2024年9月9日月曜日

Catch Key Points of a Paper ~0122~

論文のタイトル: A Useful Method for the Conversion of Olefins to Nitro Olefins

著者: G. Sudhakar Reddy and E. J. Corey

出版: Organic Letters

巻: 23, 3399−3402

出版年: 2021


背景

1: 研究の背景

ニトロオレフィンは重要な有機合成中間体

従来の合成法には複数のステップや特殊な条件が必要

簡便で効率的な合成法の開発が求められていた

シクロペンテンからニトロシクロペンテンへの変換が報告された


2: 未解決の問題点

従来法の欠点:多段階反応や高圧・特殊条件が必要

CF3SO2ONO2が反応中間体として関与する可能性

様々なオレフィンへの適用可能性が未検討

反応機構の詳細が不明確


3: 研究の目的

トリフリルニトラートを用いたニトロ化反応の適用範囲の拡大

様々なオレフィン基質に対する反応性の検討

反応の操作性と安全性の向上

新規ニトロオレフィン合成法の確立


方法

1: 反応条件の最適化

テトラ-n-ブチルアンモニウムニトラートを使用

トリフルオロメタンスルホン酸無水物(トリフリック無水物)を添加

ジクロロメタン溶媒中、30℃で反応

テトラ-n-ブチルアンモニウムトリフラートの添加効果を検討


2: 基質の選択と反応条件

5〜8員環シクロアルケンを主な基質として使用

電子豊富なオレフィンと電子不足オレフィンの両方を検討

反応温度:30℃(一般的な条件)、-30℃(反応性の高い基質)

反応時間:基質に応じて調整


3: 生成物の単離と構造決定

シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製

1H NMR、13C NMRによる構造確認

既知化合物との物性データの比較

新規化合物の場合、2D NMR等による詳細な構造解析


結果

1: 環状オレフィンのニトロ化

5〜8員環シクロアルケンが高収率でニトロ化(70-80%)

電子不足オレフィン(エノン類)も効率的にニトロ化

位置選択性:主に共役ニトロオレフィンを生成

1-ニトロシクロペンテンは反応条件下で安定


2: 鎖状オレフィンのニトロ化

トリ置換電子豊富オレフィンは低温(-30℃)で反応

E,E-ファルネソールBOCエステルは選択的にアリル位ニトロ化

内部二重結合は反応せず、末端アリル位のみニトロ化

基質構造により共役/アリル位ニトロ化の選択性が変化


3: 芳香族置換オレフィンのニトロ化

スチレン誘導体はオルト位選択的にニトロ化

パラ位ニトロ化生成物は検出されず

電子求引基を持つスチレン誘導体も同様の選択性

フェニルプロピオン酸エステルはパラ位ニトロ化


考察

1: 反応の適用範囲

幅広いオレフィン基質に適用可能

π電子豊富および電子不足オレフィンの両方に有効

環状/鎖状オレフィン、芳香族置換オレフィンに適用可能

位置選択性は基質構造に依存


2: 反応機構の考察

トリフリルニトラート(CF3SO2ONO2)が活性種として作用

β-ニトロカルボカチオン中間体の形成を示唆

テトラ-n-ブチルアンモニウムトリフラートがプロトン受容体として機能

芳香族系での[4+2]環化付加機構の可能性


3: 方法論の利点

操作が簡便で安全性が高い

室温付近で反応が進行(一部の基質は低温)

高圧条件や特殊な装置が不要

ラボスケールでの合成に適している


4: 研究の限界点

1-ニトロシクロペンテンの反応性が低い

一部の基質で位置選択性の制御が困難

複雑な構造を持つ基質での予期せぬ転位反応

反応機構の詳細な解明が今後の課題


結論

トリフリルニトラートを用いた新規ニトロオレフィン合成法を確立

幅広い基質に適用可能で、高収率かつ位置選択的

操作性と安全性に優れ、ラボスケール合成に適している


将来の展望

有機合成中間体としてのニトロオレフィンの利用拡大

反応機構の詳細解明と選択性制御が今後の研究課題

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