論文のタイトル: Simultaneous Stereoinvertive and Stereoselective C(sp3)−C(sp3) Cross-Coupling of Boronic Esters and Allylic Carbonates(ボロン酸エステルとアリルカーボネートの同時立体反転および立体選択的C(sp3)-C(sp3)クロスカップリング)
著者: Hong-Cheng Shen, Ze-Shu Wang, Adam Noble, Varinder K. Aggarwal
出版: Journal of the American Chemical Society
巻: 146, 20, 13719–13726
背景
1: 研究背景
C(sp3)-C(sp3)結合形成の重要性が増加
医薬品開発において3次元構造の重要性が認識
C(sp3)-C(sp3)結合形成は従来のC(sp2)-C(sp2)結合形成より困難
立体制御の課題が存在
2: 既存の手法と課題
立体特異的クロスカップリング
立体選択的クロスカップリング
隣接する不斉中心の構築が特に困難
二重触媒系による全ての立体異性体の合成が可能だが、制限あり
3: 本研究の目的
立体特異的反応と立体選択的反応の組み合わせ
エナンチオマ純度の高い求核剤とラセミ電解質の同時反応
すべての可能な立体異性体の合成を目指す
ボロン酸エステルとπ-アリルイリジウム錯体の利用
方法
1: 反応設計
エナンチオ濃縮ボロン酸エステルの使用
ラセミアリルカーボネートとの反応
イリジウム触媒による立体制御
同時立体反転および立体選択的(SimSS)プロセスの開発
2: 最適化条件
フェニルリチウム試薬による四配位ボロネート錯体の形成
[Ir(cod)Cl]2触媒とホスホラミダイト配位子L1の使用
溶媒としてジクロロメタンを使用
室温での反応
3: 基質適用範囲の検討
様々な置換基を持つアリルカーボネートの使用
異なる電子的性質を持つベンジルボロン酸エステルの検討
第一級および第三級ボロン酸エステルへの適用
キラルプロリン由来ボロン酸エステルの使用
結果
1: 最適化結果
ビス(トリフルオロメチル)フェニルリチウムが最も効果的
90%の単離収率、>99% ee、95:5 dr、98:2 b:lを達成
フェニルリチウムも同様の結果を示し、商業的入手可能性から選択
2: 基質適用範囲
電子豊富および電子不足アリルカーボネートで高選択性を維持
オルト置換およびメタ置換アリルカーボネートも適用可能
ヘテロ芳香族置換基(チオフェン、インドール)も許容
アルキニル置換アリルカーボネートも高選択性で反応
3: ボロン酸エステルの多様性
第一級、第二級、第三級ボロン酸エステルが適用可能
電子的性質の異なるベンジルボロン酸エステルで高選択性
キラルプロリン由来ボロン酸エステルも高選択性で反応
グラムスケールでの反応も可能
考察
1: 反応機構の考察
π-アリルイリジウム中間体の形成
四配位ボロネート錯体との外圏的反応
立体反転を伴うC-C結合形成
単電子移動(SET)過程による立体選択性の僅かな低下
2: 立体選択性の起源
イリジウム触媒による高度な立体制御
ボロン酸エステルの立体特異的反応
アリルカーボネートのキネティック分割
マッチド/ミスマッチド効果が観察されない特徴
3: 方法論の利点
すべての立体異性体の合成が可能
高度な官能基許容性
グラムスケールでの適用可能性
ワンポット合成への展開
4: 限界点と今後の課題
非ベンジル系二級ボロン酸エステルでの収率低下
一部の基質での線形異性体の生成
反応機構のさらなる解明が必要
より幅広い基質への適用拡大
結論
同時立体反転および立体選択的C(sp3)-C(sp3)クロスカップリングの開発
高度な立体制御による隣接する不斉中心の構築
将来の展望
医薬品開発や材料科学への応用
新たな不斉合成手法としての展開
さらなる反応開発と応用研究
0 件のコメント:
コメントを投稿