論文のタイトル: "Naked Nickel"-Catalyzed Amination of Heteroaryl Bromides
著者: Rakan Saeb, Bryan Boulenger, and Josep Cornella
雑誌: Organic Letters
巻: 26, 28, 5928–5933
出版年: 2024
背景
1: C-N結合形成の重要性
C-N結合形成は現代の均一系触媒における重要な反応
医薬品、農薬、ポリマー、機能性材料の合成に大きな影響
従来はPd触媒を用いたBuchwald-Hartwig アミネーションが主流
近年、CuやNiを用いた代替法が注目されている
2: Niを用いたC-N結合形成の新展開
2016年: Buchwald と MacMillanによるフォトレドックス/Ni触媒の融合
2017年: Baranらによる電気化学的Ni触媒アミネーションの開発
2020年: Noceraらによる光や電気を用いないNi触媒プロトコルの報告
しかし、Noceraらの方法ではヘテロアリールブロミドの使用が困難
3: 本研究の目的
堅牢で空気安定な"naked nickel"錯体 [Ni(4-tBustb)3] の開発
ヘテロアリールブロミドとN系求核剤のカップリング反応への応用
外部配位子や光・電気化学的セットアップを必要としない方法の確立
方法
1: 反応条件の最適化
モデル反応: 3-ブロモピリジンとピペリジンのカップリング
触媒: Ni(4-tBustb)3 10 mol%
添加剤: Zn粉末 20 mol%、DABCO 1.8当量
溶媒: DMA (1 M)、温度: 60°C
2: 基質適用範囲の検討
ヘテロアリールブロミド: ピリジン、ピリミジン、キノリン等
アミン: 環状二級アミン、一級アミン、アニリン等
反応条件の微調整: 一級アミンの場合は条件を変更
3: 触媒の構造解析
Ni(4-tBustb)3とピペリジンの反応による錯体の単離
X線結晶構造解析によるNi(4-tBustb)2(piperidine)の構造決定
結果
1: 最適化反応条件の確立
3-ブロモピリジンとピペリジンのカップリング: 76%収率
空気中で6ヶ月保存した触媒でも同等の反応性を維持
NiBr2(dme)やNi(COD)2も良好な収率を示すが、取り扱いに注意が必要
2: ヘテロアリールブロミドの適用範囲
電子供与性/求引性置換基を持つピリジン誘導体: 良好な収率
キノリン、ナフチリジン、インドール、ベンゾフラン等: 高収率でカップリング
チオフェン誘導体: 中程度の収率
3: アミンの適用範囲
環状二級アミン(ピペリジン、ピロリジン等): 高収率
一級アルキルアミン: 条件調整により良好な収率
アニリン誘導体: 中程度から良好な収率
考察
1: "Naked Nickel"触媒の優位性
空気安定性: 長期保存後も活性を維持
広い基質適用範囲: 様々なヘテロアリールブロミドに対応
外部配位子不要: 反応系の簡略化が可能
2: 従来法との比較
Noceraらの方法: ヘテロアリールブロミドの使用が困難
本研究: ヘテロアリールブロミドを効率的にカップリング
NiBr2(dme)使用時よりも高い収率を達成
3: 反応機構の考察
Ni(4-tBustb)2(piperidine)錯体の単離に成功
アミンのNi中心への配位が触媒サイクルに重要な役割
Ni(I)/Ni(III)サイクルの可能性を示唆
4: 研究の限界点
電子豊富なアリールブロミドでは低収率
イミダゾール、プロトン性官能基を持つピリジン等で反応困難
嵩高いアミンや酸アミドでは適用困難
結論
"Naked Nickel"触媒を用いたヘテロアリールブロミドのアミネーション法を開発
外部配位子や光・電気化学的セットアップ不要の簡便な方法を確立
様々なヘテロアリールブロミドとアミンのカップリングに成功
将来の展望
反応機構の詳細解明と適用範囲のさらなる拡大
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