2024年11月2日土曜日

Catch Key Points of a Paper ~0173~

論文のタイトル: Clicking together Alkynes and Tetracyanoethylene

著者: Prof. Dr. Mogens Brøndsted Nielsen

雑誌: ChemPhysChem  

巻: Volume24, Issue15, e202300236

出版年: 2023年


背景

1: 研究の背景(環化付加–逆電子環化反応の概要)

環化付加–逆電子環化反応(CA-RE反応):アルキンとテトラシアノエチレン(TCNE)の反応

電子豊富なアルキンと電子不足オレフィンの[2+2]環化付加

生成物:置換1,1,4,4-テトラシアノブタ-1,3-ジエン(TCBD)

副生成物なし、原子効率の良い反応


2: CA-RE反応の特徴

"クリック様"反応:一部のアルキンで定量的収率

電子供与基の強さが収率に大きく影響

最近の進展:界面活性剤存在下で水中でも反応可能

生成物:レドックス活性なドナー-アクセプタークロモフォア


3: 研究の目的

CA-RE反応のメカニズム解明

単純な二次反応速度論や一次反応速度論に従わない理由の探索

反応促進要因の特定

自己触媒作用の可能性の検討


方法

1: 反応の追跡方法

1H -NMR分光法を使用

溶媒:C6D6、温度:300 K

基質、中間体、生成物のアリールプロトンをプローブとして使用

反応時間:約15時間


2: データ解析

カスタムメイドの反応速度論プログラムを使用

4つの異なるモデルを実験データにフィッティング

基質濃度を変えて得られたすべてのデータを同時にフィッティング

速度定数(k)を繰り返しスキャンし、最小偏差を探索


3: 反応メカニズムモデル

モデル1:一段階環化付加

モデル2:段階的環化付加

モデル3:一段階環化付加(自己触媒作用含む)

モデル4:段階的環化付加(自己触媒作用含む)


結果

1: 単純モデルの限界

モデル1と2:単一実験データには適合

異なる基質濃度の実験データ全体には不適合

予想以上に複雑なメカニズムの示唆


2: 自己触媒作用の発見

生成物Pを初期から添加すると反応が加速

モデル3と4:自己触媒作用を組み込んだ新メカニズム

特にモデル4が実験データに excellent fit


3: 速度定数の比較

k4/k2 = 62(モデル4):ABP複合体からの中間体形成が速い

k6/k5 = 0.05:C中間体からのzwitterion中間体形成が速い

k6/k4 = 4 × 10-5:最終RE段階が最も遅い


考察

1: 自己触媒作用のメカニズム

基質と生成物間のドナー-アクセプター錯体形成の可能性

錯体形成により基質の配向が最適化

アルキンからTCNEへの求核攻撃が促進


2: RE段階の特性

溶媒極性への依存性が小さい

協奏的メカニズムの支持

酢酸中でわずかに反応速度低下:アニリンのプロトン化が不利


3: CA-RE反応の応用

レドックス活性なドナー-アクセプタークロモフォアの合成

電子デバイスや光電子デバイスへの潜在的応用

フタロシアニンやサブフタロシアニンとの反応も可能


4: 研究の限界点

アニリン基質での検討に限定

自己触媒作用の詳細なメカニズムは未解明

計算化学による更なる解析が必要


結論

CA-RE反応:複雑なメカニズムを持つ"クリック様"反応

自己触媒作用の発見:反応促進の新たな要因

ドナー-アクセプター錯体形成による反応促進の可能性


将来の展望

今後の課題:計算化学による自己触媒作用の解明

新規機能性材料開発への応用が期待される

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