2024年8月29日木曜日

Catch Key Points of a Paper ~0111~

論文のタイトル: Homogeneous organic reductant based on 4,4′-tBu2-2,2′-bipyridine for cross-electrophile coupling

著者: David J. Charboneau, Haotian Huang, Emily L. Barth, Anthony P. Deziel, Cameron C. Germe, Nilay Hazari, Xiaofan Jia, Seoyeon Kim, Sheikh Nahiyan, Leonardo Birriel–Rodriguez, Mycah R. Uehling

出版: Tetrahedron Letters

巻: 145, 155159

出版年: 2024


背景

1: 研究背景

Ni触媒交差求電子剤カップリング(XEC)反応は重要なC-C結合形成法

XEC反応には外部電子源が必要

一般的に不均一系還元剤(Mn0, Zn0)が使用される

不均一系還元剤には大規模反応での再現性の課題がある


2: 均一系還元剤の課題

均一系還元剤は原理的に大小規模反応に適している

しかし、合成、安定性、コストに課題がある  

最も一般的な均一系還元剤TDAEは高価で空気に敏感

新しい実用的な均一系還元剤の開発が求められている


3: 研究目的

新しい均一系還元剤tBu-OED4の開発  

tBu-OED4の合成と物性評価

Ni/Co触媒XEC反応におけるtBu-OED4の有用性実証

幅広い基質に適用可能な還元剤の開発


方法

1: tBu-OED4の合成

市販の4,4′-tBu2-2,2′-ビピリジンから2段階で合成

1段階目:1,4-ジヨードブタンによるアルキル化 

2段階目:Mg0による還元

クロマトグラフィー精製不要、7gスケールで合成可能


2: tBu-OED4の特性評価

1H NMR、13C NMR、UV-Vis分光法による構造解析

サイクリックボルタンメトリーによる還元電位測定

溶解性試験による各種有機溶媒への溶解性評価


3: XEC反応への応用

Ni/Co二元触媒系でのアリールハライドとアルキルハライドのカップリング

基質適用範囲の検討:電子供与性/求引性置換基、立体障害、官能基許容性

医薬品中間体への適用


結果

1: tBu-OED4の合成と物性

2段階合成、総収率76%  

還元電位: -1.33 V vs Fc/Fc

ペンタン、ベンゼン、THF、DMFに可溶

空気に敏感、不活性雰囲気下での取り扱いが必要


2: XEC反応への適用

2-ブロモトルエンと1-ブロモ-3-フェニルプロパンのカップリング:87%収率

電子供与性/求引性置換基を持つ芳香族基質に適用可能

立体障害の大きな2,6-置換アリールハライドにも対応


3: 官能基許容性と複雑分子への適用

ピナコールボラン、アルコール、アリールクロライド、エステルに対応

ヘテロ環化合物(ピリジン、ベンゾチオフェン)にも適用可能

医薬品開発中間体との反応:71%収率で目的物を単離


考察

1: tBu-OED4の特徴

DMAP-OED3(-1.69 V)より弱い還元力

幅広い基質に適用可能な還元電位

固体で取り扱い可能、TDAEより実用的


2: XEC反応における利点

均一系のため反応再現性が高い

非アミド系溶媒での反応が可能

立体障害の大きな基質にも対応


3: 従来の還元剤との比較

TDAEと同等以上の収率

より安価な原料から合成可能

固体のため取り扱いが容易


4: 研究の限界点

空気に敏感、不活性雰囲気下での取り扱いが必要

反応後のtBu-OED4の動向が未解明

リサイクル可能性の検討が今後の課題


結論

新規均一系還元剤tBu-OED4の開発に成功

Ni/Co触媒XEC反応への有用性を実証

幅広い基質適用範囲と高い官能基許容性を確認


将来の展望

2,2′-ビピリジン骨格の修飾による還元電位制御

均一系還元剤の実用化

0 件のコメント:

コメントを投稿