2024年11月14日木曜日

Catch Key Points of a Paper ~0186~

論文のタイトル: An environmentally friendly method for the synthesis of 1,2,3,4-tetrahydropyridines and hexahydroimidazo[1,2-a]pyridines in water promoted by potassium, sodium and ammonium chlorides(環境に優しい方法による1,2,3,4-テトラヒドロピリジンおよびヘキサヒドロイミダゾ[1,2-a]ピリジンの水中合成)

著者: Natalya N. Gibadullina, Aigul R. Mukhamedyarova, Aleksandr N. Lobov, Yuri S. Zimin, Vladimir A. Dokichev

雑誌名: Tetrahedron Letters

巻: Volume152, 155348

出版年: 2024

DOI: https://doi.org/10.1016/j.tetlet.2024.155348


背景

1: 研究の背景

窒素含有複素環化合物は多くの医薬品や天然物に含まれる

1,2,3,4-テトラヒドロピリジンおよびヘキサヒドロイミダゾ[1,2-a]ピリジンは多様な生物活性を示す

これらの化合物は抗酸化、抗菌、抗結核、抗マラリア、鎮痛、抗炎症、抗癌などの活性を持つ

多くの天然物質や他のクラスの複素環化合物を合成するための重要な構成要素


2: 未解決の問題点

テトラヒドロピリジンおよびヘキサヒドロイミダゾ[1,2-a]ピリジン誘導体の合成への主な効果的なアプローチは、マンニッヒ反応、クネーフェナーゲル反応、マイケル反応、ディールス・アルダー反応などの多成分反応に基づく

これらの複素環のワンポット多成分標的合成では、中間生成物の単離および蓄積が不要

既存の合成方法は有機溶媒や毒性の高い触媒を使用することが多い

環境に優しい合成方法の開発が求められている


3: 研究の目的

水中での1,2,3,4-テトラヒドロピリジンおよびヘキサヒドロイミダゾ[1,2-a]ピリジンの効率的な合成方法を開発

期待される成果として、環境に優しい条件下での高収率合成を目指す


方法

1: 研究デザイン

水系電解質溶液中での一段階の三成分反応を使用

反応物: エチル3-オキソブタノエート、ホルムアルデヒド、一次アミン

触媒: 塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム


2: 最適化条件

反応物: エチル3-オキソブタノエート、ホルムアルデヒド、第一級アミン(例: プロピルアミン、ブチルアミン、モノエタノールアミンなど)

当量: 酢酸エステル-ホルムアルデヒド-アミンのモル比をそれぞれ2:2:1

反応条件: 室温、水中、電解質(NaCl、KCl、NH4Cl)の存在下24時間反応。


3: 評価項目と測定方法

主要評価項目: 生成物の収率と純度

測定方法: NMRスペクトロスコピー、GC-MS分析

収率の比較: 各反応条件下での収率を比較


結果

1: 主要な結果

プロピルアミンを使用した場合、1,2,3,4-テトラヒドロピリジンの収率は75%に達した

塩化ナトリウムまたは塩化カリウムの存在下で収率が向上、電解質がない場合、収率は40%を超えない

3-オキソブタン酸エチル‐プロピルアミン‐ホルムアルデヒド-NaCl(KCl)の縮合に関して、最適なモル比は2:2:1:2


2: テトラヒドロピリジンの収率に対する反応物の影響

モノエタノールアミンを使用した場合、収率は65%

ベンジルアミンやN,N-ジメチル-1,3-ジアミノプロパンを使用した場合、収率はそれぞれ55%および42%

1,2-ジアミノエタンを使用した場合、ヘキサヒドロイミダゾ[1,2-a]ピリジンの収率は41%、生成物は単環式化合物とは別に、二環式複素環も生成し、二つの異性体の混合物として得られた

tert-ブチルアミンおよび2-アミノ-4-メチルフェノールを使用した場合、1,2,3,4-テトラヒドロピリジンの形成は観察されない


考察

1: 主要な発見

塩化ナトリウムや塩化カリウムの存在が反応収率に与える影響

水中での反応が環境に優しい合成方法として有望

一次アミンの構造が生成物の収率と選択性に与える影響

特定のアミンを使用することで高収率で目的化合物が得られる


2: 電解質の影響

水性媒体中での1,2,3,4-テトラヒドロピリジンの形成に対する電解質(NaCl、KCl)の影響は、水の構造の変化、塩析、および電解質イオンとアセト酢酸エステル、ホルムアルデヒド、およびそれらの反応生成物との継続的な相互作用の両方に起因する可能性が最も高い

選択的な中間体ジエチル-2,4-ジアセチルペンタンジオネートの形成は、おそらくNa+カチオンの作用下でのホルムアルデヒドと第一級アミンとの逆縮合反応の平衡が、イミニウムカチオンではなくホルムアルデヒドに向かってシフトすることに起因


3: 先行研究との比較

既存の有機溶媒を使用した方法と比較して、環境負荷が低い

水中での反応が高い原子効率を示す

他の触媒を使用した方法と比較して、毒性が低い

簡便で効率的な合成方法としての優位性


4: 研究の限界

一部のアミンでは収率が低い

反応条件のさらなる最適化が必要


結論

環境に優しい条件下での1,2,3,4-テトラヒドロピリジンおよびヘキサヒドロイミダゾ[1,2-a]ピリジンの効率的な合成方法を確立

単環式および二環式1,2,3,4-テトラヒドロピリジンへの環境に安全な三成分ワンポット合成経路を実装

水性媒体中で、入手容易な第一級アミン、ホルムアルデヒド、およびアセト酢酸エステルを塩化ナトリウムまたは塩化カリウムの存在下で縮合することにより、構造的に多様な生成物が良好な収率で得られた

原子経済性に優れており、副生成物として3つの水分子のみを生成し、水性媒体中で進行し、有機溶媒を必要としない


将来の展望

他のアミンや反応条件の最適化

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