性体を生成

熱的に元の異性体に戻る際にエネルギーを放出

理想的なシステムには多くの要件が必要


2: 未解決の課題

太陽光スペクトルでの吸収

2つの異性体の吸収スペクトルの重複が小さい

光異性化の量子収率が高い  

準安定異性体の寿命が長い

異性体間のエネルギー差が大きい


3: 研究目的

ジヒドロアズレン(DHA)フォトスイッチの新規誘導体の合成

C2位にアルキンおよびノルボルナジエン(NBD)置換基を導入

対応するビニルヘプタフルベン(VHF)異性体の寿命延長を目指す


方法

1: 合成戦略

DHA 3aの4段階合成

既知の化合物5から出発

Knoevenagel縮合、トロピリウム塩との反応、酸化を経てVHF 3bを合成

VHF 3bの環化によりDHA 3aを得る


2: NBD-DHA 4aの合成

NBDコアを先に構築し、その後DHAを形成

化合物6とシクロペンタジエンのDiels-Alder反応でNBD 8aを合成

化合物8aからDHA-NBDジアッド4aを3段階で合成


3: 光学特性と異性化特性の評価

UV-Vis分光法による吸収スペクトル測定

LED光源を用いた光異性化実験

熱戻り反応の温度依存性測定

光異性化量子収率の測定


4: データ解析

アレニウスプロットによる半減期の推定

NMRスペクトル解析による構造確認

高分解能質量分析による分子量確認


結果

1: DHA 3aの特性

吸収極大: 363 nm (MeCN中)

VHF 3bの吸収極大: 514 nm 

DHA-VHF間の吸収極大の差: 151 nm

光異性化量子収率: 40%

VHF 3bの半減期(25°C): 22日


2: DHA-NBD 4aの特性

吸収極大: 387 nm (トルエン中)

VHF 4bの吸収極大: 466 nm

光異性化量子収率: 5%

VHF 4bの半減期(25°C): 5日

NBDの光活性は失われた


3: NBD 8aの特性

吸収極大: 368 nm (トルエン中)

QC 8bの吸収極大: 329 nm

QC 8bの半減期(25°C): 2.85時間

C(Me)=C(CN)2置換基のCreary置換基定数: 約2.1


考察

1: アルキン置換基の効果

VHF 3bの寿命が大幅に延長 (1bと比較して130倍以上)

DHA-VHF間の吸収極大の差が増大

分子量の小さな変更で顕著なMOST特性の向上


2: NBD置換基の影響

VHF 4bの寿命も延長 (1bと比較)

DHA部分の光活性は維持されたがNBD部分は失活

ジアッドシステムにおける光スイッチの相互作用を示唆


3: 構造と特性の関係

C2位置換基の混成状態がVHF安定性に影響

アルキン架橋によるヘプタフルベンとフェニル環の共平面性が寿命延長に寄与か

NBD-DHAジアッドの直接結合はNBDの光活性を阻害


4: C(Me)=C(CN)2置換基の効果

強力なラジカル安定化基として機能

QC-NBD逆反応の速度に大きな影響

経験的な関係式からCreary置換基定数を推定


結論

C2位にアルキンおよびNBD置換基を持つ新規DHA誘導体の合成に成功

VHF異性体の寿命が大幅に延長 (最長22日)

DHA-VHF間の吸収スペクトル分離が改善

分子量の小さな変更で顕著なMOST特性の向上を実現


将来の展望

フェニルエチニル置換基のさらなる機能化によるMOST要件の改善が期待される

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