論文のタイトル: A Useful Method for the Conversion of Olefins to Nitro Olefins
著者: G. Sudhakar Reddy and E. J. Corey
出版: Organic Letters
巻: 23, 3399−3402
出版年: 2021
背景
1: 研究の背景
ニトロオレフィンは重要な有機合成中間体
従来の合成法には複数のステップや特殊な条件が必要
簡便で効率的な合成法の開発が求められていた
シクロペンテンからニトロシクロペンテンへの変換が報告された
2: 未解決の問題点
従来法の欠点:多段階反応や高圧・特殊条件が必要
CF3SO2ONO2が反応中間体として関与する可能性
様々なオレフィンへの適用可能性が未検討
反応機構の詳細が不明確
3: 研究の目的
トリフリルニトラートを用いたニトロ化反応の適用範囲の拡大
様々なオレフィン基質に対する反応性の検討
反応の操作性と安全性の向上
新規ニトロオレフィン合成法の確立
方法
1: 反応条件の最適化
テトラ-n-ブチルアンモニウムニトラートを使用
トリフルオロメタンスルホン酸無水物(トリフリック無水物)を添加
ジクロロメタン溶媒中、30℃で反応
テトラ-n-ブチルアンモニウムトリフラートの添加効果を検討
2: 基質の選択と反応条件
5〜8員環シクロアルケンを主な基質として使用
電子豊富なオレフィンと電子不足オレフィンの両方を検討
反応温度:30℃(一般的な条件)、-30℃(反応性の高い基質)
反応時間:基質に応じて調整
3: 生成物の単離と構造決定
シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製
1H NMR、13C NMRによる構造確認
既知化合物との物性データの比較
新規化合物の場合、2D NMR等による詳細な構造解析
結果
1: 環状オレフィンのニトロ化
5〜8員環シクロアルケンが高収率でニトロ化(70-80%)
電子不足オレフィン(エノン類)も効率的にニトロ化
位置選択性:主に共役ニトロオレフィンを生成
1-ニトロシクロペンテンは反応条件下で安定
2: 鎖状オレフィンのニトロ化
トリ置換電子豊富オレフィンは低温(-30℃)で反応
E,E-ファルネソールBOCエステルは選択的にアリル位ニトロ化
内部二重結合は反応せず、末端アリル位のみニトロ化
基質構造により共役/アリル位ニトロ化の選択性が変化
3: 芳香族置換オレフィンのニトロ化
スチレン誘導体はオルト位選択的にニトロ化
パラ位ニトロ化生成物は検出されず
電子求引基を持つスチレン誘導体も同様の選択性
フェニルプロピオン酸エステルはパラ位ニトロ化
考察
1: 反応の適用範囲
幅広いオレフィン基質に適用可能
π電子豊富および電子不足オレフィンの両方に有効
環状/鎖状オレフィン、芳香族置換オレフィンに適用可能
位置選択性は基質構造に依存
2: 反応機構の考察
トリフリルニトラート(CF3SO2ONO2)が活性種として作用
β-ニトロカルボカチオン中間体の形成を示唆
テトラ-n-ブチルアンモニウムトリフラートがプロトン受容体として機能
芳香族系での[4+2]環化付加機構の可能性
3: 方法論の利点
操作が簡便で安全性が高い
室温付近で反応が進行(一部の基質は低温)
高圧条件や特殊な装置が不要
ラボスケールでの合成に適している
4: 研究の限界点
1-ニトロシクロペンテンの反応性が低い
一部の基質で位置選択性の制御が困難
複雑な構造を持つ基質での予期せぬ転位反応
反応機構の詳細な解明が今後の課題
結論
トリフリルニトラートを用いた新規ニトロオレフィン合成法を確立
幅広い基質に適用可能で、高収率かつ位置選択的
操作性と安全性に優れ、ラボスケール合成に適している
将来の展望
有機合成中間体としてのニトロオレフィンの利用拡大
反応機構の詳細解明と選択性制御が今後の研究課題
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