2024年9月23日月曜日

Catch Key Points of a Paper ~0136~

論文のタイトル: "Naked Nickel"-Catalyzed Amination of Heteroaryl Bromides

著者: Rakan Saeb, Bryan Boulenger, and Josep Cornella

雑誌: Organic Letters

巻: 26, 28, 5928–5933

出版年: 2024


背景

1: C-N結合形成の重要性

C-N結合形成は現代の均一系触媒における重要な反応

医薬品、農薬、ポリマー、機能性材料の合成に大きな影響

従来はPd触媒を用いたBuchwald-Hartwig アミネーションが主流

近年、CuやNiを用いた代替法が注目されている


2: Niを用いたC-N結合形成の新展開

2016年: Buchwald と MacMillanによるフォトレドックス/Ni触媒の融合

2017年: Baranらによる電気化学的Ni触媒アミネーションの開発

2020年: Noceraらによる光や電気を用いないNi触媒プロトコルの報告

しかし、Noceraらの方法ではヘテロアリールブロミドの使用が困難


3: 本研究の目的

堅牢で空気安定な"naked nickel"錯体 [Ni(4-tBustb)3] の開発

ヘテロアリールブロミドとN系求核剤のカップリング反応への応用

外部配位子や光・電気化学的セットアップを必要としない方法の確立


方法

1: 反応条件の最適化

モデル反応: 3-ブロモピリジンとピペリジンのカップリング

触媒: Ni(4-tBustb)3 10 mol%

添加剤: Zn粉末 20 mol%、DABCO 1.8当量

溶媒: DMA (1 M)、温度: 60°C


2: 基質適用範囲の検討

ヘテロアリールブロミド: ピリジン、ピリミジン、キノリン等

アミン: 環状二級アミン、一級アミン、アニリン等

反応条件の微調整: 一級アミンの場合は条件を変更


3: 触媒の構造解析

Ni(4-tBustb)3とピペリジンの反応による錯体の単離

X線結晶構造解析によるNi(4-tBustb)2(piperidine)の構造決定


結果

1: 最適化反応条件の確立

3-ブロモピリジンとピペリジンのカップリング: 76%収率

空気中で6ヶ月保存した触媒でも同等の反応性を維持

NiBr2(dme)やNi(COD)2も良好な収率を示すが、取り扱いに注意が必要


2: ヘテロアリールブロミドの適用範囲

電子供与性/求引性置換基を持つピリジン誘導体: 良好な収率

キノリン、ナフチリジン、インドール、ベンゾフラン等: 高収率でカップリング

チオフェン誘導体: 中程度の収率


3: アミンの適用範囲

環状二級アミン(ピペリジン、ピロリジン等): 高収率

一級アルキルアミン: 条件調整により良好な収率

アニリン誘導体: 中程度から良好な収率


考察

1: "Naked Nickel"触媒の優位性

空気安定性: 長期保存後も活性を維持

広い基質適用範囲: 様々なヘテロアリールブロミドに対応

外部配位子不要: 反応系の簡略化が可能


2: 従来法との比較

Noceraらの方法: ヘテロアリールブロミドの使用が困難

本研究: ヘテロアリールブロミドを効率的にカップリング

NiBr2(dme)使用時よりも高い収率を達成


3: 反応機構の考察

Ni(4-tBustb)2(piperidine)錯体の単離に成功

アミンのNi中心への配位が触媒サイクルに重要な役割

Ni(I)/Ni(III)サイクルの可能性を示唆


4: 研究の限界点

電子豊富なアリールブロミドでは低収率

イミダゾール、プロトン性官能基を持つピリジン等で反応困難

嵩高いアミンや酸アミドでは適用困難


結論

"Naked Nickel"触媒を用いたヘテロアリールブロミドのアミネーション法を開発

外部配位子や光・電気化学的セットアップ不要の簡便な方法を確立

様々なヘテロアリールブロミドとアミンのカップリングに成功


将来の展望

反応機構の詳細解明と適用範囲のさらなる拡大

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