論文のタイトル: Synthesis and Characterization of an Eight-Membered Heterocyclic 1,3,5,7-Tetra(3-pyridyl)-1,3,5,7-tetrazacyclooctane(8員環複素環1,3,5,7-テトラ(3-ピリジル)-1,3,5,7-テトラザシクロオクタンの合成と特性評価)
著者: Li Li, Guo-Liang Dai, Xue Hua Zhu, Lei Yu, Hai Yan Li
出版: SynOpen
巻: 7, 486–490
出版年: 2023
背景
1: 研究背景
シクロオクタンとその誘導体は数十年にわたり研究されてきた
8員環化合物は多様な立体配座を示す(ボートチェア、クラウン、ボートボートなど)
メチレン基をO、S、N原子で置換した8員環の研究は比較的少ない
既知の8員環複素環化合物には、1,5-ジアザシクロオクタン、1,5-ジチアシクロオクタンなどがある
2: 研究の重要性
8員環複素環化合物は大環状配位子として利用される
近年、O/N交互型やS/N交互型の8員環複素環化合物が報告されている
4つのN原子を含む8員環複素環化合物の報告は少ない
既知例には高エネルギー物質1,3,5,7-テトラニトロ-1,3,5,7-テトラザシクロオクタンがある
3: 研究目的
N,N'-ビス(3-ピリジル)メタンジアミンの合成と特性評価
1,3,5,7-テトラ(3-ピリジル)-1,3,5,7-テトラザシクロオクタンの合成
得られた化合物の結晶構造解析
理論計算による安定構造の確認
方法
1: 合成方法
N,N'-ビス(3-ピリジル)メタンジアミン(1)の合成:
- 3-アミノピリジンとホルムアルデヒドをアセトニトリル中で反応
- 80℃で16時間加熱還流
1,3,5,7-テトラ(3-ピリジル)-1,3,5,7-テトラザシクロオクタン(2)の合成:
- 3-アミノピリジン、ホルムアルデヒド、アセトニトリルを密封容器中で反応
- 90℃で10時間加熱
2: 構造解析手法
単結晶X線回折法による結晶構造解析
FT-IR分光法による構造確認
1H NMRおよび13C{1H} NMRスペクトル測定
質量分析による分子量確認
粉末X線回折による相純度の確認
3: 理論計算
DFT計算によるエネルギー的に安定な構造の探索
B3LYP/6-311++G**レベルでの構造最適化
振動解析による安定構造の確認
実験値との比較による理論レベルの妥当性確認
結果
1: 化合物1の構造
単結晶X線回折により単斜晶系P21/n空間群と決定
非対称単位中に2分子のN,N'-ビス(3-ピリジル)メタンジアミンを含む
Z型の形状で、2つのピリジン環が逆平行に配置
1H NMRスペクトルで構造を確認(δ = 7.95-4.63 ppm)
2: 化合物2の構造
単結晶X線回折により単斜晶系P21/c空間群と決定
非対称単位中に2分子の半分を含む
4つのピリジン環が空間的に互いに垂直に配置
N4C4複素環はツイストクラウン配座を取る
1H NMRスペクトル(δ = 8.13-4.87 ppm)と13C{1H} NMRスペクトル(δ = 142.30-83.26 ppm)で構造を確認
3: 理論計算結果
3つの安定配座を同定: ツイストクラウン、チェアチェア、ツイストボートボート
ツイストクラウン配座が最も安定
理論計算値と実験値の良好な一致を確認
結合長と結合角の理論値と実験値の比較を提示
考察
1: 合成条件の影響
反応物の比率と温度が8員環複素環化合物の形成に重要
室温以下での反応では1,5-ジオキサ-3,7-ジアザシクロオクタン誘導体が生成
高温条件(90℃)で1,3,5,7-テトラザシクロオクタン誘導体が生成
二段階反応による合成経路の確立
2: 構造的特徴
化合物2のN4C4複素環はツイストクラウン配座を取る
4つの対称独立なねじれ角: 110.70(12)°, -112.73(11)°, -31.72(15)°, -36.28(15)°
既報の1,3,5,7-テトラフェニルテトラゾシン(ツイストチェア配座)とは異なる
ピリジン環の立体障害や反応条件が配座に影響している可能性
3: 理論計算との整合性
DFT計算結果はツイストクラウン配座の安定性を支持
計算された結合長と結合角は実験値とよく一致
理論レベル(B3LYP/6-311++G**)の妥当性を確認
エネルギー的に不利な配座(チェアチェア、ツイストボートボート)も同定
4: 研究の限界点
反応メカニズムの詳細な解明には至っていない
他の置換基を持つ類縁体の合成と比較が行われていない
物性評価(熱安定性、溶解性など)が限定的
実用的な応用に向けた検討が不足している
結論
N,N'-ビス(3-ピリジル)メタンジアミンの新規合成法を確立
1,3,5,7-テトラ(3-ピリジル)-1,3,5,7-テトラザシクロオクタンの合成と構造決定に成功
ツイストクラウン配座の安定性を実験と理論の両面から証明
将来の展望
反応メカニズムの解明
類縁体の合成と物性比較
新規大環状配位子としての応用研究
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