論文のタイトル: Synthesis and biological evaluation of vioprolide B and its dehydrobutyrine-glycine analogue(ビオプロリドBとその脱水ブチリン-グリシンアナログの合成と生物学的評価)
著者: Noé Osorio Reineke, Franziska A. V. Elsen, Hanusch A. Grab, Dietrich Mostert, Stephan A. Sieber, Thorsten Bach*
出版: Chemical Communications
巻: 60, 8272-8275
背景
1: 研究の背景
ビオプロリドは生物活性を持つデプシペプチド化合物
マイコバクテリアCystobacter violaceusから単離された
E-デヒドロブチリンを含む特徴的な構造を持つ
抗がん活性などの生物活性が報告されている
2: 未解決の問題点
ビオプロリドの生物活性メカニズムが不明
E-デヒドロブチリン部位の役割が解明されていない
標的タンパク質が特定されていない
構造活性相関の詳細な研究が必要
3: 研究の目的
ビオプロリドBの全合成を達成する
E-デヒドロブチリンをグリシンに置換した類縁体を合成
両化合物の生物活性を比較評価する
ビオプロリドBの標的タンパク質を同定する
方法
1: 化学合成
南側フラグメントと北側フラグメントの合成
ペプチドカップリングによる骨格の構築
マクロラクタム化によるデプシペプチド環の形成
チアゾリン環の構築と二重結合の異性化
2: 生物学的評価
MTTアッセイによる細胞毒性評価
Jurkat細胞を用いた代謝活性測定
IC50値の算出と比較
活性ベースタンパク質プロファイリング(ABPP)の実施
3: タンパク質標的の同定
ヨードアセトアミドアルキンプローブを使用
競合的ABPPによるタンパク質標的の探索
LC-MS/MSによるペプチド解析
標的タンパク質の同定と修飾部位の特定
結果
1: 化合物の合成
ビオプロリドB(1)の全合成に成功
E-デヒドロブチリンをグリシンに置換した類縁体(2)の合成
NMRデータによる構造確認
高純度での化合物の単離
2: 細胞毒性評価
ビオプロリドB(1): IC50 = 123 nM (94-148 nM, 95% CI)
類縁体(2): IC50 > 10 μM
E-デヒドロブチリン部位が活性に必須であることが判明
合成品の活性が天然物と同等であることを確認
3: タンパク質標的の同定
伸長因子1-アルファ1 (eEF1A1)を主要な標的として同定
クロマチン組立因子1サブユニットα (CHAF1A)も標的として発見
eEF1A1のCys31とCHAF1AのCys79が修飾部位
両タンパク質は細胞生存に不可欠な役割を持つ
考察
1: E-デヒドロブチリンの重要性
E-デヒドロブチリン部位が活性に必須であることを初めて実証
マイケルアクセプターとしての役割を示唆
構造の複雑性だけでは活性発現に不十分
2: 標的タンパク質の機能
eEF1A1: タンパク質合成におけるアミノアシルtRNAの輸送を担う
CHAF1A: DNAの複製と修復に関与するクロマチン組立因子
どちらも細胞の生存と増殖に重要な役割を果たす
3: 作用メカニズムの考察
ビオプロリドBがシステイン残基と共有結合を形成
標的タンパク質の機能を阻害することで細胞毒性を示す
選択的な共有結合修飾が活性の鍵となる可能性
4: 研究の限界点
in vitroでの評価に限定されている
長期的な影響や副作用の評価が行われていない
他の潜在的な標的タンパク質の可能性を排除できない
結論
ビオプロリドBの全合成と類縁体合成に成功
E-デヒドロブチリン部位の重要性を実証
eEF1A1とCHAF1Aを主要な標的タンパク質として同定
天然物の複雑な構造と標的共有結合修飾の重要性を示唆
将来の展望
今後の創薬研究への応用可能性
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