2024年8月19日月曜日

Catch Key Points of a Paper ~0102~

論文のタイトル: Synthesis of tetrahydropyrans via an intermolecular oxa-michael/michael stepwise cycloaddition(テトラヒドロピランの合成: 分子間オキサ-マイケル/マイケル段階的付加環化反応による新手法)

著者: Ricardo A. Gutiérrez-Márquez, Jazmín García-Ramírez, Ana L. Silva, Luis D. Miranda

出版: Tetrahedron Letters

巻: 147, 155215

出版年: 2024年 


背景

1: テトラヒドロピランの重要性

テトラヒドロピラン(THP)は自然界に広く存在する含酸素複素環

糖類、クロメン類、フラボノイドなど様々な化合物に含まれる

生物活性を持つ天然物の重要な構造単位

例:センツロロビン(抗リーシュマニア活性)、ジオスポンジンA(抗骨粗鬆症活性)


2: 既存のTHP合成法

カルベニウムイオンへの環化

環状ヘミケタールの還元  

ヘテロDiels-Alder環化付加

分子内オキサ-マイケル反応

分子間オキサ-マイケル反応は可逆性のため複雑な骨格構築に課題


3: 研究の目的

分子間オキサ-マイケル/マイケル反応を用いた新規THP合成法の開発

アリルアルコールとα,β-不飽和カルボニル化合物を用いたドミノ反応の設計

単一工程で3つの不斉中心を持つTHPの合成を目指す


方法

1: 反応設計

アリルアルコール1(求核性および求電子性)とアクリレート誘導体2を用いる

化合物2の芳香環による中間体エノラートの安定化を利用

化合物1の二量化を抑制し、オキサ-マイケル付加の可逆性を制御


2: モデル基質の選択

アリルアルコール1a: Baylis-Hillman反応で合成

メチル2-(4-ニトロフェニル)アクリレート2a: 強い電子求引性基を持つ

様々な塩基、溶媒、温度条件を検討


3: 反応条件の最適化

DBUを塩基として使用(4当量)

ジクロロメタンを溶媒として使用

70°Cで90分間、加圧チューブ内で反応


結果

1: 最適化された反応条件

アリルアルコール1a + メチル2-(4-ニトロフェニル)アクリレート2a

DBU (4当量), CH2Cl2, 70°C, 90分

目的のテトラヒドロピラン3aを89%収率で得た

X線結晶構造解析により立体化学を確認


2: 基質適用範囲の検討

様々な置換基を持つアリルアルコール1a-kを使用

電子豊富および電子不足なベンゼン環、ヘテロ芳香環に適用可能

収率35-89%で目的のTHP 3a-kを合成


3: 反応の限界

シアノ基含有アリルアルコール1lでは目的物3l不成功

脂肪族アリルアルコール1mでは目的物3m不成功

化合物2aの4-ニトロフェニル基が重要、他のアクリレートでは反応進行せず


考察

1: 反応機構の提案

DBUによるアルコキシドAの形成

オキサ-マイケル付加によるエノラートBの生成

エノラートBとプロトン化体C'の平衡

分子内6-endo-Michael付加による中間体Cの形成

プロトン化によるTHP 3aの生成


2: 高立体選択性の要因

エノラートB'の形成は不利(エステル基と酸素原子の反発)

エステル基がエカトリアル位にあるBが有利


3: 4-ニトロフェニル基の重要性

エノラートBの安定化に寄与

オキサ-マイケル付加の可逆性を制御

プロトン化-脱プロトン化平衡の効率化


4: 研究の意義

新規THP合成法の開発に成功

3つの不斉中心を一挙に構築可能

オキサ-マイケル反応の応用範囲拡大


結論

高立体選択的な分子間オキサ-マイケル/マイケル段階的付加環化反応を開発

Baylis-Hillman由来アリルアルコールと4-ニトロフェニルアクリレートを利用

3つの不斉中心を持つTHPの効率的合成法を確立

オキサ-マイケル反応の新たな合成的応用を示した

11種類のTHP誘導体の合成に成功し、手法の汎用性を実証


将来の展望

基質適用範囲の拡大

反応機構のさらなる解明

グリーンケミストリーの観点からの最適化

大規模合成への適用

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