2024年8月1日木曜日

Catch Key Points of a Paper ~0087~

論文のタイトル: Exploring a De Novo Route to Bradyrhizose: Synthesis and Isomeric Equilibrium of Bradyrhizose Diastereomers

著者: Vitor L. S. Cunha, George A. O'Doherty, Todd L. Lowary

雑誌: Chemistry - A European Journal

出版年: 2024年


背景

1: 研究背景

Bradyrhizobium sp.のLPSにD-bradyrhizoseが含まれる

D-bradyrhizoseは10炭糖の特殊な二環式単糖

窒素固定根粒形成に関与する可能性がある

免疫学的に不活性な特性を持つ


2: 既存の合成アプローチ

これまでに4つの合成戦略が報告されている

最短ルートで14-15ステップ、収率6-16%

すべてキラルプール化合物から出発している

立体異性体の合成は非効率的


3: 研究目的

アキラル前駆体からのde novo合成戦略の開発

D-bradyrhizoseと立体異性体の合成

立体化学が環形成に与える影響の解明

構造活性相関研究のための類縁体合成


方法

1: 合成戦略

アキラルケトエノールエステルから出発

Noyori不斉還元を鍵反応として使用

Achmatowicz転位を利用

ジアステレオ選択的アルケン酸化反応を実施


2: 主要な合成ステップ

二重Noyori不斉還元による立体中心の構築

パラジウム触媒によるグリコシル化反応

エポキシ化と開環による水酸基の導入

酸化還元による立体反転


3: 異性体分布の分析

合成した化合物の完全脱保護

D2O中での環状異性体分布をNMRで分析

D-bradyrhizoseとの分布比較

立体化学が分布に与える影響を考察


結果

1: 合成の主要結果

アキラル前駆体から3つの立体異性体を合成

2,4,9-エピ-、2,9-エピ-、9-エピ-D-bradyrhizoseを得た

パラジウム触媒グリコシル化を初めてジエノンに適用

ベンジリデンアセタールの除去が困難


2: 異性体分布の特徴

すべての異性体でトランスデカリン型が優先

2,4,9-エピ体は1,9-ピラノース形が主成分

2,9-エピ体と9-エピ体は1,5-ピラノース形が主成分

フラノース形は観察されなかった


3: 立体化学の影響

C-4の立体化学がシス/トランスデカリンを決定

C-2の立体化学がアノマー比に影響

C-9の立体化学がフラノース形成を阻害

1,3-ジアキシャル相互作用が分布に大きく影響


考察

1: 合成戦略の評価

アキラル前駆体からの合成は多様性に有利

Noyori不斉還元が効果的な立体制御法

パラジウム触媒グリコシル化の適用範囲拡大

ベンジリデンアセタールの安定性は予想外


2: 異性体分布の解釈

トランスデカリン構造の安定性を確認

1,3-ジアキシャル相互作用の重要性を示唆

フラノース形不在は立体的歪みによる可能性

D-bradyrhizoseの特異な分布の理由を説明


3: 構造活性相関への示唆

C-4の立体化学が生物活性に重要な可能性

C-2、C-9の修飾で活性調節の可能性

フラノース形を持たない類縁体の活性に興味


4: 研究の限界

D-bradyrhizose自体の合成は達成できていない

一部の反応で収率が低い

ベンジリデンアセタール除去の困難さ

生物活性評価は未実施


結論

de novo合成戦略によるD-bradyrhizose類縁体合成に成功

立体化学が異性体分布に与える影響を解明


将来の展望

D-bradyrhizoseの合成完了

合成した類縁体の生物活性評価が期待される

糖質化学と構造活性相関研究の進展に貢献

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