2024年9月29日日曜日

Catch Key Points of a Paper ~0141~

論文のタイトル: Organic super-reducing photocatalysts generate solvated electrons via two consecutive photon induced processes(二段階の光誘起過程によって溶媒和電子を生成する有機超還元光触媒)

著者:Marco Villa, Andrea Fermi, Francesco Calogero, Xia Wu, Andrea Gualandi, Pier Giorgio Cozzi, Alessandro Troisi, Barbara Ventura, Paola Ceroni

雑誌: Chemical Science

DOI: 10.1039/d4sc04518a

出版年: 2024


背景

1: 研究背景

有機シアノアレーン化合物が光還元触媒として注目されている

連続光誘起電子移動(ConPeT)機構が提案されている 

ConPeT機構では1光子目で光触媒ラジカルアニオンを生成

2光子目でラジカルアニオンを励起し超還元剤となる


2: 未解決の問題点

ConPeT機構の直接的証拠が不足している

ラジカルアニオン励起状態の光物理的性質がほとんど不明

超還元過程の詳細なメカニズムが解明されていない


3: 研究目的

4CzIPNと4DPAIPNの光物理的性質を詳細に調査する

ラジカルアニオンの励起状態ダイナミクスを解明する  

超還元過程の新しいメカニズムを提案する


方法

1: 実験手法

定常状態および時間分解分光法を使用

フェムト秒からナノ秒の時間分解能で測定

計算化学的手法も併用して解析


2: 測定対象

4CzIPNと4DPAIPNの中性分子

電子供与体(TBAOx)存在下でのラジカルアニオン

ラジカルアニオンの励起状態


3: 解析項目

吸収・発光スペクトル 

励起状態寿命

過渡吸収スペクトル

電子移動反応速度


結果

1: ラジカルアニオンの性質

4CzIPNc-とDPAIPNc-の吸収帯を観測

ラジカルアニオンの発光は観測されず

D1(励起状態の寿命は非常に短い(~20 ps)


2: 溶媒和電子の生成

ラジカルアニオン励起後、1440 nmに新しい吸収帯

この吸収帯はアセトニトリル中の溶媒和電子と一致

溶媒和電子の寿命は数100 ps〜数ns


3: 基質との反応性

4-ブロモアニソールはD1状態を消光しない

1440 nm吸収帯は4-ブロモアニソール濃度に応じて減衰

反応速度定数3.4 × 10^10 M-1 s-1 (拡散律速)


考察

1: 新しい還元メカニズム

ConPeT機構ではなく、溶媒和電子が関与

2段階の光誘起過程で溶媒和電子を生成(ConPies)

1光子目でラジカルアニオン生成、2光子目で溶媒和電子生成


2: 分子構造と電子状態の重要性

フェニル核と周辺ユニットの電子的分離が重要

D2-D5状態が溶媒への電子移動を促進

逆電子移動が抑制される構造


3: 溶媒和電子の利点

高い拡散性により光触媒から離れた場所でも反応

ConPeTよりも長寿命で反応性が高い

アセトニトリル中でも効率的に生成・反応


結論

4CzIPNと4DPAIPNの超還元能は溶媒和電子生成に起因

2段階光誘起電子移動(ConPies)機構を提案

分子構造と電子状態の設計が高効率光触媒に重要

新しい光触媒設計への道を開く重要な知見


将来の展望

溶媒和電子の生成量子収率の正確な決定

他の溶媒系での挙動

長時間の光照射による副反応の探索


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