論文のタイトル: A Convenient Route to 2-Bromo-3-chloronorbornadiene and 2,3-Dibromonorbornadiene(2-ブロモ-3-クロロノルボルナジエンと2,3-ジブロモノルボルナジエンへの便利な合成ルート)
著者: Anders Lennartson, Maria Quant, Kasper Moth-Poulsen*
出版: Synlett
巻: 26, 1501-1504
出版年: 2015
背景
1: ノルボルナジエンの重要性
ノルボルナジエンは1951年に初めて合成された
光誘起[2+2]分子内環化付加反応でクアドリシクラン(2)に変換可能
この反応は可逆的で、太陽エネルギー貯蔵に利用できる
分子太陽熱(MOST)エネルギー貯蔵システムとして知られる
2: 2-ブロモ-3-クロロノルボルナジエン(3)の重要性
2,3位を選択的に置換可能な重要な前駆体
2つの連続的鈴木クロスカップリング反応で置換可能
従来の合成法は発がん性のある1,2-ジブロモエタン(一部の国では使用が制限されている)を使用
3: 研究の目的
1,2-ジブロモエタンを使わない3の新しい合成ルートの開発
p-トルエンスルホニルブロミドを代替臭素源として使用
反応時間の短縮と収率の向上を目指す
2,3-ジブロモノルボルナジエン(8)の合成法も改良
方法
1: 2-ブロモ-3-クロロノルボルナジエン(3)の合成
ノルボルナジエンをSchlosserの塩基で脱プロトン化
p-トルエンスルホニルクロリドで塩素化
n-ブチルリチウムで再度脱プロトン化
p-トルエンスルホニルブロミドで臭素化
2: 2,3-ジブロモノルボルナジエン(8)の合成
ノルボルナジエンをSchlosserの塩基で脱プロトン化
p-トルエンスルホニルブロミドを0.5当量添加
再度p-トルエンスルホニルブロミドを0.5当量添加
3: 反応条件の最適化
ノルボルナジエンの過剰量を1.2当量に削減
反応温度を-84°Cから-41°Cに調整
反応時間を短縮
結果
1: 2-ブロモ-3-クロロノルボルナジエン(3)の合成結果
収率: 50%(従来法と同程度)
ノルボルナジエンベースの収率: 42%(従来法の12%から大幅改善)
ワンポット反応で合成可能
2: 2,3-ジブロモノルボルナジエン(8)の合成結果
収率: 37%(従来法の65%より低下)
ノルボルナジエンベースの収率: 15%(従来法の16%とほぼ同等)
反応時間が大幅に短縮
3: 新合成法の利点
毒性の高い1,2-ジブロモエタンの使用を回避
反応時間の大幅な短縮を実現
化合物3の合成においてノルボルナジエンの利用効率が向上
化合物8の合成も従来法と同程度の効率を維持
考察
1: 2-ブロモ-3-クロロノルボルナジエン(3)の合成改善
p-トルエンスルホニルブロミドが効果的な臭素化剤として機能
ワンポット反応により、中間体の単離が不要に
ノルボルナジエンの利用効率が大幅に向上(12%→42%)
2: 2,3-ジブロモノルボルナジエン(8)の合成
全体の収率は低下したが、ノルボルナジエンベースでは同等
反応時間の短縮により、1日で合成可能に
毒性の高い試薬を避けることで、安全性が向上
3: 新合成法の意義
環境に優しい合成ルートの確立
実験室での使いやすさの向上(短時間で合成可能)
MOSTシステム研究への貢献の可能性
4: 研究の限界
化合物8の合成における収率の低下
長期保存安定性に関する詳細な検討が必要
スケールアップ時の課題が未検討
結論
2-ブロモ-3-クロロノルボルナジエン(3)と2,3-ジブロモノルボルナジエン(8)の新しい合成ルートを確立
毒性の高い1,2-ジブロモエタンの使用を回避し、環境負荷を低減
反応時間の大幅な短縮により、実験室での利便性が向上
将来の展望
MOSTシステムなど、ノルボルナジエン誘導体の研究開発への貢献
さらなる最適化や大規模合成に向けた研究が期待される
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