2024年9月4日水曜日

Catch Key Points of a Paper ~0117~

論文のタイトル: A Convenient Route to 2-Bromo-3-chloronorbornadiene and 2,3-Dibromonorbornadiene(2-ブロモ-3-クロロノルボルナジエンと2,3-ジブロモノルボルナジエンへの便利な合成ルート)

著者: Anders Lennartson, Maria Quant, Kasper Moth-Poulsen*

出版: Synlett

巻: 26, 1501-1504

出版年: 2015


背景

1: ノルボルナジエンの重要性

ノルボルナジエンは1951年に初めて合成された

光誘起[2+2]分子内環化付加反応でクアドリシクラン(2)に変換可能

この反応は可逆的で、太陽エネルギー貯蔵に利用できる

分子太陽熱(MOST)エネルギー貯蔵システムとして知られる


2: 2-ブロモ-3-クロロノルボルナジエン(3)の重要性

2,3位を選択的に置換可能な重要な前駆体

2つの連続的鈴木クロスカップリング反応で置換可能

従来の合成法は発がん性のある1,2-ジブロモエタン(一部の国では使用が制限されている)を使用


3: 研究の目的

1,2-ジブロモエタンを使わない3の新しい合成ルートの開発

p-トルエンスルホニルブロミドを代替臭素源として使用

反応時間の短縮と収率の向上を目指す

2,3-ジブロモノルボルナジエン(8)の合成法も改良


方法

1: 2-ブロモ-3-クロロノルボルナジエン(3)の合成

ノルボルナジエンをSchlosserの塩基で脱プロトン化

p-トルエンスルホニルクロリドで塩素化

n-ブチルリチウムで再度脱プロトン化

p-トルエンスルホニルブロミドで臭素化


2: 2,3-ジブロモノルボルナジエン(8)の合成

ノルボルナジエンをSchlosserの塩基で脱プロトン化

p-トルエンスルホニルブロミドを0.5当量添加

再度p-トルエンスルホニルブロミドを0.5当量添加


3: 反応条件の最適化

ノルボルナジエンの過剰量を1.2当量に削減

反応温度を-84°Cから-41°Cに調整

反応時間を短縮


結果

1: 2-ブロモ-3-クロロノルボルナジエン(3)の合成結果

収率: 50%(従来法と同程度)

ノルボルナジエンベースの収率: 42%(従来法の12%から大幅改善)

ワンポット反応で合成可能


2: 2,3-ジブロモノルボルナジエン(8)の合成結果

収率: 37%(従来法の65%より低下)

ノルボルナジエンベースの収率: 15%(従来法の16%とほぼ同等)

反応時間が大幅に短縮


3: 新合成法の利点

毒性の高い1,2-ジブロモエタンの使用を回避

反応時間の大幅な短縮を実現

化合物3の合成においてノルボルナジエンの利用効率が向上

化合物8の合成も従来法と同程度の効率を維持


考察

1: 2-ブロモ-3-クロロノルボルナジエン(3)の合成改善

p-トルエンスルホニルブロミドが効果的な臭素化剤として機能

ワンポット反応により、中間体の単離が不要に

ノルボルナジエンの利用効率が大幅に向上(12%→42%)


2: 2,3-ジブロモノルボルナジエン(8)の合成

全体の収率は低下したが、ノルボルナジエンベースでは同等

反応時間の短縮により、1日で合成可能に

毒性の高い試薬を避けることで、安全性が向上


3: 新合成法の意義

環境に優しい合成ルートの確立

実験室での使いやすさの向上(短時間で合成可能)

MOSTシステム研究への貢献の可能性


4: 研究の限界

化合物8の合成における収率の低下

長期保存安定性に関する詳細な検討が必要

スケールアップ時の課題が未検討


結論

2-ブロモ-3-クロロノルボルナジエン(3)と2,3-ジブロモノルボルナジエン(8)の新しい合成ルートを確立

毒性の高い1,2-ジブロモエタンの使用を回避し、環境負荷を低減

反応時間の大幅な短縮により、実験室での利便性が向上


将来の展望

MOSTシステムなど、ノルボルナジエン誘導体の研究開発への貢献

さらなる最適化や大規模合成に向けた研究が期待される

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