2024年8月16日金曜日

Catch Key Points of a Paper ~0099~

論文のタイトル: Deoxyfluorination of Ketones with Sulfur Tetrafluoride (SF4) and Dialkylamines in Continuous Flow Mode(連続フロー方式によるスルフルテトラフルオリド(SF4)とジアルキルアミンを用いたケトンの脱酸素フッ素化)

著者: Dominik Polterauer, Simon Wagschal, Michael Bersier, Clara Bovino, Dominique M. Roberge, Christopher A. Hone, C. Oliver Kappe

出版: Organic Process Research & Development

巻: 28, 7, 2919–2927

出版年: 2024年 


背景

1: フッ素化合物の重要性

フッ素化合物は生物活性物質に広く存在

gem-ジフルオロ基は特に重要な構造

FDAが承認した低分子APIの最大44%がフッ素原子を含む

フッ素含有医薬品は成功率が10倍高いと推定されている


2: 既存の脱酸素フッ素化法の課題

選択的なgem-ジフルオロ化は困難な変換

一般的な試薬DASTは爆発の危険性がある

バッチ法では大量のHFが必要

副生成物であるビニルフルオリドの生成を抑制するのが難しい


3: 連続フロー法の利点

危険な化学反応のリスク軽減に有効

小さな密閉系で反応を行うため安全性が向上

反応中間体や副生成物をインラインで処理可能

一度に反応する量が少なく抑えられる


方法

1: 実験装置

SF4をマスフローコントローラーでガスシリンダーから導入

Et2NHとケトン基質を別々のシリンジポンプで導入

2つの反応コイルを使用(1.6 mLと16 mL)

疎水性膜分離器で気液分離を行い、NaOH水溶液でクエンチ


2: 反応条件の最適化

溶媒、温度、当量比、濃度、滞留時間を検討

SF4/Et2NH系がDASTの代替として有効

DCEを溶媒として70°Cで反応

SF4とEt2NHを2当量使用


3: 基質適用性の検討

様々な環状ケトン(4,5,6員環)を基質として使用

置換基の影響を調査(アルキル、アリール、エステル、NHBoc等)

非環状ケトンにも適用


結果

1: 最適化された反応条件

溶媒: 1,2-ジクロロエタン

温度: 70°C 

SF4/Et2NH: 各2当量

基質濃度: 1 M

滞留時間: SF4とEt2NHの混合1.5分、脱酸素フッ素化16分


2: 環状ケトンの変換結果

シクロヘキサノン誘導体: 73-87%収率

Maraviroc中間体: 86%収率(ビニルフルオリド3%)

ピペリドン誘導体: 78-87%収率

シクロブタノン誘導体: ~90%転化率


3: その他の基質への適用

N-Boc-4,4-ジフルオロピロリジン: 93%収率

N-Boc-4,4-ジフルオロプロリン: 93%収率

融合環系(インダノン、ノルトロピノン): 中程度の転化率

非環状ケトン: 部分的な転化


考察

1: 主要な発見

SF4とEt2NH系がDASTの安全な代替法として機能

連続フロー法により危険な中間体を制御可能

幅広い環状ケトンのgem-ジフルオロ化に成功


2: 既存法との比較

DASTを用いたバッチ法よりも安全性が向上

外部からのHF添加が不要

Maraviroc中間体でのビニルフルオリド副生成を大幅に抑制


3: スケールアップの可能性

N-Boc-3-ピロリジノンで5時間の連続運転に成功

17.3 gの生成物を83%の単離収率で取得

3.5 g/hの生産性と217 g/L/hの空時収率を達成


4: 研究の限界点

非環状ケトンへの適用は限定的

ジクロロメタンやジクロロエタンの使用は環境面で課題

SF4の毒性と腐食性に対する安全対策が必要


結論

SF4/Et2NHを用いた安全な脱酸素フッ素化法を開発

連続フロー法により危険な中間体を制御

幅広い環状ケトンのgem-ジフルオロ化に成功


将来の展望

今後、医薬品合成への応用が期待される

環境に優しい溶媒の探索が今後の課題

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