論文のタイトル: Electron Donor–Acceptor Complex-Enabled Autoinductive Conversion of Acylnitromethanes to Acylnitrile Oxides in a Photochemical Machetti–De Sarlo Reaction: Synthesis of 5-Substituted 3-Acylisoxazoles(電子供与体-受容体錯体を利用した光化学的Machetti-De Sarlo反応:アシルニトロメタンからアシルニトリルオキシドへの自己誘導型変換による5-置換3-アシルイソキサゾールの合成)
著者: Piyaporn Arunkirirote, Pornteera Suwalak, Nattawadee Chaisan, Jumreang Tummatorn, Somsak Ruchirawat, and Charnsak Thongsornkleeb
出版: Organic Letters
出版年: 2024
背景
1: 研究の背景(光化学反応の重要性)
光は有機変換における「痕跡のない」促進剤として注目されている
遷移金属錯体や有機染料が光増感剤として利用されてきた
電荷移動(CT)錯体、特に電子供与体-受容体(EDA)錯体の使用が増加
EDA錯体は独特の赤色シフトを示し、光増感剤として機能する
2: 未解決の課題(Machetti-De Sarlo ”MDS”反応の限界)
MDSの反応は通常熱条件下で行われてきた
これまで光化学的アプローチは実現されていなかった
反応の効率や適用範囲に制限があった
より穏和な条件での反応開発が求められていた
3: 研究目的(光化学的MDS反応の開発)
アシルニトロメタンと末端アルキンから5-置換3-アシルイソキサゾールを合成
新規EDA錯体を光増感剤として利用
反応の適用範囲と効率を向上
反応メカニズムの解明
方法
1: 反応設計
光化学的MDS反応の条件最適化
アシルニトロメタン、触媒量のLiOtBu、HFIPを用いてEDA錯体を形成
390 nmのLED光を照射
ベンゾイルニトロメタン(1a)とフェニルアセチレン(2a)をモデル基質として使用
酸素の排除は不要で、実用的な反応条件を確立
2: アルキン基質の適用範囲
様々な置換基を持つアリールアセチレンを検討
電子供与性、電子吸引性置換基の影響を評価
3: アシルニトロメタン基質の適用範囲
様々な置換基を持つアシルニトロメタンを検討
電子供与性、電子吸引性置換基の影響を評価
ハロゲン置換基の位置による反応性の違いを観察
結果
1: 反応結果
最適条件下で、多くの基質が中程度から良好な収率で目的物を与えた
4-ハロアリールアルキンが特に高い収率を示した(77-80%)
電子供与性基や電子吸引性基を持つ基質も適用可能
反応時間は基質によって5-24時間と幅があった
2: 基質の適用範囲
ヘテロ環を含むアルキンも適用可能
アルキルアセチレンにも適用可能だが、長い反応時間が必要
アルキル置換基を持つアシルニトロメタンも適用可能
3: EDA錯体形成と反応経路
UV-vis吸収スペクトルによりEDA錯体の形成を確認
自己誘導型の反応速度論的挙動を観察
ニトリト陰イオン触媒の生成を提案
ニトリルオキシド中間体を経由する反応機構を提案
考察
1: 光化学的MDS反応の利点
熱条件下よりも穏和な条件で反応が進行
高濃度(最大1.0 M)での反応が可能
誘導期が短く、より速い変換が可能
酸素存在下でも反応が進行し、実用性が高い
2:他の双極子求性剤との反応
スチレンやジフェニルアセチレンとの反応は複雑な混合物を与えた
エチルニトロアセテートとの反応は不完全だが、目的物を38%の収率で与えた
逆の化学量論比(アルキン1当量、アシルニトロメタン2当量)でも反応は進行
3: 反応のスケールアップと応用
ミリモールスケールでの反応でも中程度の収率(55%)を維持
HFIPの使用量を1 mLに抑えることが可能
ラジカル捕捉実験によりラジカル中間体の存在を示唆
生物学的に関連する分子への応用の可能性を示唆
結論
初めての光化学的MDS反応を開発
新規EDA錯体を光増感剤として利用
幅広い基質適用範囲と中程度から良好な収率を達成
自己誘導型の反応メカニズムを提案
実用的で穏和な条件下での反応を実現
将来の展望
光化学的MDS反応の更なる最適化と基質適用範囲の拡大
新規EDA錯体の設計による反応効率の向上
生物活性を持つイソキサゾール誘導体の合成への応用
連続フロー反応システムへの適用による大規模合成の検討
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