論文のタイトル: Total Synthesis of Hypersampsone M
著者: Adrian E. Samkian, Scott C. Virgil,* and Brian M. Stoltz*
出版: Journal of the American Chemical Society
巻: 146, 18886−18891
出版年: 2024年
背景
1: 研究背景
PPAPsは多様な生理活性と構造を持つ天然物群
400以上のPPAP化合物が2018年までに単離されている
PPAPsはBPAPs、アダマンタン型、ホモアダマンタン型などに分類される
構造活性相関(SAR)が未確立で、小さな構造変化で活性が大きく変わる
2: 研究の課題
BPAPs合成は多数報告されているが、アダマンタン型PPAPsは3例のみ
ホモアダマンタン型PPAPsの全合成例は皆無
ホモアダマンタン型PPAPsは少なくとも70種類存在する
抗腫瘍、抗炎症、肝保護、抗脂肪細胞形成などの活性が報告されている
3: 研究目的
ホモアダマンタン型PPAPの代表的化合物Hypersampsone Mの全合成
新規合成戦略の開発
他のホモアダマンタン型PPAPs合成への応用可能性の探索
方法
1: 合成戦略
C4-シクロヘプタノン環を中心とした逆合成解析
後期段階でのClaisen縮合とC1位架橋頭ベンゾイル化を計画
シクロペンテン環形成を鍵反応として設定
2: 鍵中間体の合成
シクロヘキセノンから出発し、ラジカルHAT反応を利用
β-ケトエステルの形成とセレノキシド脱離を経て活性化エノン13を合成
1,1-ジメチルプロパルギル亜鉛試薬を用いたシクロペンテン環形成
3: 環拡大と官能基化
設計されたジアゾ酢酸エステルを用いた環拡大反応
プレニル化とトリメチルシリルエチルエステルの選択的脱炭酸
アルデヒド19の合成と続くカゴ型ラクトン21の形成
4: 最終段階の変換
ラクトン21のアニリド22への変換
Me3OBF4を用いたイミン23の形成
架橋頭位アシル化によるHypersampsone Mの合成
結果
1: 鍵中間体の合成
シクロヘキセノンから5段階でエノン13を73%収率で合成
シクロペンテン環形成は-40℃で6.3:1のジアステレオ選択性を達成
環拡大反応は79%収率で進行し、単一のジアステレオマーを生成
2: 環化と官能基化
カゴ型ラクトン21の形成は中程度の収率で進行
アニリド22への変換は2段階70%収率で達成
イミン23の形成は単一工程で進行
3: Hypersampsone Mの合成
架橋頭位アニオン形成は-35℃で40%の重水素取り込みを確認
最終的なアシル化は中程度の収率でHypersampsone Mを生成
全15工程でHypersampsone Mの初の全合成を達成
考察
1: 合成戦略の有効性
シクロペンテン環形成反応は高度に置換された5員環構築に有効
環拡大戦略により、所望のホモアダマンタン骨格の構築に成功
後期段階での予期せぬ変換が合成完了の鍵となった
2: 既存合成法との比較
BPAPs合成で用いられる脱芳香族化戦略は適用困難だった
アダマンタン型PPAPs合成で用いられた手法も直接応用できなかった
新規の合成戦略開発が必要であった
3: 合成の課題
架橋頭位プロトンの脱プロトン化が困難
BPAPsとは対照的に、アニオンの反応性よりも生成が課題だった
最終段階のアシル化は中程度の収率に留まった
結論
Hypersampsone Mの初の全合成を15工程で達成
ホモアダマンタン型PPAP天然物の最初の全合成例となった
開発した合成戦略は他のホモアダマンタン型PPAPsへ応用可能
将来の展望
開発した合成戦略は他のホモアダマンタン型PPAPsへの応用が期待される
生物学的活性評価
さらなるPPAPs合成への本戦略の展開
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