論文のタイトル: Guanidinium 5,5'-Azotetrazolate: A Colorful Chameleon for Halogen-Free Smoke Signals
著者: Teresa Küblböck, Gaspard Angé, Greta Bikelytė, Jiřina Pokorná, Radovan Skácel, Thomas M. Klapötke*
出版: Angewandte Chemie International Edition
巻: 59, 12326-12330.
出版年: 2020年
背景
1: 研究の背景
カラースモークは昼間の花火や写真撮影、ファッションショーで人気
一般の人々も使用するため、安全性と環境への影響が重要
軍事利用では地上-地上、地上-空中の通信手段として使用
環境・健康への影響を減らした「次世代火工品」の必要性
2: 既存の煙信号の問題点
従来の煙信号は有機染料、硫黄、塩素酸カリウムなどで構成
硫黄の燃焼で有害なSO2が生成
塩素酸カリウムは反応性が高く、自然発火の危険性
塩素酸塩と有機物の組み合わせで発がん性物質が生成
3: 研究の目的
ハロゲンフリーの多色煙信号システムの開発
窒素含有量の高いグアニジニウム5,5'-アゾテトラゾラート(GZT)の活用
安全性が高く、環境への影響が少ない煙信号の実現
方法
1: 研究アプローチ
GZTと各種染料を組み合わせた2成分系煙混合物の開発
白、赤、紫、黄、緑、青の煙色を目指す
従来の塩素酸塩ベースの配合との性能比較
2: GZTの特性評価
エネルギー特性の評価(感度、分解温度など)
白煙生成能力の検証
燃焼時間、燃焼速度の測定
3: カラースモークの評価
GZTと染料の最適な配合比の決定(85% GZT + 15% 染料)
燃焼特性(燃焼時間、燃焼速度)の測定
煙の質(エアロゾル質量、収率因子、染料移行率)の評価
結果
1: GZTの特性
分解温度: 239°C
衝撃感度: 35 J(非感度)
白煙生成: 654 mg エアロゾル, 32% 収率因子
2: カラースモークの性能
燃焼時間: 24-29秒 (従来品: 13-21秒)
収率因子: 35-38% (従来品: 32-36%)
エアロゾル質量: 715-783 mg (従来品: 642-729 mg)
3: 染料移行率
GZTシステム: 55-56%
従来品: 73-86%
GZTシステムは染料含有量が半分(15%)であることに注意
考察
1: GZTシステムの利点
ハロゲンフリーで環境への影響が少ない
高い分解温度と非感度性により安全性が向上
単一成分で使用可能で製造プロセスが簡略化
2: 性能比較
収率因子とエアロゾル質量は従来品と同等
燃焼時間が長く、よりゆっくりとした煙の生成
染料移行率はやや低いが、染料含有量の差を考慮する必要あり
結論
GZTを用いたハロゲンフリーの多色煙信号システムの開発に成功
従来品と同等の性能を保ちつつ、安全性と環境への配慮を実現
火工品の新しい研究領域を開拓し、より安全で持続可能な煙信号の可能性を示した
将来の展望
染料含有量の増加による色彩の改善
他の窒素含有量の高い化合物の探索
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