2024年11月16日土曜日

Catch Key Points of a Paper ~0188~

論文のタイトル: Chromatography-Free and Chlorinated Solvent-Free Preparation of 2,5-dibromohexanediamide (DBHDA)(クロマトグラフィーフリーで塩素系溶媒を使用しない2,5-ジブロモヘキサンジアミド(DBHDA)の調製)

著者: Ben Bower、Sébastien R. G. Galan、Benjamin G. Davis

雑誌名: Organic Syntheses

巻: Volume101, 207-228

出版年: 2024

DOI: https://doi.org/10.15227/orgsyn.101.0207


背景

1: タンパク質の化学修飾におけるDBHDAの重要性

2,5-ジブロモヘキサンジアミド(DBHDA)は、タンパク質中のシステイン残基を選択的にデヒドロアラニン(Dha)に変換するのに有用な試薬

Dha残基をタンパク質に導入することで、タンパク質上にβ,γ C-C、C-S、C-N、C-Se結合を形成するさらなる反応が可能

これにより部位選択的な方法でタンパク質の側鎖を操作するための直接的な方法を提供

DBHDAは市販されているが、比較的高価


2: 既存のDBHDA合成法の問題点

DBHDAは、Perkinらによって最初に合成された

Chalkerらは、Perkinらの合成法を改良し、アジピン酸からDBHDAを合成する手法を報告

しかし、この臭素化には、オゾン層破壊物質である四塩化炭素が使用されていた


3: 研究の目的(環境に優しいDBHDA合成法の開発)

本研究では、四塩化炭素の代わりにシクロヘキサンを用いた、環境に優しいDBHDA合成法を開発する

シクロヘキサンは、四塩化炭素と沸点が近く、NBSとスクシンイミドは不溶性であるのに対し、酸とビス(酸塩化物)は可溶性であるため、適切な代替物質として選択された

さらに、シクロヘキサンは分子状臭素に対して比較的(十分に)不活性

これらの特性により、クロマトグラフィー分離を必要とせずに高純度の材料を得ることが可能


方法

1: アジポイルジクロリドの合成

アジピン酸を塩化チオニルと反応させてアジポイルジクロリドを合成

反応の進行はTLCでモニター


2: 2,5-ジブロモアジポイルジクロリドの合成

アジポイルジクロリドをシクロヘキサン中でNBSと臭化水素酸触媒を用いて臭素化し、2,5-ジブロモアジポイルジクロリドを合成

反応の進行はTLCでモニター


3: DBHDAの合成

2,5-ジブロモアジポイルジクロリドを水酸化アンモニウム水溶液と反応させてDBHDAを合成

粗生成物を50%メタノール水溶液で2回トリチュレーションして精製


4: 生成物の特性評価

融点、Rf値、1H NMR、13C NMR、IR、HRMSを用いて生成物を特性評価


結果

1: 高純度DBHDAの収率

本手法により、28%の収率で微結晶性のオフホワイト粉末としてDBHDAが得られた

チェッカーによって行われた半規模合成では、29%の収率でDBHDAが得られた

定量的13C NMR分光法と定量的1H NMR分光法により、生成物の純度は98%以上であることが確認された


考察

1: 研究の意義

本研究で開発された合成法は、オゾン層破壊物質である四塩化炭素を使用しない、環境に優しいDBHDA合成法

本手法は、高純度のDBHDAを良好な収率で得ることができ、クロマトグラフィー分離を必要としない

本研究の成果は、タンパク質の化学修飾の分野に大きく貢献する


2: 先行研究との比較

Perkinらの合成法と比較して、本手法は四塩化炭素を使用せず、クロマトグラフィー分離を必要としないため、より環境に優しく、効率的

Chalkerらの合成法と比較して、本手法は四塩化炭素の代わりにシクロヘキサンを使用しているため、オゾン層破壊への影響が少ない


3: 研究の限界

本手法では、収率が約30%と中程度であることが限界

収率向上のため、反応条件のさらなる最適化が必要


結論

環境に優しいDBHDA合成法の確立

クロマトグラフィーフリーで塩素系溶媒を使用しない、環境に優しいDBHDA合成法を開発

高純度のDBHDAを良好な収率で得ることができる


将来の展望

タンパク質の化学修飾の分野において幅広く応用されることが期待される

DBHDAの収率を向上させるための反応条件の最適化

本手法を用いて合成したDBHDAを用いたタンパク質の化学修飾の研究 

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