著者: FVanya B. Kurteva, Maria J. Lyapova, and Ivan G. Pojarlieff
出版: ARKIVOC
巻: (ii) 91-100
出版年: 2006
背景
1: 研究の背景
立体電子効果は多くの変換反応で重要な役割を果たす
Deslongchampsの立体電子理論:隣接ヘテロ原子上の2つの孤立電子対が切断結合に対してアンチペリプラナー配座を取る
この理論は多くの実験的証拠によって支持されている
しかし、一部の研究者から批判もある
2: 未解決の問題
立体電子効果のシステイン系プロテアーゼへの関連性は不明確
低温での立体電子効果の妥当性に疑問がある
室温での中間体の分解経路が不明確
3: 研究の目的
トリフェニルプロパン骨格を持つジアステレオ異性体アミノチオールアセテートの分子内S→N アシル転移を調査
立体電子効果の役割を解明する
Deslongchampsのアンチペリプラナー孤立電子対仮説の検証
方法
1: 研究デザイン
ジアステレオ異性体3-アミノ-および3-メチルアミノ-1,2,3-トリフェニルプロピルチオールアセテートの合成
トリエチルアミン触媒下での分子内S→N アシル転移の速度論的研究
IR分光法による反応モニタリング
2: 実験手順
0.02 M チオールアセテート溶液を調製
10倍モル過剰のトリエチルアミンを添加
25±0.5°Cで反応を実施
適切な間隔でIRスペクトルを記録
3: データ解析
GRAFIT 4プログラムを用いた非線形曲線フィッティング
一次反応速度式を使用
初期および最終吸光度を調整可能パラメータとして扱う
結果
1: 反応速度定数
化合物ET-1: (1.2 ± 0.1) x 10^-4 sec^-1
化合物ET-2: 7 x 10^-6 sec^-1 (概算)
化合物TE-2: (3.7 ± 0.6) x 10^-6 sec^-1
化合物EE-2: (6.7 ± 0.2) x 10^-7 sec^-1
2: 立体配置の影響
化合物EE-2は、TE-2とET-2よりも6倍および10倍遅く反応
化合物ET-2はTE-2よりも速く反応する傾向
3: N-置換基の影響
化合物ET-1はET-2よりも20倍速く反応
活性化自由エネルギーの差は約1.8 kcal/mol
考察
1: 立体電子効果の証拠
化合物EE-2の遅い反応速度は、1,3-平行Ph↔Me相互作用による
この相互作用は、ET-2とTE-2の1,3-平行Ph↔O-相互作用よりも強い
これはDeslongchampsの立体電子仮説と一致
2: 反応機構の考察
C-S結合の開裂が律速段階であると仮定
これはKaloustianとNaderの低温での結果と一致
システインプロテアーゼの作用機構への示唆
3: N-メチル置換の影響
N-メチル基が軸位に強制されることで、EE異性体の反応性が大きく低下
これにより、予想される反応性の順序が変化
4: 研究の限界
反応速度の差は極端に大きくはない
塩基触媒によるアミノリシスでは、通常アミノ基の脱プロトン化が律速段階
結論
ジアステレオ異性体アミノチオールアセテートの分子内S→N アシル転移の反応性は立体電子効果によって説明可能
Deslongchampsのアンチペリプラナー孤立電子対仮説が支持された
システインプロテアーゼの作用機構解明への手がかりを提供
将来の展望
より広範な基質での検証や酵素反応への応用が期待される
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