2024年8月21日水曜日

Catch Key Points of a Paper ~0104~

論文のタイトル: Dearomative Intramolecular meta-Thermocycloadditions of Benzene Rings via Wheland Intermediates

著者: Shupeng Liu, Tianyi Xu, Yuting Liu, Youliang Wang

出版: Angewandte Chemie International Edition

出版年: 2024


背景

1: 研究背景

脱芳香族化環化付加は強力な合成変換法

芳香族化合物を利用して環化付加反応を実現

生物学的に関連する化合物の合成に広く応用されている

複雑な構造を簡単な原料から生成できる

原子効率と工程効率が高い


2: 未解決の課題

ベンゼン環系での脱芳香族化環化付加は困難

ortho位とpara位の環化付加は光化学的・熱的に実現済み

meta位の環化付加は1960年代からの光化学的プロセスに限定

meta位の熱的環化付加は未実現


3: 研究目的

ベンゼン環のmeta位での熱的環化付加反応の実現

Wheland中間体を経由した[4π + 2π]環化付加の提案

アニリン連結エンイン基質を用いた分子内反応の開発

C(sp2)リッチな平面構造からC(sp3)リッチな3D複雑多環構造への変換


方法

1: 反応設計

アニリン連結エンイン基質1をモデル基質として使用

ブレンステッド酸による反応の促進を想定

イプソ位での環化によるスピロ環状Wheland中間体Eの形成

分子内[4π + 2π]環化付加による中間体Fの生成

溶媒によるトラッピングを予想


2: 反応条件の最適化

トリフルオロ酢酸(TFA)を溶媒として使用

室温での反応で最適な選択性を達成

反応時間の延長により71%の収率を実現

予想外の分子内Friedel-Crafts反応による複雑な多環化合物4の生成


3: 基質適用範囲の検討

アニリン部分の置換基効果を系統的に調査

フェニルアセチレン部分の置換基効果を検討

オレフィン部分の構造変化の影響を評価

X線結晶構造解析による生成物の構造確認


結果

1: アニリン部分の置換基効果

パラ位の電子供与基から弱い電子吸引基まで許容

オルト位置換基では優れた位置選択性を観察

メタ位置換基では位置選択性が低下

多置換アニリン基質でも反応が進行


2: フェニルアセチレン部分の変更

オルト位およびパラ位に電子供与基や吸引基を許容

メタ位置換基では位置異性体混合物を生成

チエニル基などのヘテロ環も反応に参加可能


3: オレフィン部分の構造変化

末端オレフィン以外にも内部オレフィンが反応可能

トランス配置のオレフィンが好ましい

アリル位置換基を許容し、良好なジアステレオ選択性を示す

ホモアリル基を持つ基質も効率的に反応


考察

1: 反応機構の考察

重水素化TFAを用いた実験で反応速度の低下を観察

アルキンのプロトン化が律速段階の一つであることを示唆

位置選択的な生成物4の形成を立体配座解析で説明

X線構造解析結果が立体配座解析を支持


2: 合成的有用性

グラムスケールでの反応が可能(4および11を高収率で合成)

生成物の多様な官能基変換が可能

ラクタム環の開裂、還元、塩素化などの変換例

ヨウ化ビニル部分を利用したカップリング反応


3: 本研究の意義

ベンゼン環のmeta位での初めての熱的環化付加反応を実現

Wheland中間体を経由する新しい反応機構を提案

簡単な操作で複雑な3D多環構造を構築可能

幅広い基質適用範囲を持つ汎用性の高い手法


4: 研究の制限点

分子間反応での適用が困難

シス配置のオレフィンでは望みの生成物が得られない

強い電子吸引基を持つ基質では反応が進行しない

一部の基質で位置選択性の制御が困難


結論

ベンゼン環のmeta位での初めての熱的環化付加反応を開発

Wheland中間体を経由する新しい反応機構を提案

簡便な操作で複雑な3D多環構造を構築可能

グラムスケール合成と多様な官能基変換が可能

新しいmeta位熱的環化付加反応開発の基盤を確立


将来の展望

生物活性物質合成への応用が期待される

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