論文のタイトル: Synthesis of tetrahydropyrans via an intermolecular oxa-michael/michael stepwise cycloaddition(テトラヒドロピランの合成: 分子間オキサ-マイケル/マイケル段階的付加環化反応による新手法)
著者: Ricardo A. Gutiérrez-Márquez, Jazmín García-Ramírez, Ana L. Silva, Luis D. Miranda
出版: Tetrahedron Letters
巻: 147, 155215
出版年: 2024年
背景
1: テトラヒドロピランの重要性
テトラヒドロピラン(THP)は自然界に広く存在する含酸素複素環
糖類、クロメン類、フラボノイドなど様々な化合物に含まれる
生物活性を持つ天然物の重要な構造単位
例:センツロロビン(抗リーシュマニア活性)、ジオスポンジンA(抗骨粗鬆症活性)
2: 既存のTHP合成法
カルベニウムイオンへの環化
環状ヘミケタールの還元
ヘテロDiels-Alder環化付加
分子内オキサ-マイケル反応
分子間オキサ-マイケル反応は可逆性のため複雑な骨格構築に課題
3: 研究の目的
分子間オキサ-マイケル/マイケル反応を用いた新規THP合成法の開発
アリルアルコールとα,β-不飽和カルボニル化合物を用いたドミノ反応の設計
単一工程で3つの不斉中心を持つTHPの合成を目指す
方法
1: 反応設計
アリルアルコール1(求核性および求電子性)とアクリレート誘導体2を用いる
化合物2の芳香環による中間体エノラートの安定化を利用
化合物1の二量化を抑制し、オキサ-マイケル付加の可逆性を制御
2: モデル基質の選択
アリルアルコール1a: Baylis-Hillman反応で合成
メチル2-(4-ニトロフェニル)アクリレート2a: 強い電子求引性基を持つ
様々な塩基、溶媒、温度条件を検討
3: 反応条件の最適化
DBUを塩基として使用(4当量)
ジクロロメタンを溶媒として使用
70°Cで90分間、加圧チューブ内で反応
結果
1: 最適化された反応条件
アリルアルコール1a + メチル2-(4-ニトロフェニル)アクリレート2a
DBU (4当量), CH2Cl2, 70°C, 90分
目的のテトラヒドロピラン3aを89%収率で得た
X線結晶構造解析により立体化学を確認
2: 基質適用範囲の検討
様々な置換基を持つアリルアルコール1a-kを使用
電子豊富および電子不足なベンゼン環、ヘテロ芳香環に適用可能
収率35-89%で目的のTHP 3a-kを合成
3: 反応の限界
シアノ基含有アリルアルコール1lでは目的物3l不成功
脂肪族アリルアルコール1mでは目的物3m不成功
化合物2aの4-ニトロフェニル基が重要、他のアクリレートでは反応進行せず
考察
1: 反応機構の提案
DBUによるアルコキシドAの形成
オキサ-マイケル付加によるエノラートBの生成
エノラートBとプロトン化体C'の平衡
分子内6-endo-Michael付加による中間体Cの形成
プロトン化によるTHP 3aの生成
2: 高立体選択性の要因
エノラートB'の形成は不利(エステル基と酸素原子の反発)
エステル基がエカトリアル位にあるBが有利
3: 4-ニトロフェニル基の重要性
エノラートBの安定化に寄与
オキサ-マイケル付加の可逆性を制御
プロトン化-脱プロトン化平衡の効率化
4: 研究の意義
新規THP合成法の開発に成功
3つの不斉中心を一挙に構築可能
オキサ-マイケル反応の応用範囲拡大
結論
高立体選択的な分子間オキサ-マイケル/マイケル段階的付加環化反応を開発
Baylis-Hillman由来アリルアルコールと4-ニトロフェニルアクリレートを利用
3つの不斉中心を持つTHPの効率的合成法を確立
オキサ-マイケル反応の新たな合成的応用を示した
11種類のTHP誘導体の合成に成功し、手法の汎用性を実証
将来の展望
基質適用範囲の拡大
反応機構のさらなる解明
グリーンケミストリーの観点からの最適化
大規模合成への適用
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