論文のタイトル: Determining the Relative Configuration of Propargyl Cyclopropanes by Co-Crystallization(共結晶化によるプロパルギルシクロプロパンの相対配置の決定)
著者: Felix Krupp, Marie-Idrissa Picher, Wolfgang Frey, Bernd Plietker, Clemens Richert
出版: Synlett
巻: Volume32, 350-353
出版年: 2021
背景
1: 研究背景
有機合成反応では複数の立体異性体が生成することが多い
ジアステレオマーの区別は通常NMRスペクトロスコピーで行われる
化学シフトや結合定数の差が小さい場合、区別が困難
複雑な分子では、ピークの重なりが正確な帰属を妨げる
2: 未解決の問題
NMR法が失敗した場合、結晶化が難しい化合物の立体配置決定が課題
X線結晶構造解析は構造決定に有効だが、単結晶の取得が必要
単結晶を得ることが困難な化合物が多く存在する
ラセミ混合物は純粋な化合物よりも結晶化が困難
3: 研究目的
テトラアリルアダマンタンを用いた共結晶化法の適用範囲拡大
鉄触媒によるシクロプロパン化反応生成物の相対配置決定
結晶化が困難な有機分子の立体化学配置決定手法の確立
迅速かつ少量のサンプルで結果を得る方法の開発
方法
1: 共結晶化法
結晶化シャペロンとして1,3,5,7-テトラキス(2-ブロモ-4-メトキシフェニル)アダマンタン(TBro)を使用
30 μLのHPLC精製済みラセミ混合物と5 mgのTBroを混合
70°Cに加熱して均一溶液を形成
ホットプレートをオフにして自然冷却により結晶化
2: X線結晶構造解析
結晶化翌日に適切な結晶を選択
X線回折測定を実施
得られたデータをもとに相対配置を決定
結晶構造をケンブリッジ結晶構造データベースに登録
3: 分析対象化合物
cis-1およびtrans-1: プロパルギルシクロプロパン誘導体
cis-2およびtrans-2: プロパルギルシクロプロパン誘導体
上記化合物のラセミ混合物を使用
1:4のcis-1/trans-1混合物も分析対象として使用
結果
1: 共結晶構造の形成
cis-1、trans-1、trans-2がTBroと共結晶を形成
cis-2はTBroとの共結晶形成に失敗
3つの異なる結晶系(三方晶系、単斜晶系、三斜晶系)を観察
すべての場合でラセミ共結晶構造を取得
2: 相対配置の決定
cis-1、trans-1、trans-2の相対配置を明確に決定
非対称単位中に2分子の分析対象化合物を含む
1分子は良く整列し、もう1分子は部分的に無秩序
TBro分子間に分析対象分子の層が形成される
3: 混合物からの結晶化
1:4のcis-1/trans-1混合物からの結晶化に成功
主要なジアステレオマー(trans-1)のラセミ結晶構造を取得
構造決定に2日未満の時間で成功
良く整列した分析対象分子を含む結晶構造を得る
考察
1: 主要な発見
テトラアリルアダマンタンを用いた共結晶化法の有効性を確認
ラセミ混合物の相対配置決定に成功
従来の結晶化手法よりも少量のサンプルで結果を取得
2: 方法の利点
溶媒のスクリーニングや特別な結晶化条件が不要
48時間以内に最終結果を得ることが可能
複数の立体異性体を含む混合物からも主要成分の構造決定が可能
3: 応用可能性
有機合成反応の方法開発や触媒研究の加速に貢献
天然物の構造決定にも応用可能
立体化学が重要な有機化学分野全般での活用が期待される
4: 研究の限界
一部の化合物(cis-2)では共結晶形成に失敗
複雑な混合物からの選択的結晶化には課題が残る
結晶性包接化合物の形成メカニズムの詳細は不明
結論
テトラアリルアダマンタンを用いた共結晶化法の適用範囲を拡大
ラセミ混合物の相対配置決定に成功し、手法の有効性を実証
迅速かつ少量サンプルでの構造決定が可能に
将来の展望
有機合成や天然物化学での活用が期待される
結晶化メカニズムの解明や適用範囲のさらなる拡大が今後の課題
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