論文のタイトル: Efficient Conversion of Light to Chemical Energy: Directional, Chiral Photoswitches with Very High Quantum Yields(効率的な光エネルギーの化学エネルギーへの変換: 方向性を持つキラルな光スイッチの非常に高い量子収率)
著者: Widukind Moormann, Tobias Tellkamp, Eduard Stadler, Fynn Rçhricht, Christian Näther, Rakesh Puttreddy, Kari Rissanen, Georg Gescheidt, and Rainer Herges*
出版: Angewandte Chemie International Edition
巻: 59, 15081-15086
出版年: 2020年
背景
1: 光スイッチの応用と課題
光スイッチは光エネルギー変換、分子モーター、ポンプなどに利用
実用化には光から化学エネルギーへの高効率変換が重要
力を環境に伝達するための剛直な構造が必要
異性化時の方向性のある動きが求められる
2: 既存の光スイッチシステム
アゾベンゼンは最もよく使われる人工光スイッチ
生体システムのロドプシンは64-67%の高い量子収率を持つ
人工システムは高い変換率と耐久性を示すが、エネルギー変換効率が不十分
3: 研究の目的
アゾベンゼンの性能を系統的に改善する
可視光での変換、高い量子収率、高いひずみエネルギーを目指す
方向性のある分子運動と剛直な構造を持つ光スイッチの開発
方法
1: 分子設計戦略
ジアゾシンにさらに架橋を導入
立体中心を2つ導入し、メソ化合物とラセミ体を得る
環ひずみを利用した設計アプローチ
2: 合成方法
市販の4-ニトロインダンから2段階で合成
メソ化合物3とラセミ体4を高収率で得る
X線結晶構造解析で分子構造を確認
3: 光物理的特性の評価
UV-Visスペクトル測定による異性化の追跡
NMR実験による半減期と光定常状態の決定
量子収率の測定
長期照射実験による光安定性の確認
結果
1: 合成と構造
メソ化合物3の収率53%、ラセミ体4の収率70%
X線構造解析でm-c-ff形の3とr-t-ff形の4の異なる分子構造を確認
2: 光物理的特性
メソ化合物3の熱緩和半減期: 3秒 (室温に外挿)
ラセミ体4の熱緩和半減期: 117時間 (300 K)
高い光定常状態転換率: 76-99%
3: 量子収率と安定性
非常に高い量子収率: 70-90% (ロドプシンを上回る)
5000サイクル以上の照射で劣化なし
メソ化合物3は18.5 kcal/molの高いひずみエネルギーを生成
考察
1: 構造と性能の関係
架橋導入により配座の自由度を制限
方向性のあるピンセット型の分子運動を実現
高いひずみエネルギーと高い量子収率を両立
2: エネルギー変換効率
メソ化合物3の光→化学エネルギー変換効率: 18%
アゾベンゼン(1.4%)やジアゾシン(7.6%)を大きく上回る
3: 応用可能性
メソ化合物3: 分子機械の駆動に理想的なアクチュエーター
ラセミ体4: 最小のキラル光スイッチ、キラル液晶制御に適する
4: 研究の限界
熱安定性の違いによる用途の制限
さらなる長期安定性の検証が必要
結論
新規ジインダンジアゾシンの開発に成功
非常に高い量子収率とエネルギー変換効率を実現
方向性のある分子運動と高いひずみエネルギーを両立
将来の展望
分子機械や光制御材料への応用が期待される
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