論文のタイトル: Sacrificial Anode-Free Electrochemical Cross-Electrophile Coupling of 1,3-Diol Derivatives to Form Aliphatic and Aryl Cyclopropanes(犠牲アノードを用いない電気化学・交差求電子剤カップリングによる1,3-ジオール誘導体からの脂肪族および芳香族シクロプロパンの合成)
著者: Nadia Hirbawi, Ethan T. A. Raffman, James R. Pedroarena, Tristan M. McGinnis, Elizabeth R. Jarvo*
出版: Organic Letters
巻: 26, 31, 6556–6561
背景
医薬品化学分野で「平面性」からの脱却が進んでいる
C(sp3)-C(sp3)結合形成法の開発が重要になっている
交差求電子剤カップリング(XEC)反応が注目されている
従来のXEC反応は主にC(sp3)-C(sp2)結合形成に限られていた
2: 未解決の問題点
2つの脂肪族電解質によるXEC反応は未発達
従来のXEC法は第1級または第2級臭化アルキルを使用
より入手しやすい出発物質(アルコール誘導体など)の使用が望まれる
電気化学XEC (eXEC)反応の開発が必要
3: 研究の目的
1,3-ジオール誘導体を用いたeXEC反応の開発
脂肪族および芳香族シクロプロパンの合成法確立
犠牲アノードを用いない電気化学的手法の確立
様々な置換基を持つシクロプロパン類の合成
方法
1: 反応条件の最適化
1,3-ジメシレートを出発物質として使用
グラファイト電極を用いた非分割セルでの反応
三級アミン、ヨウ化亜鉛、ヨウ化リチウムを添加剤として使用
電流値、温度、反応時間の最適化
2: 基質の合成
プロリン触媒を用いたエナンチオ選択的アルドール二量化反応
LDAを用いたアルドール反応
マロン酸エステルのアルキル化反応
1,3-ジオールからの1,3-ジメシレート合成
3: eXEC反応の実施
最適化された条件下での基質のeXEC反応
様々な置換基を持つ1,3-ジメシレート類の反応
反応のスケールアップ(0.80 mmolスケール)
反応条件の感度分析(空気、水、温度、電流値の影響)
結果
1: 反応条件の最適化結果
LiIが最適な電解質として機能
三級アミン(Et3NまたはDIPEA)の添加が重要
グラファイト電極が最適な電極材料
室温で1時間、その後60°Cで反応が最適
2: 基質適用範囲
電子求引性および電子供与性置換基を持つ芳香族基質が適用可能
脂肪族置換基を持つ基質も反応可能
四級中心を持つシクロプロパン類の合成に成功
スピロ環状および縮合二環式構造の構築が可能
3: スケールアップと感度分析
0.80 mmolスケールで54%収率を達成
空気と水に対して感受性が高い
電流値の変化には比較的鈍感
80°Cでの反応では副生成物(アルケン)の生成が増加
考察
1: 主要な発見
犠牲アノードを用いない新規eXEC反応の開発に成功
1,3-ジオール誘導体から直接シクロプロパン類を合成可能
様々な置換基を持つシクロプロパン類の合成が可能
2: 反応条件
反応条件の最適化により、高収率でのシクロプロパン合成を実現
ヨウ化物イオンが反応の進行に重要な役割を果たす
温度制御が反応の選択性に大きく影響する
3: 先行研究との比較
従来のXEC反応と比較して、より入手しやすい出発物質を使用
電気化学的手法により、金属還元剤の使用を回避
非分割セルの使用により、反応のスケールアップが容易
4: 研究の限界点
嵩高い基質での反応性が低下
高温条件下での副反応(β-水素脱離)の発生
空気と水に対する感受性が高い
結論
1,3-ジオール誘導体からのeXEC反応による新規シクロプロパン合成法を確立
様々な置換基を持つシクロプロパン類の合成が可能になった
犠牲アノードを用いない電気化学的手法の開発に成功
将来の展望
反応機構の解明と基質適用範囲の拡大が今後の課題
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