2024年8月26日月曜日

Catch Key Points of a Paper ~0108~

論文のタイトル: Sacrificial Anode-Free Electrochemical Cross-Electrophile Coupling of 1,3-Diol Derivatives to Form Aliphatic and Aryl Cyclopropanes(犠牲アノードを用いない電気化学・交差求電子剤カップリングによる1,3-ジオール誘導体からの脂肪族および芳香族シクロプロパンの合成)

著者: Nadia Hirbawi, Ethan T. A. Raffman, James R. Pedroarena, Tristan M. McGinnis, Elizabeth R. Jarvo*

出版: Organic Letters

巻: 26, 31, 6556–6561

出版年: 2024

背景

1: 研究の背景

医薬品化学分野で「平面性」からの脱却が進んでいる

C(sp3)-C(sp3)結合形成法の開発が重要になっている

交差求電子剤カップリング(XEC)反応が注目されている

従来のXEC反応は主にC(sp3)-C(sp2)結合形成に限られていた


2: 未解決の問題点

2つの脂肪族電解質によるXEC反応は未発達

従来のXEC法は第1級または第2級臭化アルキルを使用

より入手しやすい出発物質(アルコール誘導体など)の使用が望まれる

電気化学XEC (eXEC)反応の開発が必要


3: 研究の目的

1,3-ジオール誘導体を用いたeXEC反応の開発

脂肪族および芳香族シクロプロパンの合成法確立

犠牲アノードを用いない電気化学的手法の確立

様々な置換基を持つシクロプロパン類の合成


方法

1: 反応条件の最適化

1,3-ジメシレートを出発物質として使用

グラファイト電極を用いた非分割セルでの反応

三級アミン、ヨウ化亜鉛、ヨウ化リチウムを添加剤として使用

電流値、温度、反応時間の最適化


2: 基質の合成

プロリン触媒を用いたエナンチオ選択的アルドール二量化反応

LDAを用いたアルドール反応

マロン酸エステルのアルキル化反応

1,3-ジオールからの1,3-ジメシレート合成


3: eXEC反応の実施

最適化された条件下での基質のeXEC反応

様々な置換基を持つ1,3-ジメシレート類の反応

反応のスケールアップ(0.80 mmolスケール)

反応条件の感度分析(空気、水、温度、電流値の影響)


結果

1: 反応条件の最適化結果

LiIが最適な電解質として機能

三級アミン(Et3NまたはDIPEA)の添加が重要

グラファイト電極が最適な電極材料

室温で1時間、その後60°Cで反応が最適


2: 基質適用範囲

電子求引性および電子供与性置換基を持つ芳香族基質が適用可能

脂肪族置換基を持つ基質も反応可能

四級中心を持つシクロプロパン類の合成に成功

スピロ環状および縮合二環式構造の構築が可能


3: スケールアップと感度分析

0.80 mmolスケールで54%収率を達成

空気と水に対して感受性が高い

電流値の変化には比較的鈍感

80°Cでの反応では副生成物(アルケン)の生成が増加


考察

1: 主要な発見

犠牲アノードを用いない新規eXEC反応の開発に成功

1,3-ジオール誘導体から直接シクロプロパン類を合成可能

様々な置換基を持つシクロプロパン類の合成が可能


2: 反応条件

反応条件の最適化により、高収率でのシクロプロパン合成を実現

ヨウ化物イオンが反応の進行に重要な役割を果たす

温度制御が反応の選択性に大きく影響する


3: 先行研究との比較

従来のXEC反応と比較して、より入手しやすい出発物質を使用

電気化学的手法により、金属還元剤の使用を回避

非分割セルの使用により、反応のスケールアップが容易


4: 研究の限界点

嵩高い基質での反応性が低下

高温条件下での副反応(β-水素脱離)の発生

空気と水に対する感受性が高い


結論

1,3-ジオール誘導体からのeXEC反応による新規シクロプロパン合成法を確立

様々な置換基を持つシクロプロパン類の合成が可能になった

犠牲アノードを用いない電気化学的手法の開発に成功


将来の展望

反応機構の解明と基質適用範囲の拡大が今後の課題

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