論文のタイトル: Clicking together Alkynes and Tetracyanoethylene
著者: Prof. Dr. Mogens Brøndsted Nielsen
雑誌: ChemPhysChem
巻: Volume24, Issue15, e202300236
出版年: 2023年
背景
1: 研究の背景(環化付加–逆電子環化反応の概要)
環化付加–逆電子環化反応(CA-RE反応):アルキンとテトラシアノエチレン(TCNE)の反応
電子豊富なアルキンと電子不足オレフィンの[2+2]環化付加
生成物:置換1,1,4,4-テトラシアノブタ-1,3-ジエン(TCBD)
副生成物なし、原子効率の良い反応
2: CA-RE反応の特徴
"クリック様"反応:一部のアルキンで定量的収率
電子供与基の強さが収率に大きく影響
最近の進展:界面活性剤存在下で水中でも反応可能
生成物:レドックス活性なドナー-アクセプタークロモフォア
3: 研究の目的
CA-RE反応のメカニズム解明
単純な二次反応速度論や一次反応速度論に従わない理由の探索
反応促進要因の特定
自己触媒作用の可能性の検討
方法
1: 反応の追跡方法
1H -NMR分光法を使用
溶媒:C6D6、温度:300 K
基質、中間体、生成物のアリールプロトンをプローブとして使用
反応時間:約15時間
2: データ解析
カスタムメイドの反応速度論プログラムを使用
4つの異なるモデルを実験データにフィッティング
基質濃度を変えて得られたすべてのデータを同時にフィッティング
速度定数(k)を繰り返しスキャンし、最小偏差を探索
3: 反応メカニズムモデル
モデル1:一段階環化付加
モデル2:段階的環化付加
モデル3:一段階環化付加(自己触媒作用含む)
モデル4:段階的環化付加(自己触媒作用含む)
結果
1: 単純モデルの限界
モデル1と2:単一実験データには適合
異なる基質濃度の実験データ全体には不適合
予想以上に複雑なメカニズムの示唆
2: 自己触媒作用の発見
生成物Pを初期から添加すると反応が加速
モデル3と4:自己触媒作用を組み込んだ新メカニズム
特にモデル4が実験データに excellent fit
3: 速度定数の比較
k4/k2 = 62(モデル4):ABP複合体からの中間体形成が速い
k6/k5 = 0.05:C中間体からのzwitterion中間体形成が速い
k6/k4 = 4 × 10-5:最終RE段階が最も遅い
考察
1: 自己触媒作用のメカニズム
基質と生成物間のドナー-アクセプター錯体形成の可能性
錯体形成により基質の配向が最適化
アルキンからTCNEへの求核攻撃が促進
2: RE段階の特性
溶媒極性への依存性が小さい
協奏的メカニズムの支持
酢酸中でわずかに反応速度低下:アニリンのプロトン化が不利
3: CA-RE反応の応用
レドックス活性なドナー-アクセプタークロモフォアの合成
電子デバイスや光電子デバイスへの潜在的応用
フタロシアニンやサブフタロシアニンとの反応も可能
4: 研究の限界点
アニリン基質での検討に限定
自己触媒作用の詳細なメカニズムは未解明
計算化学による更なる解析が必要
結論
CA-RE反応:複雑なメカニズムを持つ"クリック様"反応
自己触媒作用の発見:反応促進の新たな要因
ドナー-アクセプター錯体形成による反応促進の可能性
将来の展望
今後の課題:計算化学による自己触媒作用の解明
新規機能性材料開発への応用が期待される
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