論文のタイトル: Transition Metal Mimetic π-Activation by Cationic Bismuth(III) Catalysts for Allylic C–H Functionalization of Olefins Using C═O and C═N Electrophiles(遷移金属様のπ活性化によるカチオン性ビスマス(III)触媒を用いたオレフィンのアリル位C-H官能基化)
著者: Ruihan Wang, Sebastián Martínez, Johannes Schwarzmann, Christopher Z. Zhao, Jacqueline Ramler, Crispin Lichtenberg, Yi-Ming Wang
出版: Journal of the American Chemical Society
巻: 146, 32, 22122–22128
出版年: 2024
背景
1: 研究背景
典型元素触媒の開発が注目されている
遷移金属触媒の代替として持続可能性が期待される
ビスマスは安定、無毒、安価、地球上に豊富に存在する元素
ビスマスの触媒としての可能性が注目されている
2: 未解決の課題
典型元素によるC(sp3)-H官能基化反応は稀少
ビスマス-オレフィン相互作用の直接的な証拠が不足
アリル位C-H官能基化における選択性制御が課題
3: 研究目的
カチオン性ビスマス(III)触媒の開発
オレフィンのアリル位C-H官能基化反応の確立
ビスマス-オレフィン相互作用の解明
反応機構の詳細な解析
方法
1: 触媒設計と最適化
様々なカチオン性ビスマス(III)錯体を合成
1,4-ペンタジエンとアルデヒドの反応を最適化
Lewis酸、塩基、溶媒の影響を調査
2: 基質適用範囲の検討
様々な電子求引性基質との反応を検討
アルデヒド、α-ケトエステル、N-スルホニルケチミン等
異なるオレフィン基質(アリルベンゼン、1,4-ジエン等)
3: 機構解析
速度論的同位体効果の測定
量論反応によるアリルビスマス中間体の検出
DFT計算による反応経路の解析
NMR、IR、質量分析によるBi-オレフィン相互作用の解明
結果
1: 最適化された反応条件
触媒: Bi1 (20 mol%)
塩基: 2,2,6,6-テトラメチルピペリジン (3.0 当量)
Lewis酸: TMSOTf (2.3 当量)
溶媒: 1,2-ジクロロエタン
温度: 70℃
2: 基質適用範囲
アルデヒド、α-ケトエステル、N-スルホニルケチミンと反応
1,4-ジエン、アリルベンゼン、単純アルケンが適用可能
高い位置選択性と立体選択性を達成 (>9:1 b/l, >5:1 d.r.)
3: 機構解析結果
速度論的同位体効果: kH/kD = 4.1
アリルビスマス中間体をHRMSで検出
DFT計算により閉環遷移状態を経由する機構を提案
Bi-オレフィン相互作用のNBOエネルギー: 15.6-20.6 kcal/mol
考察
1: 主要な発見
カチオン性ビスマス(III)触媒による新規C(sp3)-H官能基化
1,4-ジエンの選択的γ位官能基化を達成
従来の遷移金属触媒とは異なる位置選択性
2: 新たな知見
Bi-オレフィン相互作用の直接的な証拠を初めて提示
アリルビスマス中間体の生成と反応性を実験的に確認
計算化学により反応機構の詳細を解明
3: 先行研究との比較
典型元素によるC(sp3)-H官能基化の稀少な例
遷移金属様の反応性をビスマス触媒で実現
1,4-ジエンの位置選択的官能基化は従来法と異なる
4: 研究の限界点
触媒量が比較的多い (20 mol%)
基質適用範囲にまだ制限がある
不斉反応への展開が今後の課題
結論
カチオン性ビスマス(III)触媒による新規C-H官能基化反応を開発
Bi-オレフィン相互作用の直接的証拠を初めて提示
反応機構の詳細を実験と理論計算により解明
典型元素触媒の新たな可能性を示唆
将来の展望
不斉反応や他の官能基化への展開が期待される
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