2024年8月12日月曜日

Catch Key Points of a Paper ~0095~

論文のタイトル: Total Synthesis of Hypersampsone M

著者: Adrian E. Samkian, Scott C. Virgil,* and Brian M. Stoltz*

出版: Journal of the American Chemical Society

巻: 146, 18886−18891

出版年: 2024年 


背景

1: 研究背景

PPAPsは多様な生理活性と構造を持つ天然物群

400以上のPPAP化合物が2018年までに単離されている

PPAPsはBPAPs、アダマンタン型、ホモアダマンタン型などに分類される

構造活性相関(SAR)が未確立で、小さな構造変化で活性が大きく変わる


2: 研究の課題

BPAPs合成は多数報告されているが、アダマンタン型PPAPsは3例のみ

ホモアダマンタン型PPAPsの全合成例は皆無

ホモアダマンタン型PPAPsは少なくとも70種類存在する

抗腫瘍、抗炎症、肝保護、抗脂肪細胞形成などの活性が報告されている


3: 研究目的

ホモアダマンタン型PPAPの代表的化合物Hypersampsone Mの全合成

新規合成戦略の開発

他のホモアダマンタン型PPAPs合成への応用可能性の探索


方法

1: 合成戦略

C4-シクロヘプタノン環を中心とした逆合成解析

後期段階でのClaisen縮合とC1位架橋頭ベンゾイル化を計画

シクロペンテン環形成を鍵反応として設定


2: 鍵中間体の合成

シクロヘキセノンから出発し、ラジカルHAT反応を利用

β-ケトエステルの形成とセレノキシド脱離を経て活性化エノン13を合成

1,1-ジメチルプロパルギル亜鉛試薬を用いたシクロペンテン環形成


3: 環拡大と官能基化

設計されたジアゾ酢酸エステルを用いた環拡大反応

プレニル化とトリメチルシリルエチルエステルの選択的脱炭酸

アルデヒド19の合成と続くカゴ型ラクトン21の形成


4: 最終段階の変換

ラクトン21のアニリド22への変換

Me3OBF4を用いたイミン23の形成

架橋頭位アシル化によるHypersampsone Mの合成


結果

1: 鍵中間体の合成

シクロヘキセノンから5段階でエノン13を73%収率で合成

シクロペンテン環形成は-40℃で6.3:1のジアステレオ選択性を達成

環拡大反応は79%収率で進行し、単一のジアステレオマーを生成


2: 環化と官能基化

カゴ型ラクトン21の形成は中程度の収率で進行

アニリド22への変換は2段階70%収率で達成

イミン23の形成は単一工程で進行


3: Hypersampsone Mの合成

架橋頭位アニオン形成は-35℃で40%の重水素取り込みを確認

最終的なアシル化は中程度の収率でHypersampsone Mを生成

全15工程でHypersampsone Mの初の全合成を達成


考察

1: 合成戦略の有効性

シクロペンテン環形成反応は高度に置換された5員環構築に有効

環拡大戦略により、所望のホモアダマンタン骨格の構築に成功

後期段階での予期せぬ変換が合成完了の鍵となった


2: 既存合成法との比較

BPAPs合成で用いられる脱芳香族化戦略は適用困難だった

アダマンタン型PPAPs合成で用いられた手法も直接応用できなかった

新規の合成戦略開発が必要であった


3: 合成の課題

架橋頭位プロトンの脱プロトン化が困難

BPAPsとは対照的に、アニオンの反応性よりも生成が課題だった

最終段階のアシル化は中程度の収率に留まった


結論

Hypersampsone Mの初の全合成を15工程で達成

ホモアダマンタン型PPAP天然物の最初の全合成例となった

開発した合成戦略は他のホモアダマンタン型PPAPsへ応用可能


将来の展望

開発した合成戦略は他のホモアダマンタン型PPAPsへの応用が期待される

生物学的活性評価

さらなるPPAPs合成への本戦略の展開

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