2024年8月25日日曜日

Catch Key Points of a Paper ~0107~

論文のタイトル: Synthesis of zirconium(iv) and hafnium(iv) isopropoxide, sec-butoxide and tert-butoxide(ジルコニウム(IV)およびハフニウム(IV)イソプロポキシド、sec-ブトキシドおよびtert-ブトキシドの合成)

著者: Evert Dhaene, Carlotta Seno and Jonathan De Roo*

出版: Dalton Transactions

巻: 53, 11769-11777

出版年: 2024


背景

1: 研究背景

ジルコニウムとハフニウムのアルコキシドは材料生産に重要

特に(ドープされた)酸化物ナノ結晶の合成に使用される

ZrO2やHfO2ナノ結晶の合成例が報告されている


2: 問題点

市販の前駆体は供給元や製造バッチによって品質にばらつきがある

色や純度に問題があることがある(黄色〜茶色、濁りなど)

再結晶や真空蒸留による精製が推奨される

特殊化学品は入手に時間がかかることがある


3: 研究目的

高品質な前駆体を研究室で合成する方法の確立

市販されていない前駆体(ジルコニウムsec-ブトキシドなど)の合成

過去の合成方法を見直し、最適化された合成プロトコルの提供

無水条件下での合成と保存が必要


方法

1: 合成方法の概要

全ての操作は厳密な無水条件下で実施

窒素またはアルゴン雰囲気下でのシュレンク技術とグローブボックス技術を使用

高純度の出発物質と無水溶媒を使用

分子ふるいで残留水分を除去(1 ppm未満)


2: Zr(OiPr)4iPrOHの合成

ZrCl4からの合成:2つの方法を比較

 1) イソプロパノール中のアンモニア溶液を使用

 2) ガス状アンモニアを使用

塩化アンモニウムの濾過除去

トルエン/イソプロパノール混合物からの再結晶


3: その他の化合物の合成

M(NEt2)4 (M = Zr, Hf):金属塩化物とリチウムジエチルアミドから合成

M(OtBu)4 (M = Zr, Hf):M(NEt2)4とtert-ブタノールから合成

Zr(OsBu)4:Zr(NEt2)4と2-ブタノールから合成

各化合物は真空蒸留で精製


結果

1: Zr(OiPr)4iPrOHの合成結果

白色結晶性固体として得られた(収率65%)

1H NMRと13C NMRで構造を確認

単結晶X線回折で既報の構造と一致することを確認

残留塩化物は検出限界以下(<0.85%)


2: M(NEt2)4とM(OtBu)4の合成結果

M(NEt2)4:無色透明の液体として得られた(収率67-76%)

M(OtBu)4:無色透明の液体として得られた(収率46-71%)

NMRスペクトルで構造を確認

残留塩化物は検出限界以下


3: Zr(OsBu)4の合成結果

無色透明だが非常に粘性の高い液体として得られた(収率57%)

NMRスペクトルで構造を確認

TOPOとの相互作用を調べ、構造の均一性を確認


考察

1: 合成方法の比較

アンモニア溶液法とガス状アンモニア法の利点と欠点

ガス状アンモニア法:より汎用性が高く、工程が少ない

アンモニア溶液法:取り扱いが容易だが、適用可能なアルコールが限られる


2: 前駆体の品質評価

TOPOを用いたNMR分析で化学量論と純度を確認可能

31P NMRで不純物(例:ZrCl(OR)3(TOPO)2)を検出可能

市販品と比較して高純度の前駆体を得られることを確認


3: M(NEt2)4の有用性

様々なアルコキシドの合成に利用可能

加水分解の問題を回避できる

市販されていない前駆体の合成に特に有用


4: 研究の限界

一部の化合物(例:Zr(OsBu)4)は非常に粘性が高く、取り扱いが難しい

大規模合成への適用性は検討されていない

長期保存安定性に関するデータが不足


結論

ジルコニウムとハフニウムのアルコキシド合成の最適化に成功

高純度前駆体の研究室レベルでの合成方法を確立

市販されていない前駆体(Zr(OsBu)4など)の合成も可能に


将来の展望

大規模合成への適用、長期安定性の評価

材料科学分野での応用研究の促進が期待される

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