2024年8月24日土曜日

Catch Key Points of a Paper ~0106~

論文のタイトル: Synthesis and biological evaluation of vioprolide B and its dehydrobutyrine-glycine analogue(ビオプロリドBとその脱水ブチリン-グリシンアナログの合成と生物学的評価)

著者: Noé Osorio Reineke,   Franziska A. V. Elsen, Hanusch A. Grab, Dietrich Mostert, Stephan A. Sieber, Thorsten Bach*

出版: Chemical Communications

巻: 60, 8272-8275

出版年: 2024


背景

1: 研究の背景

ビオプロリドは生物活性を持つデプシペプチド化合物

マイコバクテリアCystobacter violaceusから単離された

E-デヒドロブチリンを含む特徴的な構造を持つ

抗がん活性などの生物活性が報告されている


2: 未解決の問題点

ビオプロリドの生物活性メカニズムが不明

E-デヒドロブチリン部位の役割が解明されていない

標的タンパク質が特定されていない

構造活性相関の詳細な研究が必要


3: 研究の目的

ビオプロリドBの全合成を達成する

E-デヒドロブチリンをグリシンに置換した類縁体を合成

両化合物の生物活性を比較評価する

ビオプロリドBの標的タンパク質を同定する


方法

1: 化学合成

南側フラグメントと北側フラグメントの合成

ペプチドカップリングによる骨格の構築

マクロラクタム化によるデプシペプチド環の形成

チアゾリン環の構築と二重結合の異性化


2: 生物学的評価

MTTアッセイによる細胞毒性評価

Jurkat細胞を用いた代謝活性測定

IC50値の算出と比較

活性ベースタンパク質プロファイリング(ABPP)の実施


3: タンパク質標的の同定

ヨードアセトアミドアルキンプローブを使用

競合的ABPPによるタンパク質標的の探索

LC-MS/MSによるペプチド解析

標的タンパク質の同定と修飾部位の特定


結果

1: 化合物の合成

ビオプロリドB(1)の全合成に成功

E-デヒドロブチリンをグリシンに置換した類縁体(2)の合成

NMRデータによる構造確認

高純度での化合物の単離


2: 細胞毒性評価

ビオプロリドB(1): IC50 = 123 nM (94-148 nM, 95% CI)

類縁体(2): IC50 > 10 μM

E-デヒドロブチリン部位が活性に必須であることが判明

合成品の活性が天然物と同等であることを確認


3: タンパク質標的の同定

伸長因子1-アルファ1 (eEF1A1)を主要な標的として同定

クロマチン組立因子1サブユニットα (CHAF1A)も標的として発見

eEF1A1のCys31とCHAF1AのCys79が修飾部位

両タンパク質は細胞生存に不可欠な役割を持つ


考察

1: E-デヒドロブチリンの重要性

E-デヒドロブチリン部位が活性に必須であることを初めて実証

マイケルアクセプターとしての役割を示唆

構造の複雑性だけでは活性発現に不十分


2: 標的タンパク質の機能

eEF1A1: タンパク質合成におけるアミノアシルtRNAの輸送を担う

CHAF1A: DNAの複製と修復に関与するクロマチン組立因子

どちらも細胞の生存と増殖に重要な役割を果たす


3: 作用メカニズムの考察

ビオプロリドBがシステイン残基と共有結合を形成

標的タンパク質の機能を阻害することで細胞毒性を示す

選択的な共有結合修飾が活性の鍵となる可能性


4: 研究の限界点

in vitroでの評価に限定されている

長期的な影響や副作用の評価が行われていない

他の潜在的な標的タンパク質の可能性を排除できない


結論

ビオプロリドBの全合成と類縁体合成に成功

E-デヒドロブチリン部位の重要性を実証

eEF1A1とCHAF1Aを主要な標的タンパク質として同定

天然物の複雑な構造と標的共有結合修飾の重要性を示唆


将来の展望

今後の創薬研究への応用可能性

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