論文のタイトル: Deoxyfluorination of Ketones with Sulfur Tetrafluoride (SF4) and Dialkylamines in Continuous Flow Mode(連続フロー方式によるスルフルテトラフルオリド(SF4)とジアルキルアミンを用いたケトンの脱酸素フッ素化)
著者: Dominik Polterauer, Simon Wagschal, Michael Bersier, Clara Bovino, Dominique M. Roberge, Christopher A. Hone, C. Oliver Kappe
出版: Organic Process Research & Development
巻: 28, 7, 2919–2927
出版年: 2024年
背景
1: フッ素化合物の重要性
フッ素化合物は生物活性物質に広く存在
gem-ジフルオロ基は特に重要な構造
FDAが承認した低分子APIの最大44%がフッ素原子を含む
フッ素含有医薬品は成功率が10倍高いと推定されている
2: 既存の脱酸素フッ素化法の課題
選択的なgem-ジフルオロ化は困難な変換
一般的な試薬DASTは爆発の危険性がある
バッチ法では大量のHFが必要
副生成物であるビニルフルオリドの生成を抑制するのが難しい
3: 連続フロー法の利点
危険な化学反応のリスク軽減に有効
小さな密閉系で反応を行うため安全性が向上
反応中間体や副生成物をインラインで処理可能
一度に反応する量が少なく抑えられる
方法
1: 実験装置
SF4をマスフローコントローラーでガスシリンダーから導入
Et2NHとケトン基質を別々のシリンジポンプで導入
2つの反応コイルを使用(1.6 mLと16 mL)
疎水性膜分離器で気液分離を行い、NaOH水溶液でクエンチ
2: 反応条件の最適化
溶媒、温度、当量比、濃度、滞留時間を検討
SF4/Et2NH系がDASTの代替として有効
DCEを溶媒として70°Cで反応
SF4とEt2NHを2当量使用
3: 基質適用性の検討
様々な環状ケトン(4,5,6員環)を基質として使用
置換基の影響を調査(アルキル、アリール、エステル、NHBoc等)
非環状ケトンにも適用
結果
1: 最適化された反応条件
溶媒: 1,2-ジクロロエタン
温度: 70°C
SF4/Et2NH: 各2当量
基質濃度: 1 M
滞留時間: SF4とEt2NHの混合1.5分、脱酸素フッ素化16分
2: 環状ケトンの変換結果
シクロヘキサノン誘導体: 73-87%収率
Maraviroc中間体: 86%収率(ビニルフルオリド3%)
ピペリドン誘導体: 78-87%収率
シクロブタノン誘導体: ~90%転化率
3: その他の基質への適用
N-Boc-4,4-ジフルオロピロリジン: 93%収率
N-Boc-4,4-ジフルオロプロリン: 93%収率
融合環系(インダノン、ノルトロピノン): 中程度の転化率
非環状ケトン: 部分的な転化
考察
1: 主要な発見
SF4とEt2NH系がDASTの安全な代替法として機能
連続フロー法により危険な中間体を制御可能
幅広い環状ケトンのgem-ジフルオロ化に成功
2: 既存法との比較
DASTを用いたバッチ法よりも安全性が向上
外部からのHF添加が不要
Maraviroc中間体でのビニルフルオリド副生成を大幅に抑制
3: スケールアップの可能性
N-Boc-3-ピロリジノンで5時間の連続運転に成功
17.3 gの生成物を83%の単離収率で取得
3.5 g/hの生産性と217 g/L/hの空時収率を達成
4: 研究の限界点
非環状ケトンへの適用は限定的
ジクロロメタンやジクロロエタンの使用は環境面で課題
SF4の毒性と腐食性に対する安全対策が必要
結論
SF4/Et2NHを用いた安全な脱酸素フッ素化法を開発
連続フロー法により危険な中間体を制御
幅広い環状ケトンのgem-ジフルオロ化に成功
将来の展望
今後、医薬品合成への応用が期待される
環境に優しい溶媒の探索が今後の課題
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