論文のタイトル: Crystallographic and spectroscopic studies on persistent triarylpropargyl cations
著者: Takuya Shimajiri, Taiga Tsue, Shumpei Koakutsu, Yusuke Ishigaki, Takanori Suzuki
出版: Chemical Communications
巻: 60, 7152-7155
出版年: 2024
背景
1: 研究背景
カルボカチオンは有機化学における重要な化学種
非共役カルボカチオンは高反応性
トリアリールメチルカチオンは比較的安定
平面性の高いトリアリールメチルカチオンは魅力的な特性を持つ
2: 未解決の問題
トリアリールプロパルギルカチオンの報告は少ない
電子吸引性の-CRC-基により不安定
X線結晶構造解析に適した安定性を持つ例がない
3: 研究目的
電子的安定化と立体保護を施したトリアリールプロパルギルカチオンの設計
X線結晶構造解析による詳細な構造決定
電子状態と分子間相互作用の解明
方法
1: 分子設計と合成
メシチルエチニル基置換ジアリールメチルカチオンの設計
プロパルギルアルコール前駆体の合成
酸処理によるカチオンの生成
2: 構造解析
X線結晶構造解析による分子構造の決定
UV/Visスペクトル測定による電子状態の評価
IRスペクトル測定によるCRC伸縮振動の観察
3: 理論計算
DFT計算によるHOMO-LUMO分布の予測
自然電荷解析による電荷分布の評価
結合長変化の予測と実験値との比較
結果
1: 分子構造
X線構造解析により平面構造を確認
化合物1+TfO-: y1 = 31°, y2 = 38°
化合物2+TfO-: 完全平面構造 (y1 = y2 = 0°)
2: 電子状態
UV/Visスペクトル: λmax = 543-547 nm
50-100 nm の赤方シフトを観測
IRスペクトル: CRC伸縮振動 2115-2131 cm-1
3: 結晶構造
化合物2+TfO-: 電荷分離型集合体を形成
化合物2+BF4-: 最短C…C接触 3.40 Å
化合物2+NTf2-: 二種類の多形を観測
考察
1: 分子構造の特徴
-CRC-基の挿入により平面性が向上
立体保護により C3 位置が安定化
結合交替の減少を確認
2: 電子状態の考察
π共役の効率化により赤方シフトが発生
CRC伸縮振動の低波数シフトは非局在化を示唆
HOMO-LUMO分布の広がりを確認
3: 結晶構造の特徴
対イオンの選択により集合様式を制御可能
π-π相互作用と分散力が集合体形成に寄与
電荷分離型集合体の形成メカニズムを提案
4: 研究の限界
水の添加により分解が起こる
長期保存は固体状態で可能だが、溶液中での安定性に制限あり
対イオンの種類による物性変化の詳細なメカニズム解明が必要
結論
初のX線構造解析によるトリアリールプロパルギルカチオンの構造決定
電荷分離型集合体の新規結晶モチーフを発見
将来の展望
新しい色素や電子材料のプラットフォームとしての可能性
対イオン選択による固体物性制御の可能性を示唆
0 件のコメント:
コメントを投稿