論文のタイトル: Dearomative Intramolecular meta-Thermocycloadditions of Benzene Rings via Wheland Intermediates
著者: Shupeng Liu, Tianyi Xu, Yuting Liu, Youliang Wang
出版: Angewandte Chemie International Edition
出版年: 2024
背景
1: 研究背景
脱芳香族化環化付加は強力な合成変換法
芳香族化合物を利用して環化付加反応を実現
生物学的に関連する化合物の合成に広く応用されている
複雑な構造を簡単な原料から生成できる
原子効率と工程効率が高い
2: 未解決の課題
ベンゼン環系での脱芳香族化環化付加は困難
ortho位とpara位の環化付加は光化学的・熱的に実現済み
meta位の環化付加は1960年代からの光化学的プロセスに限定
meta位の熱的環化付加は未実現
3: 研究目的
ベンゼン環のmeta位での熱的環化付加反応の実現
Wheland中間体を経由した[4π + 2π]環化付加の提案
アニリン連結エンイン基質を用いた分子内反応の開発
C(sp2)リッチな平面構造からC(sp3)リッチな3D複雑多環構造への変換
方法
1: 反応設計
アニリン連結エンイン基質1をモデル基質として使用
ブレンステッド酸による反応の促進を想定
イプソ位での環化によるスピロ環状Wheland中間体Eの形成
分子内[4π + 2π]環化付加による中間体Fの生成
溶媒によるトラッピングを予想
2: 反応条件の最適化
トリフルオロ酢酸(TFA)を溶媒として使用
室温での反応で最適な選択性を達成
反応時間の延長により71%の収率を実現
予想外の分子内Friedel-Crafts反応による複雑な多環化合物4の生成
3: 基質適用範囲の検討
アニリン部分の置換基効果を系統的に調査
フェニルアセチレン部分の置換基効果を検討
オレフィン部分の構造変化の影響を評価
X線結晶構造解析による生成物の構造確認
結果
1: アニリン部分の置換基効果
パラ位の電子供与基から弱い電子吸引基まで許容
オルト位置換基では優れた位置選択性を観察
メタ位置換基では位置選択性が低下
多置換アニリン基質でも反応が進行
2: フェニルアセチレン部分の変更
オルト位およびパラ位に電子供与基や吸引基を許容
メタ位置換基では位置異性体混合物を生成
チエニル基などのヘテロ環も反応に参加可能
3: オレフィン部分の構造変化
末端オレフィン以外にも内部オレフィンが反応可能
トランス配置のオレフィンが好ましい
アリル位置換基を許容し、良好なジアステレオ選択性を示す
ホモアリル基を持つ基質も効率的に反応
考察
1: 反応機構の考察
重水素化TFAを用いた実験で反応速度の低下を観察
アルキンのプロトン化が律速段階の一つであることを示唆
位置選択的な生成物4の形成を立体配座解析で説明
X線構造解析結果が立体配座解析を支持
2: 合成的有用性
グラムスケールでの反応が可能(4および11を高収率で合成)
生成物の多様な官能基変換が可能
ラクタム環の開裂、還元、塩素化などの変換例
ヨウ化ビニル部分を利用したカップリング反応
3: 本研究の意義
ベンゼン環のmeta位での初めての熱的環化付加反応を実現
Wheland中間体を経由する新しい反応機構を提案
簡単な操作で複雑な3D多環構造を構築可能
幅広い基質適用範囲を持つ汎用性の高い手法
4: 研究の制限点
分子間反応での適用が困難
シス配置のオレフィンでは望みの生成物が得られない
強い電子吸引基を持つ基質では反応が進行しない
一部の基質で位置選択性の制御が困難
結論
ベンゼン環のmeta位での初めての熱的環化付加反応を開発
Wheland中間体を経由する新しい反応機構を提案
簡便な操作で複雑な3D多環構造を構築可能
グラムスケール合成と多様な官能基変換が可能
新しいmeta位熱的環化付加反応開発の基盤を確立
将来の展望
生物活性物質合成への応用が期待される
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