論文のタイトル: Thiocarbonyl Pseudohalides – The Curious Case of Thiocarbonyl Dithiocyanate(チオカルボニル擬ハロゲン化物 - チオカルボニルジチオシアネートの興味深い事例)
著者: Jonathan Pfeiffer, Hennes Günther, Patrick Fuzon, Florian Weigend, Frank Tambornino
出版: Chemistry - A European Journal
巻: Volume30, Issue44, e202401508
出版年: 2024
背景
1: 研究背景
カルボニル擬ハロゲン化物は広く研究されている
チオカルボニル擬ハロゲン化物の研究は限定的
チオカルボニルジチオシアネートの合成報告はあるが、詳細な分析データは不足
2: 未解決の課題
チオカルボニル擬ハロゲン化物の構造や性質は不明確
異性体や配座異性体の存在可能性
反応性や錯体形成能力の解明が必要
3: 研究目的
チオカルボニルジチオシアネートの合成と特性解明
構造、スペクトル特性、反応性の包括的研究
量子化学計算による安定性と反応経路の解析
方法
1: 合成方法
チオホスゲンとチオシアン酸アンモニウムの反応
銀チオシアン酸塩を用いたクロロチオカルボニルチオシアネートの合成
エタノールとの反応によるチオイミドジカルボン酸-O,O-ジエチルエステルの合成
2: 構造解析
X線単結晶構造解析
粉末X線回折
振動分光法(ラマン、IR)
3: 計算化学
DFT計算による構造最適化
エネルギープロファイル計算
反応経路解析
4: 錯体合成
ニッケル錯体の合成
単結晶X線構造解析による錯体構造の決定
結果
1: 構造特性
チオカルボニルジチオシアネート(1)はsyn-anti配座で結晶化
クロロチオカルボニルチオシアネート(2)はsyn配座で結晶化
両化合物とも-SCN基が中心炭素に結合
2: スペクトル特性
ラマンスペクトルで1のsyn-anti配座を確認
NMRスペクトルで特徴的な低磁場シフトを観測
IRスペクトルで分解生成物の存在を示唆
3: 反応性と錯体形成
化合物1とエタノールの反応でチオイミドジカルボン酸-O,O-ジエチルエステル(3)を生成
化合物3はニッケルと反応し、平面四配位錯体(4)を形成
考察
1: 構造的特徴の意義
化合物1のsyn-anti配座は類似化合物と異なる珍しい特徴
-SCN基の結合様式が反応性に影響
2: 熱力学的安定性
DFT計算により1は速度論的生成物であることが判明
熱力学的生成物との約100 kJ/mol のエネルギー差
3: 反応経路
-SCN置換の遷移状態が-NCS置換より低い
速度論的制御により1と2の選択的生成を説明
4: 錯体形成能
化合物3から得られる錯体4は新規な配位様式を示す
S,S-二座配位子としての可能性を示唆
5: 研究の限界
高温での不安定性により詳細な熱分析が困難
熱力学的生成物の単離には至らず
結論
チオカルボニルジチオシアネートの構造と性質を解明
速度論的生成物の選択的生成メカニズムを提案
新規錯体形成能を持つ配位子前駆体の開発
将来の展望
チオカルボニル化学の新たな可能性を示唆
他の金属との錯体形成や触媒応用
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