論文のタイトル: The role of the stabilizing/leaving group in palladium catalysed cross-coupling reactions(パラジウム触媒クロスカップリング反応における安定化/脱離基の役割)
著者: Lorenzo Palio, Francis Bru, Tommaso Ruggiero, Laurens Bourda, Kristof Van Hecke, Catherine Cazin, Steven P. Nolan
雑誌名: Dalton Transactions
巻: 2024
号: d4dt02533d
出版年: 2024
DOI: 10.1039/d4dt02533d
背景
1: 研究の背景
パラジウムN-ヘテロ環カルベン(NHC)錯体は、過去数十年にわたって均一系触媒として広く研究されている
特にクロスカップリング反応において均一系触媒への応用で重要な役割を果たす
NHC錯体は空気および湿気に安定であり、金属-配位子の化学量論を厳密に制御できる
2: 未解決の問題点
Pd-NHC系において、「使い捨て」配位子の役割は十分に研究されていない
これらの配位子は、安定な酸化状態を維持する配位部位を占めることにより、触媒の安定性と活性に重要な影響を与える
これらの配位子は、Pd(II)からPd(0)活性種への活性化プロセス中に錯体から切り離される
3: 研究の目的
新しい置換基を持つ[Pd(NHC)(η3-R-allyl)Cl]錯体を合成し、C–N結合形成におけるその触媒活性を評価
不活性な二量体形成につながる触媒の分解経路を抑制し、より高い触媒活性を持つシステムを開発
より嵩高いアリル置換基を持つ4つの新しい二量体を設計および合成
方法
1: 研究デザイン
新しい[Pd(NHC)(η3-R-allyl)Cl]錯体の合成
触媒活性の評価: Buchwald–Hartwigアミノ化反応をモデルとして使用
2: 最適化条件
反応物の選定: 新しい置換基を持つアリルクロリド
反応条件: 室温、無水DME中での反応
3: 評価項目と測定方法
主要評価項目: 触媒活性、生成物の収率
測定方法: NMRスペクトロスコピー、GC-MS分析
触媒活性の比較: 各触媒の反応速度と収率を比較
結果
1: 主要な結果
新しい[Pd(NHC)(η3-R-allyl)Cl]錯体の合成に成功
これらの錯体は空気および湿気に安定で、長期間保存可能
2: 触媒活性の向上
Buchwald–Hartwigアミノ化反応において、触媒の分解経路を抑制することで、高い触媒活性を示す
特に、アリル構造上にメシチル基およびナフチル基を持つ錯体が非置換シンナミル構造の錯体と比較して高い活性を示した
IPr*配位子を持つ錯体は、Pd(I)二量体の形成を完全に抑制
2,6-ジ-オルト-置換出発物質を用いた嵩高い二級および三級アミンの調製に特に活性
3: 触媒活性の低下
p-トル、特にp-tBu-フェニル基による置換は、触媒活性の低下をもたらした
この反応性の違いは、NHCがIPr*の場合に特に顕著
考察
1: 主要な発見
新しい置換基を持つ[Pd(NHC)(η3-R-allyl)Cl]錯体は、高い触媒活性を示す
特に、メシチル基およびナフチル基の導入が触媒活性を向上させる
IPr*配位子を持つ錯体は、Pd(I)二量体の形成を抑制し、触媒の安定性を向上
触媒の分解経路を抑制することで、反応効率が向上
2: 錯体の安定性と反応性
より高い反応性は錯体の安定性によるものであり、これは[Pd(NHC)(η3-R-アリル)Cl]錯体を触媒的に不活性なPd(I)二量体に変換することによって調査
IPr含有系列では、この変換は、試験した特定の反応条件下で明確に発生
IPr*類似体に関しては、この方法での反応性の完全な抑制を観察
この立体的により要求の厳しい系列では、Pd(I)二量体形成は完全に阻害
3: 先行研究との比較
既存の触媒システムと比較して、新しい錯体は高い触媒活性を示す
特に、Buchwald–Hartwigアミノ化反応において優れた性能を発揮
新しい錯体は、より穏やかな反応条件下で高い活性を示す
触媒の安定性と活性の両方を向上させる新しい設計手法として有望
4: 研究の限界
一部の置換基では触媒活性が低下する
反応条件のさらなる最適化が必要
結論
新しい置換基を持つ[Pd(NHC)(η3-R-allyl)Cl]錯体は、高い触媒活性と安定性を示す
アリルおよびNHC部分の両方を修飾した一連の実験から、非常に活性がありながらも安定な触媒前駆体を標的とするには、錯体のNHC半球に立体保護が必要であると同時に、アリルに高度な置換が必要である
アリルに高度な置換が必要な理由は2つ
(1)高度に置換されているため、Pd-アリル結合を不安定化
(2)遊離したアリルが、不均化反応において架橋配位子として作用し、Pd(I)二量体構造を安定化する役割を阻害
将来の展望
他の置換基や反応条件の最適化
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