論文のタイトル: eFluorination for the Rapid Synthesis of Carbamoyl Fluorides from Oxamic Acids
著者: Feba Pulikkottil, John S. Burnett, Jérémy Saiter, Charles A. I. Goodall, Bini Claringbold, and Kevin Lam
出版: Organic Letters
巻: 26, 6103-6108
出版年: 2024年
背景
1: カルバモイルフルオリドの重要性
フッ素化合物は化学分野で特別な位置を占める
カルバモイルフルオリドは殺虫剤やエステラーゼ阻害剤として使用
ヒドラジン、イソシアネート、カルバメート等の合成中間体として有用
カルバモイルクロリドよりも安定性と選択性が高い
2: 既存の合成法の課題
主な合成法はカルバモイルクロリドとフッ化物の反応
カルバモイルクロリドは不安定で、有毒なホスゲン誘導体から合成
近年開発された方法も実用的でない条件や高価・有害な試薬を使用
大規模合成は特に困難
3: 研究の目的
実用的で持続可能な新しいカルバモイルフルオリド合成法の開発
安定なオキサミン酸を出発物質とする電解酸化法の確立
フッ化物塩を用いた温和な条件下での合成の実現
バッチ法とフロー法による大規模合成の実証
方法
1: 電解酸化条件の最適化
溶媒:ジクロロメタン
フッ素源:Et3N·3HF (1.5当量)
電極:グラファイト(陽極)、ステンレス鋼(陰極)
電流密度:8.9 mA cm-2
通電量:2.5 F mol-1
2: 基質適用範囲の検討
さまざまな置換基を持つオキサミン酸誘導体を合成
医薬品関連構造を含む多様な官能基との適合性を評価
生成物の単離・精製方法の検討
3: 大規模合成の検討
バッチ法:1.0 gスケールでの合成
フロー法:連続フロー電解装置を用いた合成
電流密度、流速等の条件最適化
4: 反応機構の解明
サイクリックボルタンメトリーによる電気化学的挙動の解析
推定反応機構の提案
結果
1: 最適化条件下での収率
モデル基質1aから95%収率でカルバモイルフルオリド2aを合成
電極材料、溶媒、フッ素源、電流密度等の影響を系統的に評価
Et3N·3HFが最適なフッ素源かつ支持電解質として機能
2: 基質適用範囲
アルケン、アルキン、ハロゲン、エステル等、多様な官能基に適合
生物活性化合物由来の基質でも良好な収率(60-87%)
芳香族アミン誘導体では低収率(10-23%)
3: 大規模合成の結果
バッチ法:1.0 gスケールで98%収率を達成
フロー法:最適条件下で95%収率、60 g h-1 L-1の空時収率
考察
1: 方法論の利点
温和な条件下で高収率を実現
安価で安全な試薬を使用
クロマトグラフィー精製不要の場合が多い
バッチ法とフロー法の両方で大規模合成が可能
2: 基質適用範囲の考察
医薬品開発に関連する多様な構造に適用可能
電子豊富な芳香族アミンで低収率の理由を考察
N中心カチオン中間体の形成が重要
3: 反応機構の考察
2段階の電子移動過程を経由
不安定中間体を経由せず、直接カルバモイルフルオリドを生成
フッ化物イオンの求核付加が鍵段階
4: 既存法との比較
ホスゲン誘導体や高価な試薬を必要としない
操作が簡便で大規模合成に適している
電解合成の利点(原子効率、グリーンケミストリー)を活かせる
結論
オキサミン酸からカルバモイルフルオリドへの新規電解合成法を開発
温和な条件、安価な試薬、簡便な操作で高収率を実現
多様な基質に適用可能で、大規模合成も実証
将来の展望
今後、医薬品開発等への応用が期待される
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