2024年8月10日土曜日

Catch Key Points of a Paper ~0093~

論文のタイトル: From dipivaloylketene to tetraoxaadamantanes

著者: Gert Kollenz and Curt Wentrup

出版: Beilstein Journal of Organic Chemistry

巻: 14, 1-10

出版年: 2018年 


背景

1: 研究の背景

テトラオキサアダマンタン骨格は比較的未知の化合物

これまでメチルやフェニル置換体のみが報告されていた

機能性置換基を持つ誘導体はほとんど知られていなかった

合成法も限られており、収率は低かった


2: 未解決の課題

テトラオキサアダマンタンの効率的な合成法が必要

機能性置換基を持つ誘導体の合成が課題

構造活性相関の研究が不十分

応用可能性の探索が不足


3: 研究目的

ジピバロイルケテンからの新規合成ルートの開発

ビスジオキシン経由でのテトラオキサアダマンタン合成

様々な置換基を持つ誘導体の合成 

構造と反応性の関係の解明


方法

1: 合成戦略

フラン-2,3-ジオンのFlash Vacuum Pyrolysis(FVP)によるジピバロイルケテンの生成

ジピバロイルケテンの二量化によるビスジオキシン前駆体の合成

ビスジオキシンへの求核付加反応

酸触媒による水和と環化反応でテトラオキサアダマンタンを合成


2: 主要な反応

ジピバロイルケテンの二量化反応

ビスジオキシンへのアミン、アルコール、水の付加反応

トランスアニュラー環化反応

酸触媒による脱炭酸を伴う環化反応


3: 構造解析

X線結晶構造解析による構造決定

NMR分光法による軸性キラリティーの確認

計算化学による構造最適化と反応性予測


結果

1: ビスジオキシンの合成

ジピバロイルケテンの二量化で安定なケテン3を高収率で合成

化合物3と求核剤の反応でビスジオキシン誘導体8-13を得た

アミン付加では脱炭酸が起こるが、酸性条件下では保持される

軸性キラリティーを持つビスジオキシンの合成に成功


2: テトラオキサアダマンタンの合成

ビスジオキシンの酸触媒加水分解で高収率でテトラオキサアダマンタンを合成

遊離カルボン酸基は脱炭酸されるがエステルやアミドは保持される

様々な置換基を持つテトラオキサアダマンタン20-25,28,29を合成

大環状化合物32では強い条件が必要、環状ビスジオキシン誘導体36、ビスジオキシン-p-tert-ブチルカリックス[6]-アレーン誘導体37では反応せず


3: 構造と反応性

ビスジオキシンの凹型構造が確認された

内側を向いた官能基の反応性が明らかに

環状構造では立体障害により反応性が低下

カリックスアレーン誘導体37ではテトラオキサアダマンタンを形成しなかったが、セシウムカチオン抽出能を示した


考察

1: 合成法の利点

ジピバロイルケテンからの効率的な合成ルートを確立

ビスジオキシン経由で多様な誘導体合成が可能に

高収率でテトラオキサアダマンタンを得られる

置換基の制御が容易になった


2: 構造と反応性の関係

凹型構造が特異な反応性をもたらす

内側に向いた官能基が選択的に反応

環状構造では立体障害が重要な因子に

軸性キラリティーが光学活性体合成の可能性を示唆


3: 応用可能性

ホスト-ゲスト化学への応用が期待される

イオン認識能を持つ誘導体の開発

光学活性体としての利用可能性

新規触媒や医薬品開発への展開


4: 研究の限界

大環状化合物での反応性の低下

一部の誘導体で強い反応条件が必要

軸性キラリティーの制御が課題

生物活性などの機能評価が不十分


結論

ジピバロイルケテンからテトラオキサアダマンタンへの新規合成ルートを確立

ビスジオキシン経由で多様な置換基を持つ誘導体の合成に成功

構造と反応性の関係を明らかにし、応用可能性を示唆


将来の展望

今後はキラリティー制御や機能性材料への展開が課題

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