著者: Vitor L. S. Cunha, George A. O'Doherty, Todd L. Lowary
雑誌: Chemistry - A European Journal
出版年: 2024年
背景
1: 研究背景
Bradyrhizobium sp.のLPSにD-bradyrhizoseが含まれる
D-bradyrhizoseは10炭糖の特殊な二環式単糖
窒素固定根粒形成に関与する可能性がある
免疫学的に不活性な特性を持つ
2: 既存の合成アプローチ
これまでに4つの合成戦略が報告されている
最短ルートで14-15ステップ、収率6-16%
すべてキラルプール化合物から出発している
立体異性体の合成は非効率的
3: 研究目的
アキラル前駆体からのde novo合成戦略の開発
D-bradyrhizoseと立体異性体の合成
立体化学が環形成に与える影響の解明
構造活性相関研究のための類縁体合成
方法
1: 合成戦略
アキラルケトエノールエステルから出発
Noyori不斉還元を鍵反応として使用
Achmatowicz転位を利用
ジアステレオ選択的アルケン酸化反応を実施
2: 主要な合成ステップ
二重Noyori不斉還元による立体中心の構築
パラジウム触媒によるグリコシル化反応
エポキシ化と開環による水酸基の導入
酸化還元による立体反転
3: 異性体分布の分析
合成した化合物の完全脱保護
D2O中での環状異性体分布をNMRで分析
D-bradyrhizoseとの分布比較
立体化学が分布に与える影響を考察
結果
1: 合成の主要結果
アキラル前駆体から3つの立体異性体を合成
2,4,9-エピ-、2,9-エピ-、9-エピ-D-bradyrhizoseを得た
パラジウム触媒グリコシル化を初めてジエノンに適用
ベンジリデンアセタールの除去が困難
2: 異性体分布の特徴
すべての異性体でトランスデカリン型が優先
2,4,9-エピ体は1,9-ピラノース形が主成分
2,9-エピ体と9-エピ体は1,5-ピラノース形が主成分
フラノース形は観察されなかった
3: 立体化学の影響
C-4の立体化学がシス/トランスデカリンを決定
C-2の立体化学がアノマー比に影響
C-9の立体化学がフラノース形成を阻害
1,3-ジアキシャル相互作用が分布に大きく影響
考察
1: 合成戦略の評価
アキラル前駆体からの合成は多様性に有利
Noyori不斉還元が効果的な立体制御法
パラジウム触媒グリコシル化の適用範囲拡大
ベンジリデンアセタールの安定性は予想外
2: 異性体分布の解釈
トランスデカリン構造の安定性を確認
1,3-ジアキシャル相互作用の重要性を示唆
フラノース形不在は立体的歪みによる可能性
D-bradyrhizoseの特異な分布の理由を説明
3: 構造活性相関への示唆
C-4の立体化学が生物活性に重要な可能性
C-2、C-9の修飾で活性調節の可能性
フラノース形を持たない類縁体の活性に興味
4: 研究の限界
D-bradyrhizose自体の合成は達成できていない
一部の反応で収率が低い
ベンジリデンアセタール除去の困難さ
生物活性評価は未実施
結論
de novo合成戦略によるD-bradyrhizose類縁体合成に成功
立体化学が異性体分布に与える影響を解明
将来の展望
D-bradyrhizoseの合成完了
合成した類縁体の生物活性評価が期待される
糖質化学と構造活性相関研究の進展に貢献
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