論文のタイトル: Cobalt–Magnesium and Cobalt–Calcium Heterotrimetallic Dinitrogen Complexes(コバルト-マグネシウムおよびコバルト-カルシウムヘテロ三核窒素錯体)
著者: Jocelyn Polanco, Theresa Knoell, Abolghasem Gus Bakhoda
出版: SynOpen
巻: 8, 63–67
出版年: 2024
背景
1: 窒素活性化の重要性
窒素活性化は無機・有機金属化学者の大きな関心事
アンモニア合成の代替ルート探索が目的
現行のハーバー・ボッシュ法は世界の一次エネルギーの1-2%を消費
CO2の排出量も世界の1%以上
2: 遷移金属を用いた窒素活性化
Ti, V, Cr, Mo, W, Re, Fe, Ru, Os, Coなどの遷移金属が研究されている
Mo, Fe錯体が最も有望な触媒として知られる
Coを含む卑金属系への関心が高まっている
3: アルカリ土類金属の利用
MgやCaなどのアルカリ土類金属による窒素活性化の研究は少ない
Mgを用いた研究例はいくつか報告されている
Caを用いた研究はさらに少ない
方法
1: 錯体の合成方法
[iPr2NN]Co(μ-Cl)2Li(thf)2前駆体を用いて合成
金属MgまたはCa粉末で還元
THF溶媒中、室温で反応
2: 生成物の単離と精製
セライト濾過で不溶物を除去
n-ペンタンに溶解し、シリンジフィルター濾過
-35℃で結晶化
3: 分析手法
1H NMR分光法で構造解析
IR分光法でN-N結合の活性化を評価
X線結晶構造解析で分子構造を決定
元素分析で組成を確認
結果
1: 得られた錯体の構造
{iPr2NNCo(μ-N2)}2Mg(thf)4 (2)とCa類似体(3)の合成に成功
化合物2の収率38%、3の収率21%
X線構造解析により[Co-N≡N-M-N≡N-Co]コアを確認(M = Mg, Ca)
2: 分光学的特性
化合物2のIRスペクトル: N-N伸縮振動 1882 cm-1
化合物3のIRスペクトル: N-N伸縮振動 1868 cm-1
両錯体とも遊離N2 (2331 cm-1)と比べて低波数シフト
3: 結晶構造の特徴
化合物2: Co-NN 1.685(3) Å, Mg-NN 2.07(7) Å, N-N 1.158(6) Å
化合物3: Co-NN 1.683(3) Å, Ca-NN 2.343(3) Å, N-N 1.149(3) Å
両錯体とも遊離N2 (1.11 Å)より長いN-N結合距離
考察
1: N2活性化の程度
IRスペクトルからN2の活性化を確認
MgとCaで活性化の程度に大きな差は見られない
アルカリ金属(Na, K)を用いた先行研究と比較して活性化は弱い
2: 構造の特徴
中心金属イオン(Mg2+, Ca2+)が八面体配位環境
2つの[iPr2NNCo(μ-N2)]-フラグメントが軸位に配位
4つのTHF分子が赤道位に配位
3: プロトン化反応
Brookhartの酸での処理によりNH3生成を確認
化合物2: 1.9-2.6%のNH3収率
化合物3: 3.2-3.8%のNH3収率
低収率だが、N2の活性化を示唆
4: 研究の限界点
NH3生成収率が低い
かさ高いβ-ジケチミナート配位子がN2へのアクセスを阻害
反応機構の詳細は不明
結論
Co-Mg, Co-Ca三核錯体によるN2活性化に成功
アルカリ土類金属(Mg, Ca)でもN2活性化が可能
アルカリ金属(Na, K)と比べ活性化の程度は低い
NH3生成を確認、さらなる触媒設計の指針を提供
将来の展望
配位子設計の最適化によるN2へのアクセス改善
反応機構の詳細解明
触媒活性向上のための新規金属組み合わせの探索
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