2024年8月28日水曜日

Catch Key Points of a Paper ~0110~

論文のタイトル: Simultaneous Stereoinvertive and Stereoselective C(sp3)−C(sp3) Cross-Coupling of Boronic Esters and Allylic Carbonates(ボロン酸エステルとアリルカーボネートの同時立体反転および立体選択的C(sp3)-C(sp3)クロスカップリング)

著者: Hong-Cheng Shen, Ze-Shu Wang, Adam Noble, Varinder K. Aggarwal

出版: Journal of the American Chemical Society

巻: 146, 20, 13719–13726

出版年: 2024


背景

1: 研究背景

C(sp3)-C(sp3)結合形成の重要性が増加

医薬品開発において3次元構造の重要性が認識

C(sp3)-C(sp3)結合形成は従来のC(sp2)-C(sp2)結合形成より困難

立体制御の課題が存在


2: 既存の手法と課題

立体特異的クロスカップリング

立体選択的クロスカップリング

隣接する不斉中心の構築が特に困難

二重触媒系による全ての立体異性体の合成が可能だが、制限あり


3: 本研究の目的

立体特異的反応と立体選択的反応の組み合わせ

エナンチオマ純度の高い求核剤とラセミ電解質の同時反応

すべての可能な立体異性体の合成を目指す

ボロン酸エステルとπ-アリルイリジウム錯体の利用


方法

1: 反応設計

エナンチオ濃縮ボロン酸エステルの使用

ラセミアリルカーボネートとの反応

イリジウム触媒による立体制御

同時立体反転および立体選択的(SimSS)プロセスの開発


2: 最適化条件

フェニルリチウム試薬による四配位ボロネート錯体の形成

[Ir(cod)Cl]2触媒とホスホラミダイト配位子L1の使用

溶媒としてジクロロメタンを使用

室温での反応


3: 基質適用範囲の検討

様々な置換基を持つアリルカーボネートの使用

異なる電子的性質を持つベンジルボロン酸エステルの検討

第一級および第三級ボロン酸エステルへの適用

キラルプロリン由来ボロン酸エステルの使用


結果

1: 最適化結果

ビス(トリフルオロメチル)フェニルリチウムが最も効果的

90%の単離収率、>99% ee、95:5 dr、98:2 b:lを達成

フェニルリチウムも同様の結果を示し、商業的入手可能性から選択


2: 基質適用範囲

電子豊富および電子不足アリルカーボネートで高選択性を維持

オルト置換およびメタ置換アリルカーボネートも適用可能

ヘテロ芳香族置換基(チオフェン、インドール)も許容

アルキニル置換アリルカーボネートも高選択性で反応


3: ボロン酸エステルの多様性

第一級、第二級、第三級ボロン酸エステルが適用可能

電子的性質の異なるベンジルボロン酸エステルで高選択性

キラルプロリン由来ボロン酸エステルも高選択性で反応

グラムスケールでの反応も可能


考察

1: 反応機構の考察

π-アリルイリジウム中間体の形成

四配位ボロネート錯体との外圏的反応

立体反転を伴うC-C結合形成

単電子移動(SET)過程による立体選択性の僅かな低下


2: 立体選択性の起源

イリジウム触媒による高度な立体制御

ボロン酸エステルの立体特異的反応

アリルカーボネートのキネティック分割

マッチド/ミスマッチド効果が観察されない特徴


3: 方法論の利点

すべての立体異性体の合成が可能

高度な官能基許容性

グラムスケールでの適用可能性

ワンポット合成への展開


4: 限界点と今後の課題

非ベンジル系二級ボロン酸エステルでの収率低下

一部の基質での線形異性体の生成

反応機構のさらなる解明が必要

より幅広い基質への適用拡大


結論

同時立体反転および立体選択的C(sp3)-C(sp3)クロスカップリングの開発

高度な立体制御による隣接する不斉中心の構築


将来の展望

医薬品開発や材料科学への応用

新たな不斉合成手法としての展開

さらなる反応開発と応用研究

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