2024年9月13日金曜日

Catch Key Points of a Paper ~0126~

論文のタイトル: Transition Metal Mimetic π-Activation by Cationic Bismuth(III) Catalysts for Allylic C–H Functionalization of Olefins Using C═O and C═N Electrophiles(遷移金属様のπ活性化によるカチオン性ビスマス(III)触媒を用いたオレフィンのアリル位C-H官能基化)

著者: Ruihan Wang, Sebastián Martínez, Johannes Schwarzmann, Christopher Z. Zhao, Jacqueline Ramler, Crispin Lichtenberg, Yi-Ming Wang

出版: Journal of the American Chemical Society

巻: 146, 32, 22122–22128

出版年: 2024


背景

1: 研究背景

典型元素触媒の開発が注目されている

遷移金属触媒の代替として持続可能性が期待される

ビスマスは安定、無毒、安価、地球上に豊富に存在する元素

ビスマスの触媒としての可能性が注目されている


2: 未解決の課題

典型元素によるC(sp3)-H官能基化反応は稀少

ビスマス-オレフィン相互作用の直接的な証拠が不足

アリル位C-H官能基化における選択性制御が課題


3: 研究目的

カチオン性ビスマス(III)触媒の開発

オレフィンのアリル位C-H官能基化反応の確立

ビスマス-オレフィン相互作用の解明

反応機構の詳細な解析


方法

1: 触媒設計と最適化

様々なカチオン性ビスマス(III)錯体を合成

1,4-ペンタジエンとアルデヒドの反応を最適化

Lewis酸、塩基、溶媒の影響を調査


2: 基質適用範囲の検討

様々な電子求引性基質との反応を検討

アルデヒド、α-ケトエステル、N-スルホニルケチミン等

異なるオレフィン基質(アリルベンゼン、1,4-ジエン等)


3: 機構解析

速度論的同位体効果の測定

量論反応によるアリルビスマス中間体の検出

DFT計算による反応経路の解析

NMR、IR、質量分析によるBi-オレフィン相互作用の解明


結果

1: 最適化された反応条件

触媒: Bi1 (20 mol%)

塩基: 2,2,6,6-テトラメチルピペリジン (3.0 当量)

Lewis酸: TMSOTf (2.3 当量)

溶媒: 1,2-ジクロロエタン

温度: 70℃


2: 基質適用範囲

アルデヒド、α-ケトエステル、N-スルホニルケチミンと反応

1,4-ジエン、アリルベンゼン、単純アルケンが適用可能

高い位置選択性と立体選択性を達成 (>9:1 b/l, >5:1 d.r.)


3: 機構解析結果

速度論的同位体効果: kH/kD = 4.1

アリルビスマス中間体をHRMSで検出

DFT計算により閉環遷移状態を経由する機構を提案

Bi-オレフィン相互作用のNBOエネルギー: 15.6-20.6 kcal/mol


考察

1: 主要な発見

カチオン性ビスマス(III)触媒による新規C(sp3)-H官能基化

1,4-ジエンの選択的γ位官能基化を達成

従来の遷移金属触媒とは異なる位置選択性


2: 新たな知見

Bi-オレフィン相互作用の直接的な証拠を初めて提示

アリルビスマス中間体の生成と反応性を実験的に確認

計算化学により反応機構の詳細を解明


3: 先行研究との比較

典型元素によるC(sp3)-H官能基化の稀少な例

遷移金属様の反応性をビスマス触媒で実現

1,4-ジエンの位置選択的官能基化は従来法と異なる


4: 研究の限界点

触媒量が比較的多い (20 mol%)

基質適用範囲にまだ制限がある

不斉反応への展開が今後の課題


結論

カチオン性ビスマス(III)触媒による新規C-H官能基化反応を開発

Bi-オレフィン相互作用の直接的証拠を初めて提示

反応機構の詳細を実験と理論計算により解明

典型元素触媒の新たな可能性を示唆


将来の展望

不斉反応や他の官能基化への展開が期待される

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