2024年9月27日金曜日

Catch Key Points of a Paper ~0140~

論文のタイトル: N-(Sulfonio)Sulfilimine Reagents: Non-Oxidizing Sources of Electrophilic Nitrogen Atom for Skeletal Editing

著者:Tobias Heilmann, Juan M. Lopez-Soria, Johannes Ulbrich, Johannes Kircher, Zhen Li, Brigitte Worbs, Christopher Golz, Ricardo A. Mata, and Manuel Alcarazo*

雑誌: Angewandte Chemie International Edition

巻: 63, e202403826

出版年: 2024


背景

1: 研究背景(骨格編集技術の重要性)

骨格編集技術は薬物・農薬開発の加速に有効

特定原子の選択的な削除、挿入、交換が可能

生物活性化合物における窒素原子の重要性

窒素原子の導入・除去に関する手法が特に注目される


2: 既存の手法と課題(ヨードナイトレンの限界)

ヨードナイトレンは窒素原子操作の主要な試薬

酸化的条件下で in situ 生成が必要

酸化に敏感な官能基との不適合性

アルデヒドやアミンの意図しない変換が問題


3: 研究目的(新規窒素原子転移試薬の開発)

保存可能で酸化力のない窒素原子転移試薬の開発

スルホニウム塩を基盤とした試薬設計

スルホナイトレンBの反応性の探索

広範な官能基との適合性の実現


方法

1: 試薬の合成(N-(スルホニオ)スルフィルイミン試薬1の合成)

スルホキシド2を出発物質として使用

トリフル酸無水物による処理(-50°C)

(TMS)2NHの添加と一晩の撹拌

カラムクロマトグラフィーによる精製

マルチグラムスケールでの合成が可能


2: 構造解析(試薬1の構造特性)

X線回折分析による構造確認

C2v対称性を持つカチオン部分

S-N結合長: 1.657(3) Åと1.675(3) Å(短いS-N単結合)

S1-N1-S2結合角: 108.1°(sp2混成を示唆)

理論計算によるIBO解析の実施


3: 反応性の評価(試薬1の反応性評価)

モデル基質としてインデン3aを使用

Rh2(esp)2触媒存在下での反応

イソキノリン4aの生成を確認

反応条件の最適化(触媒量、塩基、温度など)

基質適用範囲の探索


結果

1: 試薬1の合成と特性(N-(スルホニオ)スルフィルイミン試薬1の特性)

67%の収率で白色微結晶粉末として得られた

15N標識版(1-15N)の合成にも成功

熱分解開始温度: 179°C(DSC分析)

爆発性や衝撃感度なし(吉田の相関に基づく予測)

60°Cで24時間加熱しても質量損失なし


2: インデンからイソキノリンへの変換(窒素原子挿入反応の最適化)

最適条件: Rh2(esp)2 (2 mol%), NaHCO3 (1.2 equiv), DCM, -50°C→rt

イソキノリン4aの収率: 95%(1H NMR)

触媒量を0.5 mol%まで減少させても高収率を維持

空気や湿気に対する耐性を確認


3: 基質適用範囲(窒素原子挿入反応の基質適用範囲)

アルキル、アリール、ヘテロアリール置換基に適用可能

ハロゲン、ニトロ、エステル、ケトン、アミド基との互換性

アルデヒドやベンジルアルコールなど酸化に敏感な官能基も保持

15N標識イソキノリン誘導体の合成にも成功


考察

1: 試薬1の特徴(N-(スルホニオ)スルフィルイミン試薬1の利点)

保存可能な固体試薬として使用可能

酸化力がなく、酸化に敏感な官能基との適合性

マルチグラムスケールでの合成が可能

15N標識体の合成にも応用可能


2: 反応機構の考察(窒素原子挿入反応の推定メカニズム)

Rh-ナイトレン錯体の形成

オレフィンとの[2+1]環化付加によるアジリジン中間体の生成

環拡大を経由したイソキノリンの形成

DFT計算によるエネルギー障壁の評価


3: 新規反応の発見(アリールシクロブテンの環縮小反応)

1-アリル-1-シアノシクロプロパンの生成

アジリジン化経路ではなく、環縮小経路が優先

電子求引基を持つ基質ではピロール生成も観察

ヨードナイトレン法との相補性を示唆


4: 研究の限界(本研究の制限と課題)

N-無保護インドールからキナゾリンへの変換は不成功

電子豊富なシクロブテン基質では二量化/重合化が競合

触媒的なナイトレン転移の直接観察には至らず


結論

安定なN-(スルホニオ)スルフィルイミン試薬1の開発に成功

Rh触媒下でのオレフィンへの選択的窒素原子転移を実現

インデンのイソキノリンへの環拡大反応を確立

アリールシクロブテンの1-シアノシクロプロパンへの変換を発見

酸化に敏感な官能基との高い適合性を実証

骨格編集技術への新たなアプローチを提供


将来の展望

さらなる変換反応の探索

電子豊富なシクロブテン基質では二量化/重合化が競合

触媒的なナイトレン転移の直接観察を含む詳細の解明

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