2024年8月18日日曜日

Catch Key Points of a Paper ~0101~

論文のタイトル: Efficient Conversion of Light to Chemical Energy: Directional, Chiral Photoswitches with Very High Quantum Yields(効率的な光エネルギーの化学エネルギーへの変換: 方向性を持つキラルな光スイッチの非常に高い量子収率)

著者: Widukind Moormann, Tobias Tellkamp, Eduard Stadler, Fynn Rçhricht, Christian Näther, Rakesh Puttreddy, Kari Rissanen, Georg Gescheidt, and Rainer Herges*

出版: Angewandte Chemie International Edition 

巻: 59, 15081-15086

出版年: 2020年 


背景

1: 光スイッチの応用と課題

光スイッチは光エネルギー変換、分子モーター、ポンプなどに利用

実用化には光から化学エネルギーへの高効率変換が重要

力を環境に伝達するための剛直な構造が必要

異性化時の方向性のある動きが求められる


2: 既存の光スイッチシステム

アゾベンゼンは最もよく使われる人工光スイッチ

生体システムのロドプシンは64-67%の高い量子収率を持つ

人工システムは高い変換率と耐久性を示すが、エネルギー変換効率が不十分


3: 研究の目的

アゾベンゼンの性能を系統的に改善する

可視光での変換、高い量子収率、高いひずみエネルギーを目指す

方向性のある分子運動と剛直な構造を持つ光スイッチの開発


方法

1: 分子設計戦略

ジアゾシンにさらに架橋を導入

立体中心を2つ導入し、メソ化合物とラセミ体を得る

環ひずみを利用した設計アプローチ


2: 合成方法

市販の4-ニトロインダンから2段階で合成

メソ化合物3とラセミ体4を高収率で得る

X線結晶構造解析で分子構造を確認


3: 光物理的特性の評価

UV-Visスペクトル測定による異性化の追跡

NMR実験による半減期と光定常状態の決定

量子収率の測定

長期照射実験による光安定性の確認


結果

1: 合成と構造

メソ化合物3の収率53%、ラセミ体4の収率70%

X線構造解析でm-c-ff形の3とr-t-ff形の4の異なる分子構造を確認


2: 光物理的特性

メソ化合物3の熱緩和半減期: 3秒 (室温に外挿)

ラセミ体4の熱緩和半減期: 117時間 (300 K)

高い光定常状態転換率: 76-99%


3: 量子収率と安定性

非常に高い量子収率: 70-90% (ロドプシンを上回る)

5000サイクル以上の照射で劣化なし

メソ化合物3は18.5 kcal/molの高いひずみエネルギーを生成


考察

1: 構造と性能の関係

架橋導入により配座の自由度を制限

方向性のあるピンセット型の分子運動を実現

高いひずみエネルギーと高い量子収率を両立


2: エネルギー変換効率

メソ化合物3の光→化学エネルギー変換効率: 18%

アゾベンゼン(1.4%)やジアゾシン(7.6%)を大きく上回る


3: 応用可能性

メソ化合物3: 分子機械の駆動に理想的なアクチュエーター

ラセミ体4: 最小のキラル光スイッチ、キラル液晶制御に適する


4: 研究の限界

熱安定性の違いによる用途の制限

さらなる長期安定性の検証が必要


結論

新規ジインダンジアゾシンの開発に成功

非常に高い量子収率とエネルギー変換効率を実現

方向性のある分子運動と高いひずみエネルギーを両立


将来の展望

分子機械や光制御材料への応用が期待される

0 件のコメント:

コメントを投稿