2024年9月24日火曜日

Catch Key Points of a Paper ~0137~

論文のタイトル: Taming the Lewis Superacidity of Non-Planar Boranes: CH Bond Activation and Non-Classical Binding Modes at Boron(非平面ボランの超ルイス酸性の制御:C-H結合活性化と非古典的結合様式)

著者:Arnaud Osi, Damien Mahaut, Dr. Nikolay Tumanov, Dr. Luca Fusaro, Prof. Dr. Johan Wouters, Prof. Dr. Benoît Champagne, Dr. Aurélien Chardon, Prof. Dr. Guillaume Berionni

雑誌: Angewandte Chemie International Edition

巻: 61, e202112342

出版年: 2022


背景

1: ルイス酸の基礎

ルイス酸は電子対受容体として定義される

ボランは中性の三配位ボロン化合物

フラストレートルイスペア(FLP)の発見で注目を集める

非平面ボランは小分子活性化や新しい結合様式の可能性がある


2: 非平面ボランの課題

9-ボラトリプチセンは凝縮相で非常に不安定

弱いルイス塩基や弱い配位アニオンとの付加体としてのみ観察可能

強い共有結合の活性化や合成への応用は未探索


3: 研究の目的

非平面ボロンルイス超酸の合理的設計

特異な構造と反応性を持つ化合物の開発

非古典的な電子不足B-H-B結合の形成

強いC-H結合やC-Si結合の活性化の実現


方法

1: 化合物の合成

10-メシチル-9-スルホニウム-10-ボラトリプチセン3の合成

超強酸HCTf3を用いたB-C結合開裂によるトリフリド錯体4の生成

ヒドリド転移反応によるボロヒドリド5の合成


2: 構造解析

X線結晶構造解析による分子構造の決定

NMR分光法による溶液中の構造解析

自然結合軌道(NBO)解析による電子構造の調査


3: 反応性の評価

ルイス酸性度の測定(Gutmann-Becketテスト、赤外分光法)

フッ化物イオン親和性(FIA)の計算

様々な基質との反応性の調査(ベンゼン、トルエン、シランなど)


結果

1: 非古典的B-H-B結合の形成

化合物6の生成:2つの9-スルホニウム-10-ボラトリプチセン単位がH-で連結

B-H-B角度:168.0(3)°とほぼ直線的

B-H結合長:1.293(4) Åと通常のB-H結合より13%長い


2: 高いルイス酸性

Gutmann-Becketテスト:δ = 81.2 ppm(31P NMR)

気相FIA:854 kJ mol-1(B(C6F5)3の466 kJ mol-1を大きく上回る)

主要な陽イオン性ルイス酸と同等以上のFIA値


3: C-H結合活性化

非活性化芳香族C-H結合の活性化(ベンゼン、トルエン、キシレンなど)

選択的なCsp3-H結合活性化(2-ジメチルアミノメシチレン)

Csp3-Si結合の選択的開裂(Ph-SiMe3、(Me3Si)3SiH)


考察

1: 非古典的B-H-B結合の意義

電子不足な3中心2電子結合の形成

カルベニウムイオンやシリリウムイオンとの類似性

高い安定性:HClやHNTf2による反応性なし


2: 超ルイス酸性の起源

非平面構造によるボロン原子の高い電子不足性

スルホニウムリンカーの強い電子吸引性

ピラミッド化による構造再編成エネルギーの最小化


3: C-H結合活性化の特徴

非活性化芳香族C-H結合の金属フリー活性化

立体障害に敏感な選択性

プロトデボロン化による触媒サイクルの可能性


4: 研究の限界

化合物の不安定性と取り扱いの難しさ

触媒的C-H官能基化の未達成

反応機構の詳細な解明が必要


結論

非平面ボロンルイス超酸の合理的設計と合成に成功

非古典的B-H-B結合の形成と特性解明

非活性C-H結合とC-Si結合の活性化を実現

遷移金属様の反応性を示す典型元素化合物の可能性


将来の展望

触媒的C-H官能基化反応の開発

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