2024年9月21日土曜日

Catch Key Points of a Paper ~0134~

論文のタイトル: Synthesis and Characterization of an Eight-Membered Heterocyclic 1,3,5,7-Tetra(3-pyridyl)-1,3,5,7-tetrazacyclooctane(8員環複素環1,3,5,7-テトラ(3-ピリジル)-1,3,5,7-テトラザシクロオクタンの合成と特性評価)

著者: Li Li, Guo-Liang Dai, Xue Hua Zhu, Lei Yu, Hai Yan Li

出版: SynOpen  

巻: 7, 486–490

出版年: 2023


背景

1: 研究背景

シクロオクタンとその誘導体は数十年にわたり研究されてきた

8員環化合物は多様な立体配座を示す(ボートチェア、クラウン、ボートボートなど)

メチレン基をO、S、N原子で置換した8員環の研究は比較的少ない

既知の8員環複素環化合物には、1,5-ジアザシクロオクタン、1,5-ジチアシクロオクタンなどがある


2: 研究の重要性

8員環複素環化合物は大環状配位子として利用される

近年、O/N交互型やS/N交互型の8員環複素環化合物が報告されている

4つのN原子を含む8員環複素環化合物の報告は少ない

既知例には高エネルギー物質1,3,5,7-テトラニトロ-1,3,5,7-テトラザシクロオクタンがある


3: 研究目的

N,N'-ビス(3-ピリジル)メタンジアミンの合成と特性評価

1,3,5,7-テトラ(3-ピリジル)-1,3,5,7-テトラザシクロオクタンの合成

得られた化合物の結晶構造解析

理論計算による安定構造の確認


方法

1: 合成方法

N,N'-ビス(3-ピリジル)メタンジアミン(1)の合成:

  - 3-アミノピリジンとホルムアルデヒドをアセトニトリル中で反応

  - 80℃で16時間加熱還流

1,3,5,7-テトラ(3-ピリジル)-1,3,5,7-テトラザシクロオクタン(2)の合成:

  - 3-アミノピリジン、ホルムアルデヒド、アセトニトリルを密封容器中で反応

  - 90℃で10時間加熱


2: 構造解析手法

単結晶X線回折法による結晶構造解析

FT-IR分光法による構造確認

1H NMRおよび13C{1H} NMRスペクトル測定

質量分析による分子量確認

粉末X線回折による相純度の確認


3: 理論計算

DFT計算によるエネルギー的に安定な構造の探索

B3LYP/6-311++G**レベルでの構造最適化

振動解析による安定構造の確認

実験値との比較による理論レベルの妥当性確認


結果

1: 化合物1の構造

単結晶X線回折により単斜晶系P21/n空間群と決定

非対称単位中に2分子のN,N'-ビス(3-ピリジル)メタンジアミンを含む

Z型の形状で、2つのピリジン環が逆平行に配置

1H NMRスペクトルで構造を確認(δ = 7.95-4.63 ppm)


2: 化合物2の構造

単結晶X線回折により単斜晶系P21/c空間群と決定

非対称単位中に2分子の半分を含む

4つのピリジン環が空間的に互いに垂直に配置

N4C4複素環はツイストクラウン配座を取る

1H NMRスペクトル(δ = 8.13-4.87 ppm)と13C{1H} NMRスペクトル(δ = 142.30-83.26 ppm)で構造を確認


3: 理論計算結果

3つの安定配座を同定: ツイストクラウン、チェアチェア、ツイストボートボート

ツイストクラウン配座が最も安定

理論計算値と実験値の良好な一致を確認

結合長と結合角の理論値と実験値の比較を提示


考察

1: 合成条件の影響

反応物の比率と温度が8員環複素環化合物の形成に重要

室温以下での反応では1,5-ジオキサ-3,7-ジアザシクロオクタン誘導体が生成

高温条件(90℃)で1,3,5,7-テトラザシクロオクタン誘導体が生成

二段階反応による合成経路の確立


2: 構造的特徴

化合物2のN4C4複素環はツイストクラウン配座を取る

4つの対称独立なねじれ角: 110.70(12)°, -112.73(11)°, -31.72(15)°, -36.28(15)°

既報の1,3,5,7-テトラフェニルテトラゾシン(ツイストチェア配座)とは異なる

ピリジン環の立体障害や反応条件が配座に影響している可能性


3: 理論計算との整合性

DFT計算結果はツイストクラウン配座の安定性を支持

計算された結合長と結合角は実験値とよく一致

理論レベル(B3LYP/6-311++G**)の妥当性を確認

エネルギー的に不利な配座(チェアチェア、ツイストボートボート)も同定


4: 研究の限界点

反応メカニズムの詳細な解明には至っていない

他の置換基を持つ類縁体の合成と比較が行われていない

物性評価(熱安定性、溶解性など)が限定的

実用的な応用に向けた検討が不足している


結論

N,N'-ビス(3-ピリジル)メタンジアミンの新規合成法を確立

1,3,5,7-テトラ(3-ピリジル)-1,3,5,7-テトラザシクロオクタンの合成と構造決定に成功

ツイストクラウン配座の安定性を実験と理論の両面から証明


将来の展望

反応メカニズムの解明

類縁体の合成と物性比較

新規大環状配位子としての応用研究

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